「いぼ痔」だと思ってたら「切れ痔」だったという勘違い、すごく多いです
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(2019年8月11日加筆修正)
診察による腕の使い過ぎで「テニス肘」になってしまった佐々木みのりです。
お尻のでっぱり、肛門のデキモノ=いぼ痔
って思い込んでいる人が本当に多いです。
思い込んでいるのは何も患者さんに限った話ではなく、専門外の先生も「見張りイボ」や「皮垂」を「いぼ痔」や「痔核・脱肛」と勘違いしているケースが結構あります。
「見張りイボ」だろうと「皮垂」だろうと「痔核・脱肛」だろうと、出来てしまった「物体」は手術して切除しなければ無くなりません。
だから
キレイに無くしてしまいたい
と思ってる人は手術を受けられたらいいでしょう。
でも
別に悪いモノじゃないなら手術したくない
と思ってる人が多いのも事実。
そして何度も手術を受けている患者さんも結構来られます。
「何度、いぼ痔の手術をしても、また出来るんです(泣)」
「痛みが無くなると思って手術を受けたのに、でっぱりは無くなったけど、痛みと出血は前と何も変わらない(悲)」
「一旦キレイになったのに、何度切ってもまた出来る」
と言われますが、皆さん、「見張りイボ」を「いぼ痔(痔核・脱肛)」と勘違いしておられました。。。
また中には
「その「いぼ痔」(でっぱり)が下着にこすれて痛いから、手術で取らなければならない」
と医師から説明されている患者さんもおられ、専門外の医師が「見張りイボ」を「いぼ痔(痔核・脱肛)」と混同しているケースも本当に多いです。。。
「いぼ痔(痔核・脱肛)」じゃなくて「切れ痔(裂肛)」なんだけどなぁ・・・
この記事の目次
「切れ痔(裂肛)」なのに30年間「いぼ痔(痔核・脱肛)」だと勘違いしていたケースも
先日受診された患者さん。
30年間、ずっといぼ痔(痔核・脱肛)だと思っていたものが切れ痔(裂肛)でした。
しかも軟便が毎日出ていたので下痢気味だと思っていたら、診察すると肛門の中に便が残っていて、出口の便秘(出残り便秘)という診断に・・・。
「今まで、30年ほど、いぼぢだと思っていたらきれぢで、
下痢気味だと思っていたら便秘でした。
びっくりしました。
手術しないといけないかもと思って来たので、本当にびっくりしました。
来て本当によかったです。」
と、なんだかびっくりしっぱなしの診察だったようで・・・(^◇^;)
この勘違いと衝撃、
毎日のように診察室で起こっています。
だから多くの人に知って欲しい。
そんな思いでブログを書いています。
「見張りイボ」は「切れ痔(裂肛)」の炎症で出来た皮膚の突起物ですよ
「見張りイボ」は切れ痔の炎症のせいで出来た「腫れ」です。
傷が便で汚染されると出来やすくなります。
だから便が残っていると出来てしまうんです。
傷が便で汚染されると傷の周りが炎症を起こして腫れてきます。
外側に向かって腫れたものを「見張りイボ」、肛門の内側に向かって腫れたものを「肛門ポリープ」と言います。
名前は違いますが、外向きに腫れたか、内向きに腫れたかという違いがあるだけで、同じ「腫れ」です。
「見張りイボ」という名前に「イボ」という言葉が入っているので、「いぼ痔(痔核・脱肛)」と間違えられやすいのですが、実際、いぼ痔(痔核・脱肛)と見た目がソックリな見張りイボもあり、本当に紛らわしいんです。
切れ痔(裂肛)が炎症を起こしている時は赤く硬くなって腫れたりします。
それを触ると痛いから、「いぼ痔(痔核・脱肛)」が痛いと勘違いされるのですが、痛いのは、その見張りイボの奥にある切れ痔(裂肛)なんですよ。
このような突起物が外にあると、「この奥に切れ痔(裂肛)がありますよ〜」「ここ、昔、切れ痔(裂肛)を繰り返していた所ですよ〜」って教えてくれてるんです。
だから「見張っている」イボと書いて「見張りイボ」と呼ばれています。
これは切れ痔(裂肛)が慢性化しているサイン!
