妊婦さんが産婦人科の先生に無理矢理押し込まれて悪化する痔?!
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汗かきで暑がりのため暑いよりも寒い方がマシな佐々木みのりです。
この冬は本当に寒いですね。
大雪で大変だし、大阪市内は雪は積もってないけれど雪がちらついたり吹雪いているときもあって、こんなに何度も雪を見たのは大阪に来て初めてですね。
さて、ここ最近、毎週のように妊婦さんが受診されて、全員が同じ経過をたどっておられるので記事にしようと思い立ちました。
メールでのお問い合わせも全く同じ症状・・・。
それは
妊婦検診で痔を無理矢理押し込まれてから、さらに腫れと痛みがひどくなった
というもの。
来られた妊婦さん全員が「血栓性外痔核」でした。
これはお尻の血豆です。
切らなくても(手術しなくても)治ります。
いぼ痔(痔核・脱肛)とよく間違えられるため私は患者さんに「ニセモノいぼ痔」と説明しています。
詳しい解説はコチラ↓
「手術しなくても治る痔、消えて無くなる痔、おしりの血豆「血栓性外痔核」
ただ妊婦さんだけは一般の人と経過が違うこともあるため、改めて解説したいと思います。
妊娠中は血栓性外痔核になりやすい・治りが遅い
妊娠中は痔になりやすい状況がたくさん揃ってます。
妊娠してから便秘がちになる人も多いです。
またお腹が大きくなってくると腹部の血管が圧迫されて下半身がうっ血しやすくなります。
脚がむくんだりすることでも実感できると思います。
脚だけじゃなくお尻だって同じこと。
うっ血して血栓が出来やすい状況におかれています。
だから妊娠後期に血栓性外痔核になって受診される妊婦さんが多いです。
そして普通なら1週間くらいで痛みもほぼ無くなって、1か月くらいたつと、あれ?どこに行った?っていうくらいキレイに消えて治っていることが多いのに、妊娠中だけは例外です😣
腫れがひかず、痛みが持続するケースが多いです。
治りも遅いです😖
だって、おなかが大きいので下半身はずっとうっ血状態ですからね・・・💦
それでも便通を治し、痛み止めの軟膏や漢方薬の湿布などで随分症状がラクになります。
通常の経過とは少し違う妊娠中の血栓性外痔核。
慌てず対処すれば快適に出産まで過ごせますので、困ったら肛門科を受診してみて下さい。
くれぐれも専門外の先生にかからず、専門の先生にかかってくださいね💦
専門外の先生だと血栓性外痔核を知らなかったり、脱肛と勘違いして手術してしまうことがありますから💦
「肛門科の専門医の探し方・選び方~期待外れにならないために~」
無理矢理押し込まない
私の外来を受診される妊婦さん全員に共通していたことは
押し込んでから余計に腫れて痛くなった😫
ということ。
産婦人科で無理矢理押し込まれて、その度に痛みで涙が出ます😭
と産科検診のあと、泣きながら受診された妊婦さんもおられました💦
皆さんが口々に
押し込んでもすぐに飛び出してくる
中に入らない
と言われます。
血栓性外痔核は病名に書いてあるとおり、血栓のせいで外側が痔核のように腫れ上がったものですから、中からイボ(痔核)が飛び出してきたワケではありません。
そもそも中のものではないので、押し込んでも中に入りません。
そんなことをすると余計に腫れ上がって痛みがひどくなります。
だから「押し込んじゃダメ」と私は説明することが多いのですが、例外もありまして・・・💦
血栓が出来ている位置が肛門の中に近い部分だと、押し込んだ方がラクになるケースもあるんです。
こればかりは診察して、肛門鏡で中をしっかり見て血栓が出来ている場所を確認しないと分かりません💦
ただ、患者さん自身が自分のお尻で分かっていることも多く、「中に押し込んだ方が痛みがラクです」って言われますね。
受診してもらえば具体的にアドバイスが出来るのですが、メール相談だと血栓性外痔核かどうかも分からないですし、大きさや血栓が出来ている場所、血栓の個数も人によって随分違うため、電話やメールでの回答は出来ません💦
微妙な位置に血栓が出来ている場合、診察の時に実際に中に戻してみて「どう?どっちがラク?」って患者さんに尋ねて対処法を決めることも多く、本当に人によりけりです😓
要は、戻した方がラクなのか、外に出たままの方がラクなのか、自分でやってみてラクな方を選択したらいいと思うのです。
痔の薬は必要ない
そして・・・
