便秘について
痔の原因は便秘?
古くから「痔の原因は便秘」と言われてきました。痔の方の中には「毎日快便で便秘なんてしたことがないのに・・」と首をかしげる方もおられると思います。当院に通院している痔の患者さんを見ていても、毎日排便している方が多いのです。それでも痔になってしまうのはなぜでしょう?
「出口の便秘」と「おなかの便秘」
肛門科で扱う便秘は「出口の便秘」です。内科医が考える「おなかの便秘」とは少し違います。
何が違うかというと、「どこで通りが悪くなっているのか?」ということ。
「おなかの便秘」は小腸や大腸で便の通りが悪くなっていて、飲み薬が有効です。
一方肛門科で扱う出口の便秘は、肛門とそのすぐ奥の直腸に原因があり、飲み薬はほとんど効果はありません。当院では痔を作り悪化させるのは「出口の便秘」だと考えています。
「出口の便秘」だと、何が起こる?
「出口の便秘」では、排出力の低下と便意の低下が起こります。
出口の便秘では便を完全に排出することができなくなります。例えば、排便したばかりなのに肛門のすぐ内側に出残った便がある、という状態です。出口の便秘のせいでおきる症状にはこんなものがあります。
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肛門そう痒症の原因
排便後、何回拭いてもキレイにならない。温水洗浄便座がないとキレイにできない。
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快便と勘違い
食事のたびに排便する。
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切れ痔の原因
先端だけが硬い便がでる。毎日排便しているのに切れる。
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いぼ痔の原因
肛門がうっ血しがち。
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痔ろうの原因のひとつ
肛門内にある肛門腺に便が接触しやすい。
「毎日排便しているのに便秘なんて本当?」と思ったかも知れません。一般の内科医でも驚きますから、一般の方がそう思うのも無理はありません。
当院ではこういった便秘のことを「出残り便秘®」という造語で説明しています。
「残便感がない」「スッキリしている」は、あてにならない
さて、出口の便秘がさらに進行するとどうなるでしょう?直腸が出残り便に慣れて鈍感になり、便意を感じにくくなります。初めのうちは出し切れない不快感があったのに、段々と出残り便があるのに気付かず不快感がない状態になります。完全に排便できていないのに「スッキリした」と感じてしまうカラダになってしまうわけです。これを当院では「鈍感便秘®」という造語で呼んでいます。
たとえ気付いていなくても「出口の便秘」は痔の原因になる
「出口の便秘」=「出残り便秘®」+「鈍感便秘®」です。
さて、ほとんどの痔の患者さんは「出残り便秘®+鈍感便秘®」の状態が完成してから受診します。患者さんとしては「排便してスッキリした!」と思っているのに、ちゃんと中には残便があることが多い。「あなたは残便に気付いていなくても、その残便は痔を作り悪化させている」というのが当院の考え方です。
「出口の便秘」の治療=「手術を避ける技術」
大阪肛門科診療所は手術を避ける技術を大切にする肛門科です。当院が手術を避けるために様々な治療を行いますが、最も大切なのは出口の便秘の治療です。手術をしなくても、もっとたくさんの痔が治るような肛門診療を目指しています。
痔の種類と治療
痔の症状は大きく3つに分類されます。種類ごとに症状や治療法など詳しく説明します。