肛門科の専門医の探し方・選び方〜期待外れにならないために〜

(2019年7月4日加筆修正)

実は専門医試験でトップ合格だったことがちょっと自慢の佐々木みのりです。

 

当院は自由診療です。
保険が効きません。

保険診療に比べると治療費が高いです。

だから・・・というわけではないのでしょうが、色々な肛門科を回ってから最後の砦だと思って受診される患者さんが多いです。

 

初診の患者さんの多くが私たちのブログを読んで下さっています。

ブログが受診のきっかけという人も多いです。

以前書いていたAmebaブログ「みのり先生の診察室」は1000記事以上あるのですが、それも全部読み切ってから受診されている患者さんもおられます。

たくさんの患者さんから、

「ちゃんとブログを参考に自分で調べて肛門専門の先生を受診したつもりなのに実際は専門ではなかった・・・」

と言われることが多いです。

これにはちゃんと理由がありまして。。。

その理由と、患者さんが今後できる対策についてお話ししたいと思います。

大腸肛門病専門医には内科・外科・肛門科の3つがあるが専門領域は明記されていない

肛門科の専門医を認定する唯一の学会は日本大腸肛門病学会です。

この学会は実は私たちの祖祖父である佐々木惟朝が立ち上げに関わりました。

大阪肛門病院を設立した初代院長です。

 

最初は「直腸肛門病学会」という名称で、肛門を診る医者の集まりだったようです。

当時は内科や外科の医師は入っていなかったんですね。

 

それから学会の規模はどんどん大きくなり、大腸疾患を扱う内科の先生や、大腸外科の先生も加わることになり、今の「大腸肛門病学会」となりました。

たくさんの医師に入ってもらう方が学会としての力も大きくなりますからね。

 

というわけで、現在、日本大腸肛門病学会には内科・(大腸)外科・肛門科の3つの科の医師が所属しています。

 

患者さんからご指摘頂いた日本大腸肛門病学会のホームページに掲載されている専門医一覧は、内科や外科の先生との区別が出来ないんです。

 

肛門領域の専門医であるかどうかは先生に直接尋ねてもらうしかないのですが、実はココにもちょっと困った問題がありまして・・・

専門医の書き換えが可能なんですよ。

どういうことかと言いますと

大腸肛門病専門医は以下の3つのカテゴリーがあります。

1,内科
2.大腸外科
3.肛門科

この3つの専門医、取得した後、書き換えが出来るんです。

 

つまり大腸外科で専門医を取ったけれど、開業するに当たって肛門科も標榜するから、専門医を肛門科に書き替える・・・ということが可能なんです。

 

もちろん逆もありです。

当然、書き替えに当たって審査はあります。

 

だけど私が専門医を取得する数年前までは専門医試験も存在しなかったし、大腸外科の先生が肛門科の専門医へ書き替えることが書類一枚で出来ました。

 

だから肛門に関する知識や技術があまりない、肛門科の研修も受けたことのない専門医が誕生してしまったという経緯があります。

 

でも経歴には肛門科の専門医と書くことが出来ます。別に経歴詐称でもありません。

私たち肛門を専門にやっている人間には「専門ではない」と分かりますが、患者さんには分かりにくいですよね。。。

何を基準に専門であると言うのか、定義も難しいです。

専門医の資格を持っていなくても肛門専門の医師もいる

というわけでして。。。

専門医の資格を持っていれば安心なのか・・・というと、それも微妙だったりして。。。

 

逆に専門医の資格を取得していないけれど、先祖代々、肛門専門医院で、そこを継承して専門家として患者さんの信頼を集めている先生もおられます。

現行の専門医制度は大学主導なので、大学病院や医局に所属している医師が取得しやすいシステムになっています。

開業医や、うちの院長のように父親が急死したり、院長が急に倒れたりして、実家の病院や医院を継がなければならない状況に追い込まれた医師は単位取得が難しく、かと言って診療をおろそかにして学会活動も出来ず、専門医取得が出来ないケースもあるのです。

私たちも今では専門医・指導医を標榜していますが、学生時代に父親が急死、研修中に院長が急に倒れて、突如、病院を継ぐことになってしまった主人(現・院長です)は専門医を取ることを当初、あきらめていました。

「別に学会の専門医資格がなくても、大阪肛門病院やねんから、どっから見ても専門って分かるからええ。こんな病院が大変な状況で学会活動できへんし、専門医どころじゃない。仕事で患者さんに信頼してもらって専門家やって認めてもらうしかないわ。」

と言って、専門医を取ることをあきらめていました。

 

それから師匠との出会いがあり、様々な先生方のご協力もあって院長も私も専門医・指導医の資格を取ることが出来ました。

私たちの努力だけでは成し遂げられなかったことです。

本当に周りの人に支えられていることに感謝です。

肛門を専門にしているかどうか見分けるポイントは一つ

じゃあ、専門医資格も当てにならないし、どうやって探したらいいの?

という声が聞こえてきそうですが・・・

 

私たちが肛門科の医師かどうか見分けるポイントは実はたった一つなんです。

どこで肛門科の研修をしたか?
あるいは
誰の弟子か?