血栓性外痔核の妊婦さんが産婦人科で必ず処方される痔疾薬(痔の注入軟膏)。
受診された妊婦さんが
使っても全然効果がないんです😫
と言われます。
はい。正直、使ってみて「むっちゃ効くわ〜」となるなら使って下さい。
でも、、、多分、効きません😅
だって原因は血栓だから。
血栓が溶けて無くなれば治ります。
痔の薬をつけても血栓が溶けるわけじゃないので、使っても使わなくても治療にはあまり関係がありません。
血栓が溶けるのを待つしかないんですよ。
日にち薬ですね。
でも痛いのは辛いので、痛み止めの軟膏を出しています。
これを塗ると痛みがラク!と言われることが多いです。
これも1週間くらいたつと必要なくなることが多いですけどね。
痛みのピークは通常だと2〜3日。
妊婦さんだと時間がかかりますが1〜2週間もすれば随分ラクになるはず。
そしてもう一つ。
痔の薬でかえって悪化するケースも・・・😫
それは薬によるかぶれです。
注入軟膏を腫れている部分に塗るように言われたので塗っていたら痒くなってきた😫
痛いだけでもつらいのに、かゆみまで加わって最悪😭
痒いから掻くとヒリヒリ痛いし、どうすることもできない😭
という妊婦さんのお尻を見ると、軟膏のかぶれで肛門周囲が真っ赤っか・・・
これは妊婦さんに限らず市販薬でも見られることです。
血栓性外痔核であれば別に痔の薬は必要ありませんので、温めてそっとしておくだけで随分良くなりますよ。
安易に薬に手を出すのはやめましょうね。
痔が無い人にも突然起こる
血栓性外痔核は血栓が形成されれば誰でもなる疾患なので、全く痔なんてない正常肛門の人にも、ある日突然起こります。
妊娠前には痔なんて無かった人にも起こります。
だから妊娠が原因で痔になったと思われるようですが、妊娠したからって痔になるわけではありません。
妊娠に関係なく、肛門に負担がかかると血栓はできやすいです。
ただ妊娠中は血栓が出来やすい状況に置かれているため、通常の時よりも血栓になりやすいのは事実。
血栓性外痔核になったからと言って、もともと痔があったわけでも、痔になりやすいわけでもありません。
ここは勘違いしないで下さいね。
本当にキレイさっぱり治って元のお尻に戻りますから✨
ただし腫れがひいた後に皮膚のたるみが残ることはあります。
これは痔じゃなくて「たるみ」なので手術の必要はありません。
「肛門皮垂(スキンタグ)~たるみが出来た原因を治さずに手術してもまた出来る~」
元々痔がある人に腫れる病気は嵌頓痔核や随伴裂肛です。
これも妊婦さんで多く見られますが妊娠中は手術出来ないため出産後、必要なら時期を考えて治療をしています。
「嵌頓痔核について」
「脱肛のせいで起こる裂肛が随伴裂肛(激痛)」
最近、あまりにも血栓性外痔核の妊婦さんの受診とメール相談が多いため記事にしました。
もちろん妊娠していない人にも血栓性外痔核が多く見られます。
それは「冷え」も大きく関係しているからです。
この季節、血栓性外痔核の患者さんが増えます。
特に今年は寒いので血栓性外痔核の患者さんが例年よりも多いです。
冷えないように気を付けて防寒して下さいね!
診療所のセラピードッグ「ラブ」🐾
右側がラブです
この頃、毛が本当に薄いです💦
最近やっと毛がはえてきました🌟
しかも濃くて元気そうな毛です!
「これカラダ」に私の取材記事が掲載されています。
是非、お読み下さい↓
<医師監修>大腸肛門病専門女医が教える。おしりの病気になりやすい便秘とそのケア法とは
元皮膚科医という異色の経歴を持つ肛門科専門医。現在でも肛門科専門医の資格を持つ女性医師は20名余り。その中で指導医の資格まで持ち、第一線で手術まで担当する女医は10名足らず。元皮膚科医という異色の経歴を持つため、肛門周囲の皮膚疾患の治療も得意とし、肛門外科の医師を対象に肛門周囲の皮膚病変についての学会での講演も多数あり。
「痔=手術」という肛門医療業界において、痔の原因となった「肛門の便秘」を直すことによって「切らない痔治療」を実現。自由診療にもかかわらず日本全国や海外からも患者が訪れている。大阪肛門科診療所(旧大阪肛門病院)は明治45年創立の日本で2番目に古い肛門科専門施設でもあり日本大腸肛門病学会認定施設。初代院長の佐々木惟朝は同学会の設立者の一人である。
2017年10月には日本臨床内科医学会において教育講演を行うなど新しい便秘の概念を提唱。