切れ痔が治らない理由
カテゴリー:
(2019年8月11日加筆修正)
子供の頃、ひどい切れ痔で、トイレのあと、お尻が痛いから石油ストーブの前でお尻を温めていたことがある佐々木みのりです。
当院は自由診療です。
保険が効きません。
治療費が保険診療の肛門科と比べると高いです。
だからというわけではないのでしょうが、色々な治療をやってみたけど治らなくて、本当に切羽詰まって困ってから最後の砦だと思って受診される患者さんも多いです。
何年もずーっと肛門科に通院している人や、何度も痔の手術を受けている人、色々な病院を転々と回って来た人、ケースは様々ですが、そんな中で多いのが、「なかなか治らない切れ痔(裂肛)」と「治っても繰り返す切れ痔(裂肛)」です。
セカンドオピニオンの患者さんが8割くらいなんですが、そのほとんどが「切れ痔(裂肛)が治らないから手術」「肛門が狭いから手術しないといけません」と手術宣告されています。
でも実際に私たちが診察して手術が必要だったケースはほぼゼロ・・・。
本当に肛門が狭くて手術が必要なケースもほとんどありませんでした。
実際の患者さんの声を紹介しますね。
なんと7年近くも治らない切れ痔(裂肛)に悩んできた女性の声です。
この記事の目次
何年も治らなかった切れ痔・・・
初めて裂肛になってから7年近く治らず困っていた遠方から来られた患者さん。
どうしたら治るのか、
1日中、便のことを考えずに済むのか
ずっと悩んでおられました。
私のブログを読んで、思い当たることがたくさんあり、この病院に来れば、何か変われるかもしれないと信じ受診されました。
診察すると予想通り肛門の中や直腸に便が溜まっていました。
ついさっき排便したばかりなのに・・・です。
出残り便秘®です。
これを治してもらったところ、今まで毎日ずっと切れていたのに「受診してから2週間、一度も切れていません!」と大喜びされました。
そして今までずっと肛門科に通っていたのに、出口の便秘や排泄のことについては誰も何も教えてくれなかったと😢
「もっとこの治療法が、いろいろな病院でなされたらいいのに。」と多くの患者さんが言われます。
手術をしても切れない肛門になるわけじゃない
切れ痔(裂肛)は簡単に言うと肛門のケガです。
ケガはすぐに治療すれば後遺症も残さず治りますが、放置して時間が経つと慢性化して傷はどんどん悪化します。
深くなったり、炎症を起こしたり、化膿したり・・・と色々起こるわけです。
切れ痔が慢性化して炎症が長期間続くと肛門の周囲に「見張りイボ」と呼ばれるでっぱりができます。
見張りイボは患者さんだけでなく外の先生も痔核(いぼ痔)と間違えやすい病気ですので注意が必要です。
また、切れ痔(裂肛)が何年も治らないと炎症で肛門の皮膚や括約筋が硬くつっぱるようになり、開きにくくなったり本当に狭くなったりしてしまいます。この状態は肛門狭窄と呼ばれ、程度がひどくなると手術が必要です。
肛門狭窄と診断され、切れ痔(裂肛)の手術を受けても、切れない肛門になるわけじゃないですから、また切れるわけです。
そうやって何度も切れ痔(裂肛)を繰り返し、その都度、手術を受けている患者さんもおられますが、何度手術しても同じ事の繰り返しです。
ケガを手術して治しても、ケガをしない体になりませんよね?