だから肛門の中を診察する前に、見張りイボがあったら、「あ、ここ切れてるんだな。切れ痔を繰り返してたんだな。」って分かるんです。
患者さんが話してくれなくても、お尻が教えてくれるんです(苦笑)
切れ痔(裂肛)が治ってしまうと炎症もおさまり、コリコリッと硬かった見張りイボがやわらかくなり、皮膚のたるみのような状態になります。
切れ痔(裂肛)が存在しない場合は「肛門皮垂(ひすい)」と言ったりもします。
いずれにしても、このような突起物は皮膚のかたまりなので残念ながら無くなりません。
切れ痔(裂肛)が治ったとしても、時間が経っても消えないんです。
ある意味、切れ痔の証拠なんです。。。
患者さんが黙っていてもお尻が語ってくれるんです(笑)
「目は口ほどにものを言う」ならぬ「お尻は患者さんより痔を語る」なんです(苦笑)
切れ痔(裂肛)がちゃんと治ったら、見張りイボは手術しなくてもいいんですよ
切れ痔(裂肛)が治っても残ってしまう「見張りイボ」。
女性にとったら見た目も気になる皮膚の突起物です。
無くしたかったら、キレイにしたかったら、カッコいい肛門にしたかったら、手術して取り去る以外に方法はありません。
でも、気にならなければ手術は必要ありません。
だって、見張りイボそのものは病気じゃないし、痔じゃないです。
見張りイボは切れ痔(裂肛)の副産物です。
切れ痔(裂肛)が治ってしまったら皮膚のたるみとして残ってしまいますが、別に排便にも支障ないですし、それがあるから便が拭き取りにくいってこともないです。
全く何の問題もありません。
よく見張りイボのせいで肛門をキレイに拭けないって勘違いしてる人がいますが、違いますよ〜
キレイに拭けないのは便が残ってるからです。
スッキリ出ずに便が残ってるから何度拭いても紙に便が付くんです。
ウォシュレットで洗っても同じですよ。
便が残ってるとキレイにならないです。
それどころか肛門を洗ってると皮膚がボロボロになって切れやすくなります。
洗い過ぎで切れ痔(裂肛)を作って、見張りイボがまた腫れてきた・・・
というケースも多いです。
だから洗わないで下さいね。
その方が傷も早く治りますし、皮膚もキレイになります。
あなたが手術を勧められている「でっぱり」は本当に「いぼ痔(痔核・脱肛)」ですか?
「いぼ痔(痔核・脱肛)」で手術しないといけないって言われた・・・
という患者さんを診察すると、
「いぼ痔(痔核・脱肛)」ではなく「切れ痔(裂肛)」によって出来た「見張りイボ」というケースが本当に本当に・・・多いです。。。
中には手術を受けてしまってから大阪肛門科診療所に来られる患者さんもおられます。
しかも手術は1回だけじゃないんです。
もう何回も受けておられるケースも・・・
何度、手術しても「いぼ痔」が出来るんです・・・
1年に2〜3回も手術受けてるんですけど、こんなに何回も手術受けていていいのかなって心配になってきて・・・
と半泣きで来られた患者さんもおられました。
また「いぼ痔(痔核・脱肛)」で手術を強く勧められて、勢いに押され、その場で手術の案内をされ申し込みまでしてしまって、でも出来ることなら切らずに治したいと思い、わらにもすがる思いで私の外来に来られ、診察してみたら「いぼ痔(痔核・脱肛)」ではなく「切れ痔(裂肛)」による「見張りイボ」だった・・・
なんていうケースも本当に多いです。
手術が必要ないこと
これは「いぼ痔(痔核・脱肛)」ではなく「切れ痔(裂肛)」であること
このでっぱりは「切れ痔(裂肛)」のせいで出来た「見張りイボ」だから、気にならなければ放置しても構わないこと
を説明すると号泣して泣き崩れる患者さんもおられます。
それだけ「痔で手術が必要」と言われることは、奈落の底に突き落とされるくらい、患者さんにとったらすごくショックなんだと思います。
ブログでも何度も書いていますが、手術が必要な痔は本当に少ないです。
痔の多くは切らずに治ります。
大阪肛門科診療所の手術率は約5%です。
100人患者さんがいても、手術をしなければならないケースは5人も居ません。
ほとんどの患者さんが痔の原因となった便通を直せば良くなってしまいます。
逆に、便通を直さずに手術だけ受けても、また何度でも痔を繰り返します。
だから痔の根本治療は手術ではなく、痔の原因となった便通を直すこと。
大阪肛門科診療所では手術の前に必ず便通を直してもらっています(軟膏などを使用する治療を併用することもありますが、少数です)。
それで痔の症状が良くなったら手術は必要ありません。
それでも症状が改善しなくて、患者さんが希望した場合のみ手術をしています。
そもそも
あなたが「いぼ痔(痔核・脱肛)」だと思ってるものは本当に「いぼ痔(痔核・脱肛)」ですか?
もしかして「切れ痔(裂肛)」のせいで出来た「見張りイボ」ではないですか?
ちゃんと専門の先生・専門の病院を受診して下さいね(←これ大切)。
診断が大きく違うことがありますから。
専門の先生の探すときは、コチラの記事を参考にしてみてください↓
医師の経歴をチェックして次の記事の中に記載している肛門専門施設での研修・勤務経験のある医師を選ぶといいです↓
肛門科の女医は非常に少ないので
肛門科医を選ぶ際は医師の性別よりも専門性で選んで欲しいです。
元皮膚科医という異色の経歴を持つ肛門科専門医。現在でも肛門科専門医の資格を持つ女性医師は20名余り。その中で指導医の資格まで持ち、第一線で手術まで担当する女医は10名足らず。元皮膚科医という異色の経歴を持つため、肛門周囲の皮膚疾患の治療も得意とし、肛門外科の医師を対象に肛門周囲の皮膚病変についての学会での講演も多数あり。
「痔=手術」という肛門医療業界において、痔の原因となった「肛門の便秘」を直すことによって「切らない痔治療」を実現。自由診療にもかかわらず日本全国や海外からも患者が訪れている。大阪肛門科診療所(旧大阪肛門病院)は明治45年創立の日本で2番目に古い肛門科専門施設でもあり日本大腸肛門病学会認定施設。初代院長の佐々木惟朝は同学会の設立者の一人である。
2017年10月には日本臨床内科医学会において教育講演を行うなど新しい便秘の概念を提唱。