産後、授乳中の痔の治療について
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大阪肛門科診療所のホームページには「お問い合わせフォーム」を設けています。
これは海外から受診される患者さんのために設けたフォームです。
無料お悩み相談フォームではありません。
つらい気持ち、耐えられない症状は良く分かりますが、実際に診察しないと痔であるかどうかすら分からず、メールで相談して頂いても返答のしようがなく困ってしまうことが多いです💦
私たちも日々の診療で忙しいのでメールに目を通す時間もなかったり、目の前の患者さんを優先しますので、相談メールには原則お返事を致しませんのでご了承いただきますようお願いします🙏🏻
回答はブログにて掲載致しますのでご了承の上、ご相談下さい。
他院での診断・治療に関する相談もセカンドオピニオンで、ちゃんと受診してご相談下さい😔
でも悲痛なお叫びメールを読むと放置も出来ず・・・
結局お返事を書くこともあるのですが、せっかく貴重な時間を使って返事を書くならブログの記事にさせて頂こうと思い、今回は記事にしました。
同じような悩みを抱えて悩んでおられる方が他にも大勢おられると思ったのでシェアさせて頂きます。
私が気になった部分は下線を引いています。
あとでコメントで解説しますね。
遠方の20代産後で授乳中の女性からの相談メール
こんにちは。
3月に出産をし、それを機にいぼ痔と切れ痔になったようです。
出産した直後は、産婦人科でだされた、アローゼンを飲んだりネリプロクト注入をしていました。
縫われた痛みなのかおしりの痛みなのか分からず、とにかく痛みを無くしたくて、痛み止めをもらい飲んでました。
それから痛み止めの量も減り、やっと痛み止めのない生活ができるかな?と思っていたら、4月の終わり頃にまた最初のように痛み始め、残っていた痛み止めを飲んでも痛みが軽減されず、注入軟膏もちょうどなくなり、病院にいくまでと思い、市販のものを使ってみましたが、痛すぎて動けず円座を使う生活に逆戻りし、横になって休み休みではないと、痛くてどうしようもない日々が始まりました。
便を出すまでは普通に生活できるのに、ひとたび出してしまうと、痛みがずっと続くようになりました。
どうにか痛みを無くしたくて、初めて肛門科にいきました。
診断はいぼ痔と切れ痔と見張りイボができているとのことでした。
そして切れ痔は慢性と言われ、元々長い間繰り返していたようです。
自覚はなく出血もなかったのですが、おしりは物語っていたようです。
マグミットとヘモレックスを注入すること一ヶ月、よくならず休んでは育児、家事の日々でした。
そして6月になり相変わらずで、便の形がなくやわらかすぎるようだったので、マグミットを一日3粒飲んでいたのを、自分で調整してと言われていたので、徐々に1粒にしていったとき、一日に2回便が出た日がありそのとき、もう動けず食べられず授乳もできず、休んでもどの体制でも痛みがひかず涙の一日をすごしました。
次の日になるといつものように便が出るまでは動けたので、今度は違う肛門科にいき、便をだせていないことを伝え診てもらいました。
診断は同じく一緒で、授乳中だし使える薬でなんとかするしかないと言われました。
長期戦になるのは分かっているし、日々の生活の仕方を見直したり、痔に対しての理解をすることも大事なのは分かっているつもりです。
授乳中だということも、卒乳してから手術だったりを考えましょうと言われることも分かります。
でもどうしても痛くて育児に集中できず、だっこしてあげたいのに、わたしが痔のことを自分がなるまで考えたこともなかったせいで、貴重な赤ちゃんの時間、日々を全力ですごしてあげられないのが悲しいです。
そして便を出せずにいて、出さなきゃと思うのですがまたあの痛みがと思うと止まってしまっています。
こちらのホームページを拝見させてもらい、今までウォシュレットで清潔にと言われていたこととか、薬で便を柔らかくしても出残り便があると意味がないこととか、わたしと同じような時期に手術をされて、一緒に入院していたという体験談があったりだとか、もしかしたら今このときでも、なにか変えられるのではと思い連絡させていただきました。
産婦人科の先生からは痛みに弱いタイプではないかと言われたので、痛いということをずっと考えてしまうのかもしれませんが、痛いんです。
この痛みを我慢して卒乳までがんばれる気がしません。
出産の痛みを経験したはずなのに、痛みをどうにかしたいというわたしの勝手な願いで、申し訳ありません。
私からのコメント
出産した直後は、産婦人科でだされた、アローゼンを飲んだりネリプロクト注入をしていました。
