痔が虫歯の治療と予防に似ている点
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(2019年5月14日加筆修正)
実はブログ更新時間に起きてない朝起きるのが超苦手な佐々木みのりです。(笑)
今日のブログは診察室で患者さんと話していて、会話の中で出て来た言葉をブログのタイトルにしました。
痔と虫歯が似ている?!
どういうこと???
と思われた人も多いと思います。
でもね。意外な共通点があるんです。
入り口(口、口腔内)と出口(肛門)は組織学的にも似ている点が多いです。
口は食べ物が入るところで、肛門は食べた物の結果(便)が出て行くところです。
虫歯の子供がほとんどいない
最近、虫歯の子供って見かけません。
私が子供の頃は私も含めて虫歯の子供がたくさんいました。
小学校の虫歯検診で引っかかると歯医者さんに連れて行かれました。
私は虫歯だらけだったのに歯医者がこわくて逃げ回り治療せずに放置し、やっと中学1年の時に初めて治療しました。
ひどい虫歯で神経まで抜いてもらった歯もあります(汗)
何本も虫歯があったので数ヶ月通院して治したのですが、その時に、歯医者さんが歯磨きの仕方まで丁寧に教えてくれて、歯科医院で歯磨きの練習までさせられたことを今でも鮮明に覚えています。
お恥ずかしいことに、ろくに歯磨きもしない子供でした。。。
それからは歯医者さんの言いつけをきちんと守って、毎日ちゃんと歯磨きをするようになりました。
おかげさまでそれ以来、虫歯はないです。
それから10数年後、子育てを通して歯科における予防が進んでいることを知りました。
保健所で赤ちゃんの歯磨き指導に始まり、健診などでも口腔ケアの方法を丁寧に指導してもらって、自分の子供たちにはきっちり歯磨きを教え、習慣づけました。
もちろん小学校の健診では虫歯ゼロです。
ほとんどの子供が虫歯ゼロでした。滅多に虫歯の子供はいないとのこと・・・
ふーん。
時代は変わったんだなぁ・・・
すごくいいことだけど、歯医者さんにとったら「虫歯が無くなる=自分たちの仕事が無くなる」ということだから、大変だろうなぁって思いました。
痔も虫歯と同じで予防出来る
ちゃんと正しい口腔ケアをしていれば、虫歯は予防出来る
今では当たり前のことですが、これって痔と似てるなーと思ったんです。
なぜなら痔になっている人のほとんどに間違った排泄習慣があるからです。
とすれば・・・
その間違った排泄習慣を正せば痔も予防出来るかもしれない!
本気でそう考えました。
そして患者さんを通してその考えは確信に変わりました。
痔は予防出来る
今ではそう考えています。
便通を直したら痔が改善する
「ちゃんと排泄習慣を直してもらったら痔が治る」という経験をたくさんしています。
もちろん出来てしまったいぼ痔(痔核・脱肛)や肛門ポリープは無くなりません。
でも悪化せずに10年以上も現状維持出来ている!という患者さんをたくさん診ています。
治療で歯を抜くことがほとんどなくなった歯科業界と同じように、痔で手術をすることが無くなる日が来るかもしれない。
そうなればいいな
と本気で思っています(苦笑)
(自分たちの仕事が無くなるかもしれないのにね)
でも実際は歯科医院は無くなっていません。
虫歯は減っても仕事があります。
その仕事が「治療」から「予防」に変わっているんです。
「予防」も歯科医師の大切な仕事だと思います。
いや、予防こそ本当に必要な仕事かもしれません。
虫歯がないのに、別に困った事がないけど歯科医院に通っている人も増えています。
歯石を取ってもらったり、悪いところがないか診てもらうために、歯が痛くなくても通っている人もいますよね?
それって、すごく大切で意味のある通院だと思うんです。
それと同じように、肛門科もそうなればいいのに、自分たちだけでもそうしたいと思って数年前から治療方針を大きくシフトしました。
手術は痔の根本治療ではない
痔の根本治療は手術だと信じて手術をしていた私たち。
痛くない手術が私たちの最大の強みだと信じていた頃、手術希望の患者さんも多かったですし、医学的に手術適応である患者さんには手術治療を提案していました。
この20年間で本当にたくさんの手術をしてきました。
手術をして良かった!
