肛門のからの出血!!考えられる4つの症状
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(2019年8月8日加筆修正)
患者さんにすすめるだけでなく、自分もちゃんと大腸内視鏡検査を受けている佐々木みのりです。
トイレで出血したら・・・痔!
と決めつけている人が多いのですが、必ずしも痔とは限りません。
おしりからの出血、トイレでの出血について解説したいと思います。
解説に入る前に・・・
最後まで読まない人がおられたら困るのでこれだけは最初に伝えたい。
痔だと思ったら「がん」だったというケースもあるので、40歳を過ぎたら出血がなくても、2〜3年に1回は大腸内視鏡検査を受けて下さい!!
血が止まっても
出血がなくても・・・です。
「大腸がん=血便が出る」とは限りません。
長年、会社の健診で検便出してて異常なしだから大丈夫!と思っていた人から進行がんが見つかったりということもあります。
だから健診の検便結果に安心せず、何も症状がなくても大腸内視鏡検査を受けて下さい。
おしりからの出血で考えられる疾患は主に次の4つです。
1.痔疾患
2.炎症性腸疾患
3.大腸がん
4.その他の腸疾患・・・大腸憩室炎・クラミジア直腸炎・閉塞性大腸炎など
1.痔疾患
・いぼ痔(痔核・脱肛)
いぼ痔は医学的には、痔核のことで、主に内痔核のことを指します。
また痔核が大きくなると脱肛とも呼ばれます。
排便時にポタポタと出血するというケースが多いですが、出血量は様々です。
紙に血が付く程度という軽いものから便器が殺人現場のようになっている・・・という多量な出血まで本当に色々です。
その出血は鮮血で、痛みはないということが多いです。
痔核の大きさも関係ないことが多いですね。
小さなイボでも大量に出血していた患者さんもおられましたし、巨大なイボでも出血もなければ痛みもないという患者さんもたくさんおられます。
痛みを伴わない排便時の出血が、痔核の典型的な出血ですが、肛門の中に戻した痔核からもしばらく出血している場合は、中で溜まった血液が塊となって出てくることがあります。
ゼリー状の塊だったり、ちょっと赤黒くなっていたりすると「大腸がん?!」と大騒ぎして受診されます。
痔だと分かって一安心されるのですが、40歳を超えていて、まだ一度も大腸内視鏡検査を受けたことのない人には検査をすすめます。
痔に安心して大腸がんを見つける機会を失って欲しくないからです。
トイレでまた出血・・・
いぼ痔だわ〜
で長年すませていて、大腸内視鏡検査で進行がんが見つかったケースもありますから、
痔に安心しないで、
痔があっても、
痔からの出血であったとしても、
大腸内視鏡検査を受けて大腸がんがないかどうかを確認して欲しいのです。
またトイレが殺人現場になるくらい毎日出血があると貧血になります。
貧血が進行していくと動悸・息切れ・体のだるさ・階段を登ると息切れして最後まで登れない・・・などの症状も出て来ます。
本当にひどい貧血の患者さんは診察室にもフラフラしながら入って来られます。
顔は真っ青・・・
大丈夫ですか?って、まず最初に声をかけるくらい、重度の貧血の若い女性もおられます。
恥ずかしいからって我慢せずに、まずは内科でもいいので、ちゃんと受診して貧血の検査も受けて下さいね。
また普段は痛みを伴わない痔核(脱肛)も、イボの根っこの部分が裂けると死ぬほど痛くなります。
このことについては「随伴裂肛」の記事を読んでください↓
・切れ痔(裂肛)
いぼ痔(痔核・脱肛)の出血と違い、紙に付く程度の少量の出血が多いですが、中にはいぼ痔に負けないくらいポタポタ出血するケースや、排便後しばらく血が止まらず、ジワ〜っと出ていて下着にも血が付くケースもあります。
また便を見ると、切れている部分が分かるような、スーッと線状の血が便に付いていると報告してくれる患者さんも多いです。
(たまに携帯やスマホで便の写真を撮って見せてくれる患者さんもいる)
排便の時に出るので鮮血であることが多いですが、排便後も血が止まらず出ている患者さんだと、便の出始めにゼリー状のねとっとした血が付いていたり、血の塊が出てから便が出るということがありますから、鮮血であるとは限りません。
また切れているから痛みを伴っていることが多いのですが、全く痛みの無い切れ痔(裂肛)も結構あります。
切れていることに気付いていないケースもあり、突然血が出たと言って受診されます。
・痔瘻
膿が溜まる病気なので、膿が出るという症状が一般的ですが、中には血膿のようなものが出て来て、出血に驚いて受診されることがあります。
紙に付く程度の出血や下着に血が付いていたという症状が多いです。
2,炎症性腸疾患
若い人に多い潰瘍性大腸炎やクローン病でも、おしりから血が出たと肛門科を受診されるケースがあります。
肛門科を受診して初めて診断に至るということも多いです。
特に潰瘍性大腸炎は痔の出血と間違えられやすく、出血の程度も様々です。
よーく患者さんの話を聞いていると「あれ?おかしいな・・・」と分かることがあります。
排便時以外にも出血することがあるんです。
もちろん全例ではありません。
「排尿時にも肛門から出血する」
と言われた患者さんが結構おられました。
またその出血も鮮血というよりは、ちょっとねとっとしていたり、ゼリー状であったり、便にねっとり付いていたり・・・と、いぼ痔(痔核・脱肛)や切れ痔(裂肛)の出血とは違うことが多いです。