アローゼンはアントラキノン系の大腸刺激性下剤です。
常用し続けると3〜4か月で腸が黒くなってしまいます。
これを大腸メラノーシスと言います。
病気ではないのですが、黒くなった腸は自分で動かなくなりますので、このクスリを飲まないと便が出ない体になってしまいます。
依存性・習慣性の強い下剤なので、出来れば腸を黒くしない下剤をチョイスしたいです。
痛すぎて動けず円座を使う生活に逆戻りし、横になって休み休みではないと、痛くてどうしようもない日々が始まりました。
便を出すまでは普通に生活できるのに、ひとたび出してしまうと、痛みがずっと続くようになりました。
この頃から悪化し始めたのでしょう。
便を出したあとから痛み出し、その痛みが長時間続くのは便が残っている可能性が高いです。
残便が切れ痔(裂肛)を汚染し、炎症を起こしていると思われます。
マグミットとヘモレックスを注入すること一ヶ月、よくならず休んでは育児、家事の日々でした。
そして6月になり相変わらずで、便の形がなくやわらかすぎるようだったので、マグミットを一日3粒飲んでいたのを、自分で調整してと言われていたので、徐々に1粒にしていったとき、一日に2回便が出た日がありそのとき、もう動けず食べられず授乳もできず、休んでもどの体制でも痛みがひかず涙の一日をすごしました。
マグミットは「便を出す」薬ではなく「軟らかい便を作る」薬です。
これを飲んでも便はスッキリ出ません。
それどころか「軟らかくてねちょっとした便」になるので、かえって肛門に残りやすく、軟便ほど傷口に入り込みやすいです。
この薬を飲んでから余計に痛みがひどくなった、切れ痔(裂肛)が悪化したというケースは意外と多いです。
そしてヘモレックス軟膏などの注入軟膏も便まみれの肛門に入れても効きません。
ちゃんと排泄して肛門を空っぽにすることが大切だと私たちは考えています。
次の日になると、いつものように便が出るまでは動けたので、今度は違う肛門科にいき、便をだせていないことを伝え診てもらいました。診断は同じく一緒で、授乳中だし使える薬でなんとかするしかないと言われました。
「便が出るまでは動ける」というのは切れ痔(裂肛)の患者さんがよく言われることです。
出したら地獄・・・なので出来るだけ出さないようにしようと便意を我慢したりしている患者さんもおられますが、それは逆効果です。
痛くても便だけはちゃんと出して下さいね。
スッキリ出れば排便後、痛みが持続することは無くなります。
長期戦になるのは分かっているし、日々の生活の仕方を見直したり、痔に対しての理解をすることも大事なのは分かっているつもりです。
普通の裂肛であれば2週間くらいで治ります。
ただし肛門が狭くなっているケースや大きな見張りイボや肛門ポリープがあると治療に時間がかかることもありますが、痛みは激減することが多いです。
長期戦にならないことのほうが多いです😓
授乳中だということも、卒乳してから手術だったりを考えましょうと言われることも分かります。
切れ痔(裂肛)で手術が必要になるケースは本当に・・・少ないです。
手術を覚悟して来られた患者さんほど必要ないっていうことが多いですね〜😅
そして授乳中でも治療は出来ます。
妊娠中と違って胎児への影響を考えなくても良いので普通に治療が出来ます。
今、つらい状況であれば、今、治療をされた方がいいと思います。
痛くて育児に集中できず、だっこしてあげたいのに、わたしが痔のことを自分がなるまで考えたこともなかったせいで、貴重な赤ちゃんの時間、日々を全力ですごしてあげられないのが悲しいです。
たかが切れ痔(裂肛)でも痛みがひどくなると本当に生活に支障を来してしまいます。
そのせいで精神的に落ち込んでしまったりして人生まで暗くなっている人も多いです😭
ちゃんと治療されることをオススメします。
便を出せずにいて、出さなきゃと思うのですが、またあの痛みがと思うと止まってしまっています。
痛いから便を出さないでいると肛門に便が挟まった状態になっているわけです💩
傷が便まみれの状態なので切れ痔(裂肛)が悪化してしまいます💩
そして痛みももっともっと強くなってきます😖
そして便を出さないようにしていると溜まった便はどんどん固まって硬くなっていきます💩
いずれどうしたって最終的には出るワケですから今出す方が楽です。
あとで出すと、もっともっと硬い便が出て痛みがひどくなります。
だから痛いときほど、つらいときほど、ちゃんと便を出すことが大切なのです。
今までウォシュレットで清潔にと言われていたこととか、薬で便を柔らかくしても出残り便があると意味がないこととか、わたしと同じような時期に手術をされて、一緒に入院していたという体験談があったりだとか、もしかしたら今このときでも、何か変えられるのではと思い連絡させていただきました。
