痔と女性の関係
女性と痔
女性が痔の悩みを持つことは珍しいことではありません。当院は1998年7月に日本で初めて女医による女性専用の診察時間である「女性のための診察時間」を設置。以来何万人もの女性の痔の悩みに答えてきました。受診患者さんの年齢層は幅広く、小学生からお年寄りまで。恥ずかしいという気持ちは年齢を問わないものだということがよく分かります。
病気としては女性には切れ痔が特に多いのが特長です。ついで、いぼ痔、肛門そう痒症も多いです。また、痔ろうは男性に多い病気とされていますが、当院では女性の痔ろうも多数経験しています。世の中の肛門科医が考えているほど、女性の痔ろうが少ないわけではなさそうです。
出口の便秘は痔の大敵
女性の痔に限らずですが、当院では「出口の便秘」が痔を作り、悪化させると考えています。
「出口の便秘」とは、出口(=肛門の中、すぐ近くの部分)に便が残っている状態のこと。毎日何回も排便があったとしても、出口に便が残っていればそれは出口の便秘。排出力が低下している状態で、排便してもスッキリ完全に出すことができない状態と言い換えることも言えます。また、ご自分が「スッキリした」と感じていても、出口の便秘の方はおられます。スッキリ感が当てにならないことにショックを受ける患者さんも多いです。簡単な判定法は、排便後肛門を洗わずにペーパーで便を拭き取ってみること。3回目に拭いたときに便がまだ付くようなら、出口の便秘である可能性、大です。
なぜ出口の便秘が痔を作るのか
-
いぼ痔の成長
肛門のすぐ上に残った便は肛門をうっ血させ、いぼ痔のでっぱりを充血させます。いぼ痔は充血によって腫れたり縮んだりを繰り返すと、いずれ伸びきった風船のように縮まなくなります。そうしていぼ痔が成長してゆくのです。 -
2階建ての便
残った便は翌日まで持ち越しになり、水分が吸収されて硬くなります。翌日の排便は先端は硬く(=出残り部分)後半は柔らかく(今日の新しい便)の2階建て状態になります。毎日排便があるのに、良い便が出ているのに切れると言う状態になります。 -
肛門腺への便の侵入
痔ろうの原因である肛門腺への便の侵入は、下痢が原因のケースと、出口に残った便が原因のケースに分かれると考え、学会で発表し提案しています。 -
ちぎって終わる排便
便を出し切れない=肛門の力で便を途中でちぎって排便終了している、と考えられます。よって拭きすぎ、洗いすぎの傾向になる人が多くなります。拭きすぎ・洗いすぎは肛門そう痒症や皮膚のただれといった皮膚トラブルの原因になります。 -
便意が鈍感に
出口に便が残ってしまったからといって、いつまでも便意を催しているわけではありません。すぐに慣れて便意はなくなってしまいます。これを繰り返すと、便意の感覚が鈍感になり、ますます出口の便秘は悪化します。
ほかの原因・・妊娠と出産
妊娠出産による痔の発症は無視できない原因です。
妊娠中や出産により急な痛みと腫れで発症する血栓性外痔核、嵌頓痔核はその代表です(いぼ痔の解説ページをご参照ください)。妊娠中はお腹の赤ちゃんの安全を優先するため手術は行いません。また出産後は可能な限り育児を優先する立場を取っており、手術治療はお勧めしていません。出口の便秘に対する排便管理で切り抜けるよう努力しています。実は、出産時の腫れは授乳が終わる頃にはキレイに治っている人も多いからです。授乳が終わってもでっぱりが残ることもありますが、大半は皮垂という皮膚のしわで病気ではありません。生活の不便がなければ治療不要です。
妊娠中と授乳期に便が硬くなり、切れ痔で悩む人も多いようです。特に授乳中はいくら水分を摂っても全部母乳を作るために腸管で吸収されてしまいます。一番効率の良い対策は出口の便秘にたいする対策をして、便が降りてきたら固まる前にできるだけ早く排便してしまうこと、でしょう。
冷え
女性には冷えやすい体質の方が多く、冷えは痔を悪化させます。冷えると身体の活動性が落ち便通に悪影響がありますし、逆に活動性が悪いから便通にも悪影響があるとも言えそうです。冷える時期にはカイロを使う、お風呂にゆっくりつかって温めるという対策は有効です。
痔の種類と治療
痔の症状は大きく3つに分類されます。種類ごとに症状や治療法など詳しく説明します。