いぼ痔(痔核)とは?

いぼ痔は肛門でっぱりができる痔のことで、医学的には「いぼ痔=痔核」です。

歯状線よりも内側にできると内痔核、外側にできると外痔核と分類します。また、通常の痔核には痛みはありませんが、激しい痛みを伴う痔核には血栓性外痔核という病気があります。

いぼ痔の治療というと手術のイメージが強いかも知れません。しかし、生活習慣をあらためるだけで悩みが改善するケースや、痛みが強くても1週間程度で自然に治ってしまう病気もあります。

また、いぼ痔に似た病気はたくさんありますので、ご自身でいぼ痔と思っていてもそれが正しいかどうかは分かりません。特に注意が必要なのは、ガンを痔だと思い込んでいるケースです。

適切な治療を受けるためにもひとりで悩まず、
一度は病院で専門の医師による診察を受けていただきたいと思います。

直腸と肛門の境界線より内側に出来たいぼ痔内痔核

内痔核は歯状線よりも内側に出来る痔核です。痛みはなく、出血とでっぱりが主症状です。

痔核の正体は血管や結合組織が膨らんだもので、表面の粘膜が切れると派手に出血します(血液がポトポト垂れる、シューっと噴き出す)。出血が続いて貧血になる人もいますから要注意です。

痔核の発生はうっ血と排便時の摩擦が原因とされていますが、当院では特にうっ血が痔核に悪影響を及ぼすと考えています。
痔核の進行段階はⅠ度からⅣ度の度数で分類されています。

内痔核の度数と症状
Ⅰ度 初期は肛門の中でふくらんでいるだけで症状は出血のみで痛みはありません。
Ⅱ度 少し大きくなると排便時に肛門の外に飛び出すようになりますが、排便終了により即座に自然に肛門の中に引っ込みます。
Ⅲ度 さらに大きくなると次第に排便が終了しても戻りにくくなり手で押し戻すなどの操作が必要になります。
Ⅳ度 最終的に常時脱出したままとなります。

内痔核の治療

内痔核の治療には、手術療法と保存療法があります。最近話題の注射療法(ALTA療法)は手術療法に含まれます。

通常ははじめに保存療法を試します。当院で手術となるのはごく一部の患者さんで、痔核全体の3%(2018年)です。多くは痛みを伴う痔核の患者さんです(嵌頓痔核、随伴裂肛の項をご覧ください)。

当院で内痔核の治療として最初に行うのは日常生活の中で行う便通の管理です。
痔のお薬はあまり使用しません。

内痔核の方の多くは出口の便秘で、排便しても出し切れない便が出口周辺に残っています。これを坐薬を使用し排出することで肛門のうっ血を押さえようとする治療です。一度できてしまった痔核を無くすには手術するしかないのですが、多くの患者さんは不快な症状さえ良くなればあえて手術したいとは思わないようです。当院はそういった患者さんのご希望を大切に考えるようにしています。

それでも手術治療をご希望の方もおられます。例えば、便通の管理では十分な効果が得られない、高齢で今が治療の最後のチャンス・・そんなご希望をお持ちの患者さんとは十分相談して手術治療を検討しています。

  • 入院手術

    結紮切除術(けっさつせつじょじゅつ)という、痔核手術における標準術式で手術します。当院では半分だけ縫うスタイルの半閉鎖式を得意としています。当院の場合「痛みを少なくしたい」という方にお勧めしています。術後大量出血予防の観点より約1週間の入院をして頂きます。

  • 日帰り手術

    分離結紮術(ぶんりけっさつじゅつ)という、痔核の根元を糸で縛る手術です。術後大量出血の可能性が非常に低いので日帰りが可能です。また術後の皮垂が結紮切除術よりも少ない傾向があり、より美しく治るのが本術式の長所です。短所は、結紮切除術に比べて痛みが強いことです。

  • 内痔核硬化療法(ALTA療法=ジオン®注射)

    硬化剤を注射して痔核を固めてしまう方法です。痛みなく実施できるのが特長ですが、適応症例が限られます。また一定の確率で再発することが知られています。当院では採用していません。