ウォシュレットで洗うとかえって切れ痔(裂肛)が悪化するので当院では使用を禁止してもらっています。
洗っていると傷が治らないです。
残った便をスッキリ出し切らない限り、いくら外側をウォシュレットで洗ってもキレイになりません。
頭の中が「手術」でいっぱいのようですが、手術が必要なケースはほとんどないです😓
あまり最初から「手術」と決めつけずに受診して下さい。
きっと手術なんていらない・・・という結果になると思います😓
産婦人科の先生からは痛みに弱いタイプではないかと言われたので、痛いということをずっと考えてしまうのかもしれませんが、痛いんです。
痛みに弱ければ出産の痛みに耐えられなかったと思います。
ちゃんと出産出来たのであれば普通だと思います😓
男性に比べると女性は痛みに強いです😓
この痛みを我慢して卒乳まで頑張れる気がしません。
出産の痛みを経験したはずなのに、痛みをどうにかしたいというわたしの勝手な願いで、申し訳ありません。
この痛みを卒乳まで我慢する必要はありません。
ちゃんと治療すれば治りますし、痛みも無くなるはずです。
いずれにしても診察してみないことには、切れ痔(裂肛)かどうかも診断出来ず、手術が必要かどうかも分かりません。
メール相談では診断できませんし、ちゃんとした診断がなければ治療のアドバイスも指導も出来ません。
つらいお気持ちは良く分かりますが、受診した上でご相談頂ければと思います🙏🏻
肛門診療の肝は診断
当院は自由診療です。
保険が効きません。
保険診療の肛門科に比べると診療費がバカ高いです💦
だから色々な肛門科(を掲げる施設)を回ってから最後の砦だと思って受診される患者さんが多いです。
最近だと遠方の患者さんが半数近く。
新幹線や飛行機で(中には車で12時間かけて)来院されています。
そこで今までの肛門科(を掲げる施設)と診断が全く違う!ということがしばしばあります。
いぼ痔(痔核・脱肛)だと言われていたものが切れ痔(裂肛)と見張りイボだったり、「ひどい脱肛なので今すぐ手術を!」と言われた人が血栓性外痔核だったり、「痔瘻で手術するしかありません」と言われた人が痔瘻なんて何もなくて正常な肛門だったり・・・
という笑い話にも出来ないことが毎日あるんです💦
だからね
肛門診療においては一番大切で難しいのが「診断」なんだと思っています。
同じお尻なのに全く違う診断になることも多いです。
小さな穴をちゃんと見る・診る技術は一朝一夕に習得できるものではなく、時間をかけて数をこなせば出来るようになるものでもなく、本当に私たちだって未だに難しいなぁ・・・と感じる部分です。
ちゃんとした診断が出来なければ、そのあとに続く「治療」が的外れなものになってしまいます。
かえって悪化させてしまったり、痔でもないのに肛門を切られることになったり、必要のない手術を受けたせいで肛門に不具合が生じたりします。
だから肛門科選びは慎重に!
肛門科は専門にかかって!
このメール相談をして来られた患者さんが肛門を専門にしている先生にかかっておられるかどうかは分かりません。
ただ地元でかかっておられるなら、この都道府県には肛門を専門にしている医師が居ません💦
だから正直、診断もちゃんと出来ているかどうか分からないです💦
できるだけ肛門を専門にしている先生を探して受診して欲しいです。
このブログを参考に探してみて下さい↓↓
看板に「肛門科」って書いてあっても専門外であることが多いです。
看板だけで決めずに、ちゃんと調べて専門の先生を選んで下さいね。
私のブログがお役に立てれば幸いです。
診療所のセラピードッグ「ラブ」🐾
地震で体調を崩してましたが
すっかり元気になりました🌟
ほら!この笑顔😊
元皮膚科医という異色の経歴を持つ肛門科専門医。現在でも肛門科専門医の資格を持つ女性医師は20名余り。その中で指導医の資格まで持ち、第一線で手術まで担当する女医は10名足らず。元皮膚科医という異色の経歴を持つため、肛門周囲の皮膚疾患の治療も得意とし、肛門外科の医師を対象に肛門周囲の皮膚病変についての学会での講演も多数あり。
「痔=手術」という肛門医療業界において、痔の原因となった「肛門の便秘」を直すことによって「切らない痔治療」を実現。自由診療にもかかわらず日本全国や海外からも患者が訪れている。大阪肛門科診療所(旧大阪肛門病院)は明治45年創立の日本で2番目に古い肛門科専門施設でもあり日本大腸肛門病学会認定施設。初代院長の佐々木惟朝は同学会の設立者の一人である。
2017年10月には日本臨床内科医学会において教育講演を行うなど新しい便秘の概念を提唱。