この1点だけです。

すごく大切な点です。

 

なぜなら「肛門科」は外科の一領域ですが、医学部でも大学病院研修でも、肛門を勉強する機会も、痔の患者さんを診る機会もほとんどありません。

古くから肛門を専門にしている施設があって、そこに行けばたくさんの肛門疾患症例も経験できますし、何よりも熟練の肛門科医の下で修行ができます。

私たちが若かった頃は徒弟制度がまだ残っていたのでラッキーだったと思います。

ある意味、厳しくて一見、理不尽な環境に身を置くことはとても貴重で大切だと思います。

 

いくつかの肛門専門施設がありますが、診察のスタイルや手術方法も流派によって少しずつ異なります。

誰に師事したか
どこで学んだか

ということで、少しずつ考え方も違ったりします。

 

だから医師の経歴を見れば「どこの施設の人なのか」「誰の弟子なのか」分かります。

卒業大学では分かりません。

どこの肛門専門施設で、誰に教えてもらったのか?

どれくらいの期間、肛門医療に携わったのか?

この点が大切です。

 

全国でも肛門専門施設は少ないので、遠くからわざわざ肛門を勉強したい医師が集まってきます。

見学者も多いですが、「見学」と「研修」は全く違います。

たまに「お客さん」として手術や外来を「見学」しただけなのに、その施設の出身者であるかのような経歴の書き方をしている医師もいるため、注意が必要です。

 

「研修」「勤務」という実態のあるものでなければなりません。

 

「見学」しただけなのに「研鑽を積んだ」と表現している医師もいるため、見極める眼を持つ必要があります。

昔、患者さんからの熱い要望にお応えして「肛門科の選び方」というコンテンツを書きました。

10年以上前の話です。

ホームページとブログのリニューアルをしている今、もう一度まとめ直して発信したいと思い改めて記事を書きました。

年代順に肛門専門施設と研修可能な施設について記載しています。

 

こちらの記事を是非読んで下さい↓

http://osakakoumon.com/column/日本の肛門科の歴史と現状〜専門の医師を見分ける〜

肛門を専門にしている女医は全国でも20名くらいしか居ない

そして患者さんからの最も多いクレームが

肛門科の女医さんだと思って受診したのに違った!

期待を裏切られた!

看板に偽りありでしょ!

というもの。

女医さんで「肛門科」を掲げると、とにかく女医であれば誰がやっても流行るので、開業に当たって皆、看板に書きたいわけです。

最近では産婦人科や内科など、他の科の先生が肛門科を標榜することも増えてきました。

 

当然、専門外の先生なので肛門診療のトレーニングは受けていません。

 

診察方法も随分違いますし、ちゃんと診察出来ていなければ診断が間違っていることもしばしばあります。。。

必要のない手術をしていたり、切れ痔にジオン注射をしていたり、それによって重篤な後遺症を起こしているケースもあります。

 

ただでさえ少ない肛門科の専門医。

女医となるとさらにさらに少なくなります。

 

だから女医さんにこだわらないでほしいです。

女医にこだわると大切なものを見誤ります。

女医であることよりも専門性で肛門科を選んで下さい。

 

男の先生だって優しい先生がたくさんいるし、女医さんだからって優しいわけじゃない。

「肛門科の女医」「女性医師」「女医さん」という甘い言葉に騙されないで、しっかりと地に足を付けて肛門医療をやっている先生を選んで下さいね。

医師免許さえ持っていれば誰でも肛門科の看板を掲げられる

患者さんにとって分かりにくい看板。

内科・外科・アレルギー科・皮膚科・肛門科・・・・・

などなど、たくさんの診療科が書いてあって、どれが専門なのか分かりにくいクリニックの看板。

一昔前は(と言っても私が小さい頃なので約半世紀前になるけど・・・)、小児科医院や外科医院、内科医院など、一つの科だけ掲げている医院が多かったのにね。

 

このようにたくさんの診療科を標榜できるのは世界でも日本だけ?

少なくとも私の外来に来られる海外の患者さんに聞く限りは、海外では自分の専門領域でしか開業出来ないらしいです。

 

日本は自由標榜制なので、医師免許さえ持っていれば何科の看板を掲げてもOKなんですよ。

 

つまり医師免許さえあれば誰でも肛門科の看板を掲げることができます。

別に自分が専門じゃなくても、詳しく勉強したことがなくても・・・

 

極端な話、私が明日から耳鼻科や眼科の看板出しても違法じゃない。(苦笑)

そんなことしませんけどね😓

そもそも私、自分が知らない専門外のことに手を出すの、コワイのでやりません。

聞きかじり、ちょっと見ただけのことを実際の診療で出来ないです。

これって、ある意味、度胸の問題もあるんでしょうかね?😓

 

だから看板に書いてあるからって専門とは限らない。

何を専門にしている医師なのかは、経歴などで予測するか、先生に直接尋ねるか・・・くらいしか方法がないですね。

 

せっかくブログにたどり着いて下さった方が、ちゃんと近くの専門医にかかれるような動線を作れたら・・・

そんな風にずっと考えていました。

 

もちろん専門医だからって100%安心なわけじゃない、医師との相性、治療方針の違い、何を大切にしているかは一人一人違うでしょう。

 

でも、せめて、

ちゃんと肛門のことを分かっている先生にかかって欲しい

まじめに良心的に肛門診療をやっている専門性の高い先生にかかって欲しい

そう切に願います。

 

いつかそんな道しるべになるようなサイトを作りたいと思います。

待ってて下さいね。

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