痔を治すのに通院はどれくらい必要なのか?
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(2020年9月28日加筆修正)
関西の女性医師の中で最初に肛門科専門医・指導医を取得した佐々木みのりです。
当院は設立が明治45年(1912年)。
創立100年を超えています。
今では当たり前の国民皆保険制度。
保険証を持っていれば、全国どこの医療機関でも自由に受診でき、しかも治療にかかる値段は国が決めているので一律、どこに行っても同じです。
「フリーアクセスで世界最安値で世界最高レベルの医療が受けられる国、日本!」と海外から来られる患者さんが絶賛されています。
この国民皆保険制度の国、日本において大阪肛門科診療所は自由診療です。
正確には先代の院長が保険診療をやめて自由診療にしました。
私たちはワケも分からず、その自由診療の病院を継がされたことになります(ご先祖様、ごめんなさい💦)
当然、保険診療に比べると診察料も手術料もべらぼうに高いです。
何も知らなかったら「高いからやめとこう」となるのが普通だと思います😓
きっと私が患者でも同じ事を思ったと思います😅
だけど海外(特にアメリカ)から来られる患者さんからは「ここの診療所の治療費、安いわ〜。アメリカだったら3〜6倍しますよ!」と言われます。
当院の初診の診察代は3万円+薬代で、だいたい3万5千円〜4万円前後になりますが、これも激安だと言われます。
初めて来られたときには問診にも時間がかかりますし、病気の説明や、その原因となった便秘の説明にもかなり時間をかけています。
お一人30分〜1時間くらいの時間をお取りしていますが、それでもその時間内におさまり切れず、気付くと1時間以上たっていることもしばしば・・・。
特に海外から来られた患者さんは時間がかかります。
1時間くらいかかることが多いです。
それだけの時間、医師とマンツーマンで診察や話をするとアメリカだと16〜20万円くらいするそうです。
だからアメリカから来られた患者さんからすると、うちの診療費は「激安」となるわけです😓
日本に住んでいる患者さんにとっては高いんでしょうけどね。。。
でも、最近、特に関東地方などの遠方から来られる患者さんから「保険診療よりも安い」と言われるようになりました。
その理由が通院の少なさです。
なぜなら痔が治ったら通院が必要無くなるからです。
考えたら当たり前のことなんですけど・・・😓
だって痔でもないのに、用もなく肛門科に通院しませんよね?
患者さんの病状にもよるのですが、ほとんどの患者さんが2〜3回目の通院で完治終了となります。
初診の時の費用は高いですが、再診は1万円+お薬代(十分高いやん?!)です。
しかも1回受診したら終わり・・・となることが多く、年間にかかった医療費を合算すると、保険診療の方が高かったと言われます。
特に遠方の患者さんは、何年もずーっと肛門科通いされている方が多く、その通院の頻度も2週間に1回だったりすると、年間26回くらい通院することになり、通院の度に大量の注入軟膏や下剤をもらって帰っていると、その医療費は年間10万円近くになるそうです。
患者さんの負担は3割ですから、医療機関にはその3倍の金額が入ってるんですけどね😓
そのような肛門科通院をずーっと何年も続けてこられた患者さんは自由診療の当院を受診するに当たって心配になるようです。
一体どれくらい通わないといけないの?
いくらかかるの?
