授乳中の手術、当院では一時断乳してもらいます
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子供が好きな院長の佐々木巌です。
自分では子供好きと思っていますが、「単に精神年齢が子供と同レベルなだけ」という噂もありそれも否定できません(苦笑)
当院にも時々妊婦さんや授乳婦さんが受診されます。
当院では妊婦さんは手術しない方針ですが、授乳婦さんの場合状況によっては手術をお引き受けしています。
しかし私は、個人的には必死になって手術を避けようとします。
理由は「オトナの都合で授乳が必要なお子さんに不自然な食事をさせたくない」からです。
今回、授乳中の女性からご相談がありましたのでお返事をさせて頂こうと思います。
授乳中の女性から手術後の薬について相談
年末より、前々からありましたいぼ痔が急に痛くなり、近くの肛門科へ行きました。
はっきりとは言われませんでしたが、嵌頓痔核のようです。
今、生後5カ月の赤ちゃんがおり、授乳中です。
みのり先生のブログで授乳中の方は一定期間授乳をやめてもらって
どうしようか本当に悩んでます。
できれば、
やはり、
お休みのところすみませんがよろしくお願いします。
担当医に診断を確認しましょう
「はっきり言われなかった」と言うのが気になります。
主治医は診断に迷っていませんか?
診断に迷っていることを患者さんに悟られてはいけないと思っている医者が多いので・・
ひょっとしたら、信頼を失うと思っているのかも知れません。
私は迷っている時はハッキリと「迷っています」と申し上げるようにしています。
その方がよほど建設的で、結果的に信頼が増すと思うからです。
ひとまず、推測はやめて早期に担当医に診断を確認する、あるいは、手術すべきと言われてからでも構いませんから、診断名と手術すべき根拠を尋ねてはいかがでしょうか。
手術すべきかどうするか迷うのはそれからかでも遅くないかも知れません。
ちなみに、嵌頓痔核の診断が正しければ時間の経過で痛みは無くなります。・・・そのはずです(苦笑)。
参考リンクです。
こういった状況で嵌頓痔核と間違えやすいのは痔核に伴ってできる随伴裂肛です。
(非専門家は随伴裂肛のことを知らない可能性があります)
詳しくはこちらのリンクをご参照ください。
後悔したくないから、授乳中の手術では断乳をお願いします
いかなる状況であれ手術を避けるために最大限に努力すべきですし、私の場合、授乳婦の手術は意図的に避けており、経験が少ないです。
「オトナは我慢しよう、子供に我慢させたらアカン」というポリシーなのです。
だから、ということではありませんが手術後治療のための投薬期間は授乳を止めてもらいます。
授乳を止める理由は
- 使用した薬が母乳の中に入り込む(「母乳に移行する」と表現します)から
- その薬がお子さんに影響する可能性を100%否定できないから
2.に関してはこの薬は多分大丈夫、とか、この薬は大丈夫だと思う、とか、この薬は絶対ダメ・・という情報がある程度あります。
でも100%安全な薬というものはないわけです(これはオトナにとっても同様です)。
要は「後悔したくない」ということです。
理屈は色々あるかも知れませんが万一、後でお子さんに何か起こったら親御さんとしては「授乳中のあの薬が悪かったんじゃないか・・」と後悔が残るのではないかと思うのです。
もちろん薬の影響が無くなる時期になれば授乳の再開を許可します。
ただ、一度断乳すると母乳の出が悪くなりそのまま卒乳になった方もおられます。
ひとつ提案
今回のご相談では「手術が必要という判断なら担当医の判断を信じて手術を受けるつもりだ。でも、授乳中の薬で後悔したくない・・」という意味であるならば、私からひとつ提案します。
「後悔したくないから、手術をするなら一時期授乳を止めておこうと思います」と主治医に相談し、母乳に移行する薬に関しては最短の期間で中止してもらうようお願いすることもひとつの方法かも知れません。
それで不安無く治療が受けられるなら、それも良い選択かと思います。
さいごに
何の病気であれ、主治医には不安があれば全て相談して解決した上でお任せするべきと考えています。
それができなければ転院を考えた方が治療は上手くいくと思います。
さっきの話ではありませんが、何か問題が起こったときに後悔を残すことにもなります。
別に当院に来てくださいって言うつもりはありません。
ただ、信頼できる主治医に出会ってその先生から治療を受けてほしい。
それが患者さんにとっても、医者にも医療全体にとっても一番良い事だと思うのです。
当院のように変わった施設は受診するかどうか迷う方も多いかと思います。
社会的な事柄(距離とか時間とかお金とか)を優先するのも大切な選択肢です。
実際には多くの方が地元の治療で治っておられて、きっと当院にいらっしゃる必要がないのだと思います。
それが患者さんにとって一番良い事です。
当院に遠方からいらっしゃるのは、そういった治療を地元で試みたけれど結局満足できなかった方々なのかも知れません。
当院はそんな方々のための、ちょっと変わった選択肢のひとつでありたいと考えています。
大阪肛門科診療所 院長。 平成7年大阪医科大学卒業。大学5年生の在学中に先代の院長であった父が急逝(当時の名称は大阪肛門病院)。大学卒業後は肛門科に特化した研修を受けるため、当時の標準コースであった医局には入局せず、社会保険中央総合病院(現 東京山手メディカルセンター)大腸肛門病センターに勤務。隅越幸男先生、岩垂純一先生、佐原力三郎先生の下で3年間勤務、研修。平成10年、院長不在の大阪肛門病院を任されていた亡父親友の田井陽先生が体調不良となったため社会保険中央総合病院を退職し、大阪肛門病院を継承。平成14年より増田芳夫先生に師事。平成19年組織変更により大阪肛門科診療所と改称し、現在に至る。