また潰瘍性大腸炎に、痔核や裂肛を合併しているケースだと、どちらからの出血が紛らわしいこともありますが、何となく・・・長年の勘と直腸診をした時の指先の手触り、肛門鏡から垣間見える直腸粘膜の発赤や粘膜の粗造など、なんか違う・・・という違和感があります。
ちょっと気になる
これはおかしい・・・
と感じたら大腸内視鏡検査を受けてもらっています。
その時も、近所の内科で受けてね〜で済ませず、炎症性腸疾患を専門にしている内科の先生をわざわざ紹介して受診してもらっています。
炎症性腸疾患に詳しくない医師だと、ちょっとした内視鏡所見を見抜けないことがあるからです。
私たちが肛門を専門にしているように、内科でも様々な専門領域に分かれていて、何を専門にしている先生なのかで随分違いますから。
だからこだわって紹介しています。
潰瘍性大腸炎やクローン病はに若い人、特に10代で見つかるケースも多く、早く見つけて治療を開始すれば進行を防ぐことが出来たりするので、出来るだけ早く見つけてあげたいものです。
私たちは肛門科医なので腸の病気は詳しくないです。
それでも炎症性腸疾患と直腸がんだけは見落とすまいと思って診察しています。
今まで近所の内科で胃カメラと大腸カメラも受けて胃腸炎だと診断されてずーっと薬を飲み続けているのに治らず、大阪肛門科診療所で見つかった・・・という潰瘍性大腸炎やクローン病も経験しており、専門にかからなければならないのは何も肛門科だけでなく、どんな疾患も同じなのだと思いました。
医療機関を受診される際は、医師の専門も調べてから受診されることをオススメしたいですね。
3.大腸がん
肛門科で見つけやすいのは大腸の末端、直腸に出来た直腸がんです。
肛門の近くだと指診で触れることが多いです。
また私たちは便が溜まっている場合は、浣腸や坐薬を使って排泄してきてもらって、肛門と直腸をカラにしてから、もう一度、診察をし直すので、便をどけたら「がん」が分かった!なんてことも、たくさん経験しています。
だから必ず便をキレイに出し切ってもらってから、もう一度診察し直すんです。
排泄によって直腸が下がってくるので、排便前に触れなかった腫瘍を触れることも多々あります。
だから便が溜まっている人は2回、診察します。
痔からの出血と違って茶褐色のことも多いですが、肛門の近くだと真っ赤な鮮血になることもありますから、出血の色で「がん」かどうかを判断出来ませんし、すべきではないと思います。
また大腸「がん」だからって必ず出血するとは限りません。
初期の小さな「がん」だと無症状ですから、本当は出血する前に見つけたいです。
早期発見のためには検便だけでなく大腸内視鏡検査も受けて下さいね。
痔からの出血だと思ったら直腸がんだったというケースもあります↓↓
4.その他の腸疾患・・・大腸憩室炎・クラミジア直腸炎・閉塞性大腸炎など
私たちの専門外の疾患ですが、肛門から出血がみられると肛門科を受診されることも多いです。
その出血の程度も「服が血まみれになった・・・」という大量の出血から、紙に付く程度のものまで様々でした。
少なくとも診察して痔ではない、痔からの出血ではないと分かるので、内科の先生を紹介して、そこで初めて診断が付くという流れになります。
最近、若い女性のクラミジア直腸炎が増えています。
原因は肛門性交であることが多く、感染しているのはクラミジアだけでなくHIVやHPVなどのウイルス感染も合併していることがあるため、注意が必要です。
ただし肛門尖圭コンジローマは性行為を介さずに発症しているケースが年々増加しています。
詳しい話はコチラ↓
出血は放置せず必ず受診を
というわけで、出血は放置せず必ず受診して下さい。
放置すると貧血が進みますし、原因を突き止めずに放置するのは危険です。
肛門科を受診することに抵抗があるのであれば、消化器内科でもいいでしょう。
とにかく大腸内視鏡検査など、腸を診ることが出来る先生を探して受診して下さい。
痔であればいいんですよ。
別に放置しても死にませんから。
でも大腸がんは放置すれば確実に死が近づきます。
どうか早く見つけて治療して下さい。
小さな「がん」だと内視鏡で切除して終わり!っていうこともありますから。
「『がん』だったらコワイから検査受けられないんです…>_<…」
って言っている患者さんが時々いるのですが、逆ですよ逆!
「放置してる方が怖いわ!」と説明して検査を勧めています。
特に大腸がんだけは早く見つけて切除すれば完治するだけに、早く行って!と言いたいです。
私が20年間の肛門診療で見つけた直腸がんの患者さんは、随分大きな「がん」の人でも、手術して元気に生存しているケースが多いです。
転移が無ければ完治しています。
だから怖がらずに受診して下さいね!
元皮膚科医という異色の経歴を持つ肛門科専門医。現在でも肛門科専門医の資格を持つ女性医師は20名余り。その中で指導医の資格まで持ち、第一線で手術まで担当する女医は10名足らず。元皮膚科医という異色の経歴を持つため、肛門周囲の皮膚疾患の治療も得意とし、肛門外科の医師を対象に肛門周囲の皮膚病変についての学会での講演も多数あり。
「痔=手術」という肛門医療業界において、痔の原因となった「肛門の便秘」を直すことによって「切らない痔治療」を実現。自由診療にもかかわらず日本全国や海外からも患者が訪れている。大阪肛門科診療所(旧大阪肛門病院)は明治45年創立の日本で2番目に古い肛門科専門施設でもあり日本大腸肛門病学会認定施設。初代院長の佐々木惟朝は同学会の設立者の一人である。
2017年10月には日本臨床内科医学会において教育講演を行うなど新しい便秘の概念を提唱。