  • PPH法

    内痔核を少し奥につり上げて固定し脱肛しないようにする術式です。特殊な器具を使用して行います。一時期多くの施設で採用された方法ですが近年実践する施設は一部に限られます。当院では採用していません。

  • レーザー手術

    メスなどの刃物の代わりとして使用する方法と、あらかじめ痔核に注射した色素を目がけて照射し痔核を焼いて治療する方法があります。いずれも一時多くの施設で採用されましたが、現在は少数の施設で行われているのみです。当院では前者のみ過去に実施していました。現在はいずれも実施していません。

直腸と肛門の境界線より外側に出来たいぼ痔外痔核

歯状線よりも外側に出来た痔核が外痔核です。

通常痛みはなく、症状は「痔かも?」「心配」「気になる」などが大半。

このような不便がないものは、ガンでないという診断をしておけば治療の必要がありません。なお、外痔核には痛みを伴う特殊形があります。

外痔核の治療

外痔核は無症状なら治療の必要はありません。痛みを伴う外痔核では、まず便通の管理を中心とする保存治療を行い、それで効果がなければ手術治療を検討します。

また外痔核の手術では入院手術は少なく、日帰り手術を選択する事が多いです。それは、外痔核の場合は美しく治したい患者さんが多いから、または、激痛に対して緊急に行うケースが多いからです。

例外的な痔核

  • 血栓性外痔核

    「突然おしりに痛みを感じ、触ってみるとコリコリの丸い腫れができていた」という症状で発症します。急激な発症と痛みのせいで手術を覚悟して受診する患者さんが多い病気ですが、自然に治ってしまうことがほとんどです。手術をしても繰り返すことが多いため、通常は手術は行いません。腫れの正体は血豆。

  • 嵌頓(かんとん)痔核

    血栓性外痔核の規模の大きなモノです。突然または数日かけて徐々に発症、大きな腫れと激痛が特徴です。腫れの大きさはピンポン玉大から大きいとゲンコツ大のこともあります。理論上は血栓性外痔核と同様に手術なしでも治る病気なのですが、激痛のあまり早く楽になりたいと手術を選択する患者さんが多い病気です。当院でもご希望があれば緊急に手術を行うことがあります。

  • 痔核が牽引されてできる裂肛=随伴裂肛

    痔核が強く引っ張られて肛門の皮膚が裂けてしまうのが随伴裂肛(または牽引裂肛)です。痛みが非常に強く、排便後長時間持続します。例えば朝の排便から「あぶら汗をかく」ような痛みが始まり、半日ほど持続します。随伴裂肛は痔核が動くたびに引っ張られるため安静が保てません。手術以外の治療では治る可能性が低く、また治る場合も時間がかかるので、手術を選択する患者さんが多い病気です。

痔の種類と治療

痔の症状は大きく3つに分類されます。種類ごとに症状や治療法など詳しく説明します。

  • イボ痔

    肛門が膨らんでこぶ状になる病気。
    通常の痔核ではでっぱりと出血が主な症状で痛みは軽度ですが、痔核の一種である血栓性外痔核は突然痛みと腫れで発症します。

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  • 切れ痔

    裂肛は肛門に出来たキズ。
    排便時の痛みと少量の出血が典型的な症状で、原因は硬便が多数を占めます。初期に適切に治療すれば治りますが、慢性化すると手術が必要になるケースもあります。

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  • 痔ろう

    肛門が化膿する病気。
    痔ろうは激痛と発熱で発症し、初期に膿を出すために切開処置が必要なケースが多いです。長期間放置すると痔ろうガンが発生するケースがありますので、注意が必要です。

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  • 痔の治療

    治療の第一歩は正しい排泄から。痔の原因となった排泄を直すことから始めます。

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    痔は排便習慣の結果です。毎日スッキリ完全に排便することが痔を予防するために一番大切だと考えています。

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    当院は1998年7月に日本で初めて女医による女性専用の診察時間である「女性のための診察時間」を設置。以来何万人もの女性の痔の悩みに答えてきました。

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  • 大阪肛門科診療所について

    「できるだけ手術をしなくて良いように一生懸命手を尽くす。しかし、いざ手術になったら本当に良い手術を提供できる。」これが理想の肛門診療だと考えています。

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