今までと同じように2週間に1回の通院がずっと続いたら年間何十万円もかかってしまう・・・
受診前にメールや電話で、そのようなご相談を受けることが多々あります。
当然でしょう。
お金がなければ受診できないのも事実ですし、お金が続かなくなっては治療も出来ませんから。
そこで当院での治療の流れについて説明したいと思います。
この記事の目次
初めての受診
医療機関では「初診」と表現されることが多いですが、初診の定義は医療機関によって異なります。
保険診療だと3ヶ月あくと初診となるそうですし、同じ患者さんでも、今通院している疾患と別の病気が見つかった場合にも初診となったりするようです。(間違ってたらごめんなさい)
定期的に通ってきている患者さんの場合は「再診」と言いますが、前回の受診が10年くらい前だと、もうカルテが存在しなかったり(カルテ保存義務は5年)、状態が全然変わってしまっていたりするため、以前に来ていた患者さんでも「初診」となります。
その期間が当院では1年としています。
1年あいたら初診です。
だから本当に初めての受診の場合は「新患」と呼んでいます。
文字通り、本当に一度も来たことがない、新しい患者さんです。
ビジネス用語だと「新規顧客」ですね。
新規の患者さんは問診票を書いてもらったり、問診票を見ながら実際に患者さんに色々と話を聞きます。
患者さんによったら、今まで溜めこんできたことを吐き出すように話す人もおられます。
その場合は、問診にすごく時間がかかってしまったりします。
長く話す人だと30分くらい。。。
それに比べると診察自体は短時間ですね。
5分もあれば十分です。
そこで便が溜まっている場合は便を出す坐薬を入れて排便してきてもらいます。
そして排便後、もう一度、必ず診察をします。
だから「便出し」が入れば診察を2回することになります。
排便後の診察をとても大切にしています。
なぜなら、排便前と排便後で肛門の状態がまるっきり違う患者さんもいるからです。
まるで別人のおしり・・・
ということもしばしば経験しているため、必ず便を出してもらってからもう一度診察しています。
中には坐薬を入れて便を出してきてもらったのに、まだ便が残っている人もいたりして、便出しに時間と手間がかかる患者さんも時々おられます。
そうなるとトイレに行ってもらっては診察し、診察後またトイレに行って・・・の繰り返しになります。
患者さんも大変ですが、私たちも何度も診察するため、次の患者さんをお待たせすることになり、予約制にもかかわらず待ち時間が発生し待合室に患者さんが数人いる状況になってしまいます。
待たせてしまって本当に申し訳ないのですが💦
便を出さずに患者さんを帰すことは出来ないため、時間がかかっても肛門がカラになるまで頑張ってもらっています。
排便もエネルギーを使うため、その時はすごく疲れるのですが、空っぽになった肛門を体験してもらうと、その軽さと爽快感は何物にも代えがたいものがあります。
まさしく「おしりで学習してもらう」という体験ですね😓
排便の状態を確認し、患者さんお一人お一人の生活をお聞きして治療計画を立てます。
何をどのくらい、
どのタイミングで使うか
それをアドバイスして、明日から「排便の自己管理」をしてもらえるよう指導してから帰って頂いています。
便出しにどれくらいの時間がかかるか分からないため、時間には余裕を持って来て頂いています。
便秘がひどい人だと2〜3時間診療所に滞在していることもありますから・・・💦
2回目の受診(再診)
次の通院は2週間後に設定することが多いです。
それくらいで治ることが多いからです。
でも遠方の患者さんだと2週間後に仕事の休みを取ることが難しいため、1ヶ月後くらいになってしまうこともあります。
2回目の受診で痔が完治、あるいは痔に伴う症状が無くなっていれば完治・終了となります。
この時点で治ってない、あるいは下剤などの処方が必要なケースは、新たな提案をして、それを2〜4週間試してもらいますが、そのようなケースは新規患者さんのなかで1割もないです。
それくらい、ほとんどの方が2回目の通院で終了しています。
なぜなら痔になったり、おしりの不調を訴えて受診される患者さんの多くが「毎日便が出ている」人だからです。
下剤も必要ないケースが多く、出口の便秘(主に出残り便秘)を直すだけで改善することが多いです。
下剤を必要とするケースの場合は、大腸メラノーシスを起こさない下剤から試してもらって、合う下剤を見つけていく作業に入ります。
一発で当てられれば3回目で終了。
便秘が治らなければ次の手を打っていきます。
だから下剤が必要な便秘の患者さんは3〜4回来てもらって「合う下剤」を探していきます。
合う下剤が見つかったら通院は終了します。
「続きは近所のクリニックで貰ってね!」と言ってお別れしますが、定期的に通いたいと希望されて、わざわざ自由診療の当院に半年に1回のペースで通院されている患者さんもおられます。
どこで薬をもらうか?
どこに通院するか?
どれくらいのペースで通院するか?