ケガをしないように気を付けないと、またケガをしてしまいます。
切れ痔(裂肛)が治らないのは切れ痔(裂肛)の原因となった排便を直していないから
切れ痔(裂肛)が治らない、切れ痔(裂肛)を繰り返しているという患者さんに共通しているのが、切れ痔の原因となった排便を直してないということがあります。
皆さん、酸化マグネシウム系の軟便剤を飲んだり、強力ポステリザン軟膏やボラザG軟膏などの注入するタイプの痔疾薬を朝晩毎日肛門に入れたりしているのですが、
ちゃんと便を出せてないんです
だって診察すると肛門の中が便まみれ😱
っていうことが多いです。
ついさっき出してきたのに・・・です。
しかも酸化マグネシウム系軟便剤の効果(?)なのか、何度も軟便が出てるのに・・・です。
衝撃の便秘の診断。
誰もが最初は耳を疑います。
でも本当に便があるんだもん。。。
だから実際に出してきてもらって自分の体と目で納得してもらいます。
これだけ肛門の中が便まみれだと傷も治らないよね・・・。
そして大阪肛門科診療所での治療は、ほとんど薬を使いません。
今まで通院していたクリニックで袋一杯の大量の薬をもらって帰っていた患者さんはビックリされます。
「えっ?薬、要らないんですか?飲んでる下剤、やめるんですか?それで本当に大丈夫なんですか???」😱
と不安そうにされる患者さんも多いのですが、スッキリ排便できないのは出口の問題であって大腸や小腸の問題ではありません。
必要無いものは使いたくないので、できるだけやめてもらっています。
薬なんて使わなくても、ちゃんと便を出すだけで治ることが多いです。
多くの切れ痔が2週間で改善します
治らない切れ痔に4か月苦しんでいた遠方の患者さん。ちょっと良くなったと思っても、またすぐにお尻に走る鋭い痛みとトイレの度の出血ですっかりナーバスに・・・。
そんな時私たちのブログに出会いました。
「出残りの便がある」
と言うそのキーワードに自分が当てはまると気がつき、遠方のためすぐ来院できないので、せめて出残りを解消する努力を…と頑張るも成果は薄く…。
意を決して受診されました。
ブログを読むだけでは気が付けなかったことが多々あり、診察と説明は目からウロコの連続だったよううです。
最初は
出残り便秘を治すだけで、本当に薬も何も入らずこの苦痛が消えるのか?
と2,3日は不安と痛みとの戦いだったそう😓
先生のことを信じるんだ!!
と自分に言い聞かせて
注入薬も飲み薬も断ち、
ウォシュレットで洗うのもやめたところ・・・
お尻は全く痛くなくなったんです!
「トイレに行くことも、
ご飯を食べる事も、
オナラが出る事も座る事も、
あお向けに寝る事も怖くありません・・・!!」
と大喜びされました。
「こんな気持ちで過ごせる事が本当に夢の様・・・」だと。
頑張って痔を治したのは患者さんなのに、すごく感謝されました😅
排便の直し方は人それぞれ
このブログでもお伝えしている出残り便秘と鈍感便秘。
直すために使うモノは2つしかないのですが、それをどのように使うかは患者さん一人一人違います。
使うタイミング、回数、量・・・患者さんによって反応も様々ですし、正直、効果があるかどうかは、やってみないと分からない。
うまくいかなければ次の手を考えます。
一発で治せたらカッコイイのですが、そうもいかないこともありますね。
だけど、切れ痔(裂肛)とおしりのかゆみ(肛門そう痒症)に関しては2〜3週間で結果が出ることがほとんどです。
それだけ排泄が深く関係している病気なのだと思います。
あまりにも治らない切れ痔(裂肛)、繰り返す切れ痔(裂肛)で悩んでいる人が多く受診されるので、これはブログでお伝えしなければ・・・と思い、今日の記事を書きました。
必要の無い手術を受けている人も多いですし、手術したって排便を直さなければ何度でも痔を繰り返します。
だから痔の根本治療は手術ではなく痔の原因となった排便を直すこと。
私たちはそう考えて診療に当たっています。
そして排便を直すだけで95%以上の人が痔の症状が改善しています。
手術が必要なケースは非常に少ないです。
痔の多くは手術せずに治ります。
そのことを多くの人に知って欲しいです。
元皮膚科医という異色の経歴を持つ肛門科専門医。現在でも肛門科専門医の資格を持つ女性医師は20名余り。その中で指導医の資格まで持ち、第一線で手術まで担当する女医は10名足らず。元皮膚科医という異色の経歴を持つため、肛門周囲の皮膚疾患の治療も得意とし、肛門外科の医師を対象に肛門周囲の皮膚病変についての学会での講演も多数あり。
「痔=手術」という肛門医療業界において、痔の原因となった「肛門の便秘」を直すことによって「切らない痔治療」を実現。自由診療にもかかわらず日本全国や海外からも患者が訪れている。大阪肛門科診療所(旧大阪肛門病院)は明治45年創立の日本で2番目に古い肛門科専門施設でもあり日本大腸肛門病学会認定施設。初代院長の佐々木惟朝は同学会の設立者の一人である。
2017年10月には日本臨床内科医学会において教育講演を行うなど新しい便秘の概念を提唱。