肛門科は痔が治ったら患者さんが通って来なくなる所です
カテゴリー:
昔は病弱で、しょっちゅう医者にかかっていた佐々木みのりです。
私は医者になってから最初の4年間だけ皮膚科医をしていました。
皮膚科には慢性疾患が多く、たくさんの患者さんが定期的に、ずーっと通ってきておられました。
アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬、掌蹠膿疱症や慢性じんま疹、膠原病など、完治しない、ずっと治療が必要な病気が多く、月に1回くらい通院されている患者さんに、その度に薬を出していました。
薬が無くなると患者さんは受診して薬をもらって帰る・・・というエンドレスに通院が続くみたいな感じでしたね。
だから患者さんとは顔なじみ、付き合いが長くなります。
皮膚科だけじゃないですよね。
ずっと通院する病気って他にもたくさんありますよね。
高血圧、糖尿病、高脂血症、不整脈など、薬で病気のコントロールがずっと必要な疾患は内科でも多いと思いますし、実際に近所のクリニックに定期的に長年通っている人も多いでしょう。
でもね、肛門科は違うんです。
痔を治したら患者さんは来なくなります。
考えれば当たり前のことなんですが、皮膚科医から肛門科医に転身した時、私には衝撃でした。
だって痔って治るんです!
治ったら患者さんとお別れで、笑顔で「ありがとうございました。お世話になりました。さようなら。」って去って行かれるんですよ。
皮膚科医の時は慢性疾患の患者さんが多かったため、患者さんも「いつ治るんだろう・・・。治らないから来てるんだけど、っていうか一生、付き合っていかないといけない病気だよね・・・。」と、こぼされることもあり、エンドレスな通院に、力になれない自分が歯がゆく感じることが多く、「医者の仕事って何なんだろう・・・?ただ薬を渡してるだけだよな・・・。」と虚無感に襲われることがよくありました。
ところが肛門科は分かりやすい!明るい!
だって、痔は治るし!
治ったら治療終わりだし!
見てその場で分かることが多く、治療結果が見える肛門科の診療は、私にとって、希望の持てる明るく楽しいものでした。
この記事の目次
ずっと肛門科に通い続けている?!
でも・・・
その希望も、すぐに疑問に変わりました。
当院は自由診療です。
保険が効きません。
診療費が保険診療の肛門科に比べると高いです。
だからというわけではないのでしょうが、色々な肛門科(と看板に書いてあるクリニック)を回ってから最後に来られる患者さんが多いです。
遠方からもたくさんの患者さんが来られています。
そんな患者さんの話を聞いていると、何年も、人によったら何十年も、ずっと肛門科(と書いてあるクリニック)に通ってるんです。😱
通院のペースも2週間に1回という人が多くて正直驚きました。
それで痔が治っている、良くなっているのであればいいのですが、調子が悪いから、治らないからずっと通ってるんです。
そして通っている間にも痔はどんどん悪化・・・。
最後には手術宣告・・・。
薬の使用量にも驚きました。
通院の度に紙袋いっぱいの注入軟膏をもらって帰ってるんです。
注入軟膏の多くはステロイドが入っています。
長期使用するとステロイドの副作用が出て来ます。
だから私は2週間を限度に使用を中止しています。
というよりも2週間で治ってしまうことが多いので、それ以上、薬は出さないです。
2週間後、2回目の診察に来られた時には完治終了となることに、セカンドオピニオンの患者さんは衝撃を受けられます。
長い間、ずっと通院し続けている人が多い
当院のホームページやブログは見ているけれど受診の決心がなかなか付かず長い間、同じ肛門科に受診している人も多いです。
遠方から受診される患者さんから話を聞いていると、ずっと通われている地元の肛門科は、駐車場に入る為に行列ができ、待ち時間も1時間超は当たり前だったそうです。
「それもこれも先生の腕が良いから患者が来るんだ・・・『患者に選ばれる名医』だから、ここなら大丈夫!」と3分診察を受け、質問も出来ないような怖い雰囲気だったけれど、そこしか無いから通っていたそうです。
一大決心をして遠方から受診され、当院での診察が今までのものと全然違うことに驚かれます。
リラックスして診察が受けられること
診察が痛みくないこと
質問にも丁寧に答えてもらえること
これからの生活で気を付けることなど教えてもらえること
そして驚かれるのが「私が痔を作ってきたのか・・・」という事実。
痔を作った原因である「出残り便秘」「鈍感便秘」について説明すると皆さん、驚かれます。
混んでいる肛門科が良いとは限らない
日本人は行列に弱いです。
たくさん人が集まっているところに居ると安心する民族なのでしょうか😓
人と違うことをするより、人と同じが安心・・・みたいな価値観があるように思いますね。
自分だけじゃない
たくさん人がいると安心!