本当に痛くなかった!
痔が治って良かった!
そんな感想をたくさん頂いて、手術こそ根本治療と確信していました。
でも・・・
手術して治したはずのお尻が、また10年くらいすると立派な痔を作って戻ってくる患者さんが増えてきました。
あんなにキレイに治ってたのにまた痔?!
最初はすごく不思議でしたが、再発する人としない人の違いに気付いてからは「便通」の改善に力を入れるようになりました。
痔は排泄の結果なので、間違った排泄を続ければ何度でも痔を繰り返します。
だから
虫歯予防に歯磨きを教えてもらったように、自分たちも「正しい排泄」を指導しよう
そう思って便通管理に重点を置いた治療をするようになりました。
そうすると・・・
痔の症状が劇的に改善し、手術の必要が無くなってしまいました。
最初は手術する気マンマンで受診された患者さんも、良くなってしまうと手術を希望されなくなります。
元々、「患者さんが希望しない手術は、たとえ医学的に手術適応であっても行わない」という方針でやってきたので、手術はどんどん減っていきました。
昔だったら手術していた立派な脱肛(いぼ痔・痔核)も便通を直したらここまで良くなるのか?!という驚きとともに、何年も手術せずにここまでもたせられるのかという感動で、まさに「虫歯(痔)を治療せずに、悪化させずに付き合っている」という体験を患者さんと共にさせてもらっています。
それも正しい排泄習慣とお尻ケアをやっているからだと思っています。
「治療」のための通院ではなく「予防」のための通院
だから当院では、患者さんの通院は「治療」のための通院ではなく「予防」や「健診」のための通院が増えてきています。
毎日、歯磨きをするように、毎日、出口(肛門)もケアしてあげると、たとえいぼ痔(痔核・脱肛)があっても長く付き合っていけます。
ケア・・・というと清潔にすることって思ってる人が多いですが、違いますよ〜。
間違っても肛門を温水便座で洗ったりしないでくださいね。
ちゃんと便を出すこと
スッキリ出し切ること
これが私たちが考える出口(肛門)ケアです。
ここがちゃんとできてないからお尻に負担がかかって痔になったわけですから、ちゃんとスッキリ正しく排泄してあげましょう。
スッキリ排泄するためにアドバイスするのが私たちの仕事だと思って日々、便通と排泄ケアの指導をしています。
いつか肛門科の医療も「治療」から「予防」にシフトすればいいなと思っています。
そうなる日を夢見て日々、自分たちの診療をしています。
本当に大げさじゃなくて、正しく排泄したら、この世から痔って言う病気が無くなるんじゃないかって思ってます(笑)
だからね
本当は痔になる前に来て欲しい。
教えてあげたい。
正しい排泄。
いつか肛門科って言う所が「痔にならないために通うところ」になればいいな。
診療所のセラピードッグ「ラブ」🐾
真ん中のトイプードルがラブです🐶
犬のようちえんに
新しいワンコが入って来て
みんな興味津々・・・
元皮膚科医という異色の経歴を持つ肛門科専門医。現在でも肛門科専門医の資格を持つ女性医師は20名余り。その中で指導医の資格まで持ち、第一線で手術まで担当する女医は10名足らず。元皮膚科医という異色の経歴を持つため、肛門周囲の皮膚疾患の治療も得意とし、肛門外科の医師を対象に肛門周囲の皮膚病変についての学会での講演も多数あり。
「痔=手術」という肛門医療業界において、痔の原因となった「肛門の便秘」を直すことによって「切らない痔治療」を実現。自由診療にもかかわらず日本全国や海外からも患者が訪れている。大阪肛門科診療所(旧大阪肛門病院)は明治45年創立の日本で2番目に古い肛門科専門施設でもあり日本大腸肛門病学会認定施設。初代院長の佐々木惟朝は同学会の設立者の一人である。
2017年10月には日本臨床内科医学会において教育講演を行うなど新しい便秘の概念を提唱。