ということも含めて、患者さんに決めて選んでもらっています。
痔が治っても便秘は直ってないので便通の管理はずっと続く
痔が治っても便秘の治療は続けなければ、また痔になってしまいます。
だから便通の管理は通院が終わっても、患者さんが自分の生活の中で続ける必要があります。
調子が悪くなったときだけ受診してもらいますが、基本的に便通のコントロールが出来ている患者さんが調子が悪くならないので、滅多に受診されません。
だから年に1回だけ「おしり健診」に来られている患者さんがほとんどです。
直った後の便通の管理はとても大切。
ちゃんと管理が出来ている患者さんは本当に「医者いらず」です。
医療の究極の目的は「患者を無くす」ことだと思っているので、痔で悩める人が痔を治し、あるいは痔とうまく付き合うことによって、おしりや肛門のことを忘れて快適な生活を送れるようになることを目指して治療をしています。
だから治ったら通院は必要ないんですよ。
「えっ?!もう終わり?!」誰もが驚愕する通院の少なさ
新患の患者さんがアンケート用紙に書いておられますが、皆さん、治療が終わることに驚愕されます😓
いやいや・・・
痔って治るんですよ😅
今まで何年も、何十回と通って来られた患者さんにとったら、あっけなく2週間で完治して通院が終了することに戸惑われることもあります。
通院しないことに不安を覚える患者さんもおられます。
でも、治ってるのに通院いらないですよね?😅
もちろん心配なこと、不安なことがあれば来て下さっていいんです。
でも自分のおしりのことを自分で管理できるようになったら自信もつきます。
だんだん不安から解放されて、いつしかお尻のことを忘れて生活出来るようになります。
そうなるまでに時間がかかる患者さんもおられます。
体が先に治って、心があとから追いつきます。
だから安心して淡々と便通の管理を続けてみて下さい。
それでも行き詰まったら、いつでも受診して下さいね!
疾患別 通院の目安
痔にも色々種類がありますので、どの痔であるかによって若干、通院の目安が違ってきますので疾患別にお伝えしたいと思います。
切れ痔(裂肛)
軽度のものは2回目の通院で終了となります。
慢性化したものだと3〜4回の通院がかかることもあります。
肛門狭窄を伴っている場合は定期的な通院(1〜3ヶ月に1回)をして頂いています。
保存治療によって改善すれば通院間隔がどんどんあいていきます。
定期的な通院が出来ない場合や、保存治療で改善しない場合は手術をオススメしていますが手術になるケースは稀です。
いぼ痔(痔核・脱肛)
便通の管理によって症状が改善すれば2回目の通院で終了となります。
どんなにひどい脱肛でも患者さんが手術治療を希望しなければ原則、手術をしません。
脱肛がひどくても無症状の患者さんも多く、医学的に手術適応であっても、患者さんが手術を望まなければ「痔とうまく付き合う」ために便通の管理をしていただいています。
痔の原因となった便通を直せば、症状の進んだいぼ痔(痔核・脱肛)でも無症状となることも多く、手術をせずに長年いぼ痔と付き合っている患者さんもたくさんおられます。
どのような治療を望まれるのか?
それをその都度、確認しながら治療の提案をしています。
便通のコントロールが出来れば通院は必要ありません。
年に1回「おしり健診」に来られている患者さんが多いです。
痔瘻
医学的には手術治療が必要な疾患です。
その考えに異論はありません。
でも、
膿も出ない、
痛みもない、
何も症状が無い
という患者さんの場合、手術は急がなくても大丈夫です。
仕事が休める時期など治療のタイミングが訪れた時に手術を考えてもらいます。
なかなかそのタイミングが訪れない場合は年に1回、診察に来て頂いています。
もちろん痔瘻の患者さんにも便通を直してもらっています。
痔瘻というと下痢の人がなる病気というイメージが強いようですが、実は女性の痔瘻は便秘の人が多いです。
下痢だと思ってたら実は便秘だったという勘違いも本当に多いです。
だから便通の管理は本当に大切。
思い込みや決めつけは禁物ですね。
肛門そう痒症
ステロイド外用剤による治療をしない場合は2回目で治療終了となります。
ステロイド外用剤による治療の場合は3回目で治療終了となることが多いです。
肛門ヘルペス
抗ヘルペスウイルス薬の薬価が高額なため、薬代が1万円少しかかります。
初めて来られた時には4万円を少し超えてしまいます。
次回の通院は1週間後です。
1週間後の通院で完治終了となります。
診療所のセラピードッグ「ラブ」🐾
どれがラブか分かりますか?
後列の真ん中のトイプードルがラブです🐶
大阪肛門科診療所 院長。 平成7年大阪医科大学卒業。大学5年生の在学中に先代の院長であった父が急逝(当時の名称は大阪肛門病院)。大学卒業後は肛門科に特化した研修を受けるため、当時の標準コースであった医局には入局せず、社会保険中央総合病院(現 東京山手メディカルセンター)大腸肛門病センターに勤務。隅越幸男先生、岩垂純一先生、佐原力三郎先生の下で3年間勤務、研修。平成10年、院長不在の大阪肛門病院を任されていた亡父親友の田井陽先生が体調不良となったため社会保険中央総合病院を退職し、大阪肛門病院を継承。平成14年より増田芳夫先生に師事。平成19年組織変更により大阪肛門科診療所と改称し、現在に至る。