という心理は誰にでもあるでしょう。
でもね
肛門科に限っては必ずしも当てはまらないです。
だってね、よーく考えてみて下さい。
なぜ混んでるのか?
自分は治ってるのか?
混んでいるクリニックだろうと
閑古鳥が鳴いているクリニックだろうと
ちゃんと痔が治って、あなたがハッピーならいいんですよ。
混んでるかどうかが問題じゃなくて
ちゃんと治るかどうかが大切だから。
でも・・・
私の外来に来られる患者さんは「治らないから」「治ってないから」ずーっと2週間に1回通い続けている人が多いです。
出される薬に不安と疑問を覚えつつも、結局、質問も出来ず、相談も出来ず、ただただ行列に並んで薬をもらって帰るということを延々としておられます。
混んでいる理由が「治らずにずっと通っている患者さんが多い」のであれば、先生の腕が良いとは言えませんよね。
治ったら通院は終わるんですよ。
ずっと通うことに疑問を持って欲しいです。
痔は慢性疾患じゃない。
ちゃんと治るし、うまく付き合えば通院は必要ないです。
評判が良くて患者さんがあふれかえっているのか
治らないから患者さんが行列を作ってるのか
どちらなのかを見極めることが必要です。
だから混んでいる病院が良いとは限らないし、すいている病院が悪いとも限らない。
だって治ったら患者さん、来なくなりますから。
うちの診療所なんて、2回目の通院で終了になることが多いので、すいてる時は本当に暇ですよ😅
だって治ってるのに来てもらう意味無いですよね?
だから通院を終わるんです。
治らずにずっと通ってもらう方が医療機関は儲かる
ここで医療を経営面から考えてみたいと思います。
よく医療機関の経営コンサルの宣伝が入りますが、それを見ると
「集患と増患、リピート率の向上!!」
と書いてありました。
どういうことかと言いますと・・・
集患=患者さんを集めること
増患=患者さんを増やすこと
リピート率の向上=患者さんに何度も通ってもらうこと
であります。
医療の内容は横に置いておいて、経営の方程式のようなものですね😅
良い悪いはこの際、論じません。
つまり、経営だけ考えたら「一人の患者さんに出来るだけ何度もたくさん通ってもらった方が売り上げアップになる」ということです。
昔、歯科医院の治療で話題になりましたが、一度で治療を終わらずに何度かに分けて治す、何度か患者さんに来てもらう方が収入になるから、何度も通わせてるんだ・・・みたいな記事を週刊誌か何かで読んだことがありますが、これ、医科でも同じです。
昔、隅越幸男先生が
「オペの上手い肛門科医が一発で治すよりも、駆け出しの医者が手こずって何度もオペする方が儲かる仕組みなんておかしいよね」っておっしゃっていたそうですが、保険診療だろうと自由診療だろうと同じです。
治らずにずっと通ってくれる方が儲かります。
通院回数も術後は毎日来てもらう方が儲かります。
「週に1回の通院」よりも「毎日通院」の方が7倍も売り上げアップなんですよ。
その通院が本当に医学的に必要であればいいんです。
必要な場合も実際ありますから。
でも、それが自院の売り上げのためだったら・・・
誰のための医療なのか分かりませんよね😑
だからね
まじめに地道に患者さんの利益だけ考えて医療をすると本当に儲からないんです。。。
特に保険診療の先生は大変です。
儲かる儲からないのレベルじゃなくて死活問題ですよ。
まじめに患者さんのためにやっている先生ほど儲かってなくて大変だったりする。
うちの診療所は自費だから倒産せずにどうにかこうにか生きながらえているけど、保険診療だったら、こんなやり方で医療をしていたら間違いなくつぶれてましたね。
息子の高校の卒業式で同窓会の会長が言われた言葉だったと思うのですが、今でも心に深く残っているのが
「自分の利益を犠牲にしてでも相手の役に立つことをする」
という言葉。
言うは易く行うは難しですね。
私たちは常に患者さんの利益を優先したいと思って、患者さんの利便性を考えて診療をしていきたいと思っています。
何のための通院なのか?
