繰り返す切れ痔は出始めの便が硬いせいかも
カテゴリー:
(2019年5月14日加筆修正)
実は患者さんの誰よりも便秘がひどい佐々木みのりです。
繰り返す切れ痔に悩んでいる人、多いですね。
その度に肛門科を受診して薬をもらって帰り、しばらく使ったら何となく治り(実は治ってなかったりする)、治ってはまた切れて・・・の繰り返し。。。
切れ痔を繰り返すうちに、ついに先生からは「手術」の言葉が・・・
何とか手術を避ける方法はないかとネットで調べ、当院のホームページやブログに辿りついた・・・という患者さんが遠方からたくさん来られています。
今日ご紹介する患者さんは遠方から「繰り返す切れ痔」に悩んで来られた女性です。
繰り返す切れ痔に悩む人が遠方からも受診されます
「繰り返す切れ痔」に悩んで診療所のブログに辿り着いたというケースが多いですね。
「出始めの便が固い」という言葉がまさに、ご自身の症状と当てはまっていたようです。
他を調べても、あまり出てこなかった・・・と言われますが、それは出口の便秘(直腸便秘)に関する説明が少ないせいでしょう。
ブログを読むと、ご自身の症状が便秘のせいと分かり、毎日排便があった人は衝撃を受けられます。
また、便通を正す根本的な治療方針にも興味を持たれるようです。
様々な医療機関を受診しても、いつも同じ薬の処方で終わり、根本的にどうしたら切れなくなるかは教えてくれなかったというご意見が多いです。
そんな治療にいつまで通院し続けるのか、不安はつのるばかりで、けれど医師には「気にし過ぎだ」と言われ更に落ち込んでしまい、痔のせいでプチうつ病のようになっている人もたくさん診てきました。
関東地方や北海道、東北地方などからも患者さんが来られますが、遠方であることに加え、自由診療という高いハードルがあるため、ご家族の理解と協力が無ければ受診出来ません。
来られた患者さんが皆さん、ご家族に感謝をされていたのも印象的でした。
出始めの便が硬いのは「出残り便」のせい
毎日便が出ていてもスッキリ出ずに中に便が残っていたら便秘だと私たちは考えています。
医学書にある「直腸性便秘」と少し違うので、患者さんには「出残り便秘」と説明しています。
この出残り便秘、結構くせ者でして・・・
残った便は時間が経つと古くなって固まってしまいます。
その固まった便は翌日に持ち越され、翌日の排便の時に最初に出てくるわけですが、なんせ、1日たってるので固くて肛門を通る時に肛門を傷付けたりします。
そして、その古い便が出た後に今日の出来たてホヤホヤの新しい便が出ます。
そしてまたスッキリ出ずに便が残ったりすると、傷に便が入り込んで切れ痔が治りにくくなります。
切れ痔がなかなか治らないから病院へ行くと、たいがい、痔の薬と便通を良くする飲み薬をくれます。
使うと、なんとなく切れ痔の痛みや出血がましになったりします。
飲み薬でやわらかい便を出すと、出す時の痛みはマシになりますが、相変わらずスッキリ出ずに中に便が残ると、やっぱり出始めの便だけは硬くなります。
だってね、飲み薬は肛門には効きません。
これから作られる便には効きますが、既に出来上がって肛門の近くまで来ている便や、ましてや出残り便には効きません。
どんな飲み薬も「おなか(腸)」に作用します。
「お尻(肛門)」には効かないです。
痔になっている人って、意外と「おなか(腸)」はちゃんと動いている人が多いので、下剤や軟便剤を飲むと最後は下痢・・・というパターンが多く、下痢便が残って傷がかえって悪化していることもあります。
肛門が便まみれだと傷も治らないです。
薬を飲めば飲むほど状況が悪化している人も多いですね。
出始めの便が硬いのは「出残り便」のせいなのに、残った便には何を飲んでも効かないのに、口から下剤を飲んでも意味がないですよね?
毎日便が出ているということは、腸はちゃんと動いて肛門の所まで便を送り届けてくれているんです。
その送り届けられた便を排出する過程でつまづいているのだから、ちゃんとスッキリ全部出し切るようにすることが治療となります。
出始めの便だけが硬いという場合、下剤は不要
出始めの便だけが硬くて、あとから出てくる便はやわらかい、あるいは下痢・・・という場合は、下剤や酸化マグネシウム系の軟便剤は不要です。
どんな下剤も整腸剤もサプリメントも出口(肛門)には効かないからです。
出口(肛門)は出来上がった便を排泄することろ。
排泄の過程がうまくいっていないだけであれば、どんな飲み薬も不要です。
出始めの便は昨日の出残り便です。
本来であれば昨日、出ていなければいけなかった便です。
それを出し切らずに肛門に残したから古くなって固まってしまったわけです。
毎日薬を飲んでも残った便はやわらかくなりません。
出始めの硬い便のあとに、やわらかい便が出て来ませんか?
それが今日の新しい本来の便です。
その便がびちびち、ドロドロだったら下剤や軟便剤は中止すべきだと思います。
もともと腸はちゃんと動いて良い便を作ってくれているのに、これ以上、動かしたり便をやわらかくする必要はないでしょう?
必要の無い下剤を飲んで、かえって切れ痔(裂肛)を悪化させている患者さんが多いです。
下剤を飲まなくても毎日便が出ていて、出始めだけが硬く、あとから出てくる便はやわらかい・・・という場合は出残り便秘を疑ってみてくださいね。
診療所のセラピードッグ「ラブ」🐾
右側がラブです💕
垂れ耳なのに話しかけると
一生懸命聴こうとしているのか
耳を立てるんですよ
元皮膚科医という異色の経歴を持つ肛門科専門医。現在でも肛門科専門医の資格を持つ女性医師は20名余り。その中で指導医の資格まで持ち、第一線で手術まで担当する女医は10名足らず。元皮膚科医という異色の経歴を持つため、肛門周囲の皮膚疾患の治療も得意とし、肛門外科の医師を対象に肛門周囲の皮膚病変についての学会での講演も多数あり。
「痔=手術」という肛門医療業界において、痔の原因となった「肛門の便秘」を直すことによって「切らない痔治療」を実現。自由診療にもかかわらず日本全国や海外からも患者が訪れている。大阪肛門科診療所(旧大阪肛門病院)は明治45年創立の日本で2番目に古い肛門科専門施設でもあり日本大腸肛門病学会認定施設。初代院長の佐々木惟朝は同学会の設立者の一人である。
2017年10月には日本臨床内科医学会において教育講演を行うなど新しい便秘の概念を提唱。