誤解しないで欲しいのですが、何のための通院なのか、患者さん自身がよく考えて欲しいと思います。
術後の通院は必要です。
その通院のペースは施設や医師によって様々です。
当院でも本来であれば入院して行うべき術式で日帰り手術を受けてもらった場合、1週間は毎日通ってもらっています。
通常の日帰り手術の場合は手術翌日に診察に来てもらって、そのあとは週に1回の通院としています。
この判断も患者さんによって異なることも多く、術後の経過次第では、もっと頻繁に来てもらうこともあります。
慎重な先生だと通院の回数が多いかもしれません。
つまり術後の通院に関しては個々の施設で随分違うと思います。
でも、ただ痔の治療のためにずっと通っているとしたら・・・ちょっと考えてみて欲しいのです。
治すために通っているのであればいいんです。
通院によって痔が改善しているのであればいいんです。
あるいは痔が悪化しないために定期的に数ヶ月に1回、チェックを受けに通っているのであればいいんです。
でも
治らずにずっと薬をもらいに通っている
通っているのに痔が悪化している
というのであれば、一度、医院を変えた方が良いかもしれません。
肛門科だけは専門にかかってほしい
セカンドオピニオンで来られた患者さんの多くが専門外の医師にかかっておられました。
もしも今、専門外の先生に診てもらっているのであれば、一度、肛門を専門にしている、肛門に詳しい先生がいる施設を受診するのも一つの選択肢だと思います。
全くの専門外の先生なのに、通っている医院の先生が専門だと思い込んでいた患者さんも多く、肛門を専門にしている先生を探すのが難しいと言われることが多かったです。
そんな人のために書いた記事がコチラ↓
「肛門科の専門医の探し方・選び方〜期待外れにならないために〜」
肛門専門施設は全国でも限られています↓
あなたの近くにもきっと居るはずです。
探してみて下さいね。
あなたが専門の医師に出会えて、ちゃんと痔が治ることを願っています。
特に肛門科の女医は少ないです。
性別よりも専門性で選んで欲しいです↓
診療所のセラピードッグ「ラブ」🐾
真ん中のトイプードルがラブです🐶
散歩中も多頭でトレーニング♪
みんな指示に従います✌
元皮膚科医という異色の経歴を持つ肛門科専門医。現在でも肛門科専門医の資格を持つ女性医師は20名余り。その中で指導医の資格まで持ち、第一線で手術まで担当する女医は10名足らず。元皮膚科医という異色の経歴を持つため、肛門周囲の皮膚疾患の治療も得意とし、肛門外科の医師を対象に肛門周囲の皮膚病変についての学会での講演も多数あり。
「痔=手術」という肛門医療業界において、痔の原因となった「肛門の便秘」を直すことによって「切らない痔治療」を実現。自由診療にもかかわらず日本全国や海外からも患者が訪れている。大阪肛門科診療所(旧大阪肛門病院)は明治45年創立の日本で2番目に古い肛門科専門施設でもあり日本大腸肛門病学会認定施設。初代院長の佐々木惟朝は同学会の設立者の一人である。
2017年10月には日本臨床内科医学会において教育講演を行うなど新しい便秘の概念を提唱。