妊娠中の嵌頓痔核の方から産後の経過報告とご質問
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基本的に筆無精な院長の佐々木巌です。
先日「妊娠中の嵌頓痔核について」でメールを取り上げさせて頂いた方から術後経過の報告とご質問がありました。
生来の筆無精が出る前にブログでお返事することにします。
例によって、気になるところをチェックして注釈を付ける方法でお返事しますね!
経過報告のメール
いわお先生
こんにちは。
7月にメールを差し上げて、こちらのブログ記事で取り上げていただいた〇△と申します。
その節は、お返事いただけまして本当にありがとうございます。何度も読み返して、大変心が救われていました。
なんとか出産も終わり、育児も少し慣れてきましたので、
7月にメールをお送りさせていただいた時は妊娠9ヶ月でしたが、
大きなかんとん痔核が4つほどあって激痛に苦しみ、
私の希望と、お医者さんの見解もあって、
予定日より3週間早くの出産でしたが、息子が無事生まれ、
(いわお先生に「子供に迷惑かけたらあかん!」
入院中、痔核の一つ(血栓性外痔核かも?)は、
しかし、入院して2週間経つ頃には、
帝王切開での出産後、2~
そして、
本当にうれしかったです。
出産後は劇的に良くなる、というのは本当なんだな・・・
それから1ヶ月で少しずつしぼんでいき、
診ていただいていた外科の先生は、「
全周性の外痔核、かつ浮腫性、と先生には言われたのですが、
出産して約2ヶ月、今の状態としては、切開した痔核は消え、
つまり、
痛みはまったくありません。
これはスキンタグというものでしょうか。
それにしては、
また、すでに痛みはなく、
子供が離乳食を始める頃には、
質問ばかりで申し訳ないです。
もしまたお時間があれば、ご教授いただけますと幸いです。
今回の件で、闘病&妊娠日記がてら、
痔で深刻に悩んでいる妊婦さんがこんなにも多いのかと驚いていま
掲載してもらったブログ記事が、
お忙しいところ、長文失礼いたしました!
お返事
まずはご出産おめでとうございます!
お子さんが元気に育つことを願っています。
大変心が救われていました
そう言っていただけると嬉しいです。
痔がひどくて下から産むのが難しいかもしれない
痔が原因で通常分娩を諦めることがあるのですね、ちょっと複雑です・・
本格的な対応を受けておられますね。
やはり相当症状が厳しかったのですね、今更なんですが。
はい、もうこれが一番大切ですね。良かった。
いわお先生に「子供に迷惑かけたらあかん!」
活を入れたつもりもないんですが、いずれにせよ主治医の先生に適切にご判断いただいたものと思います。
入院中、痔核の一つ(血栓性外痔核かも?)は、
血栓は取り残すと、そこから再び腫れることを多く経験します。
今回のような酷いケースでは尚更かも知れません。
うーん。
私は妊婦さんの血栓切除は経験がありませんし、また取らない方針ですから、ここで安易な批評は控えます。
でも、危険があること知っており無理をしないという主治医の態度に賛成です。
出産後は劇的に良くなる、というのは本当なんだな・・・
はい、本当ですよ(笑)。
主治医はこれを知っていて無理しなかったのだと思います。
「
この言葉から、できるだけ小さな手術を望んでおられる主治医の態度が見えます。
おそらく先生の本音は「完全に良くなって手術が要らなくなったらいいな」ということだと思います。
私も同感です。
全周性の外痔核、かつ浮腫性、と先生には言われたのですが、
はい、雰囲気分かります。
これはスキンタグというものでしょうか。
それにしては、
個人的にはスキンタグと外痔核を区別する明瞭な境界線はないと考えます。
区別の基準の例を挙げるなら、例えば「より多くを占めるのが皮膚の成分なのか(皮垂)、痔核の成分なのか(外痔核)」だったり、「手術の適応がある場合には外痔核、手術不要なら皮垂と呼ぶ」だったりします。
だから今回のケースは現在のところどちらの呼び方もOKなのかもしれません。
診察していないから分からないのですが。
ちなみに、手術の適応がある、とは、そのぷよぷよによる具体的な不便があって、ぷよぷよは手術しない限りずっと治らないものであって、手術によってその不便を確実に取り除くことができる、と言う意味です。
今回のケースではぷよぷよに関して「できるだけ小さくなるのを待って」と言われているわけですから、主治医はこれからもっと小さくなる可能性があると考えているのです。
小さくなった結果しわしわになるかも知れないのです。
ですから私からも、「これ以上小さくならない!」というところまで待って、それから本当に手術するのかどうかを考える、という態度をお勧めします。
それまでは手術するかどうかは決めずにおいた方が、おしりのためには良いと考えます。
・・はい。
ならば、当面はしぼむのを待つ訳ですね。
注意してほしいのは、頭の中が手術のことで一杯にならないように注意することです。
そうでないと、冷静に判断できなくなる場合があります。
痔核の切除と肛門再建?の手術は、審美目的のもの(
保険診療のことは詳しくありませんが、私は審美目的での痔の手術に反対です!
見てくれよりも機能が大事です。
今日は「(手術をしなければいけないという)思い込みでおしりに迷惑かけたらアカン!」と言いたいです(笑)
その施設の考えに則った手術を受けることになるのです。
施設によって、日帰りだったり入院だったり、入院期間も短期から1週間程度まであり得ます。
でも一番大切なのは、本当に手術をするのかどうか、です。
くれぐれも落ち着いてご判断をされるようアドバイスさせていただきます。
掲載してもらったブログ記事が、
ありがとうございます!
きっとこの記事を読まれる方は、あなたのその言葉に励まされると思います!
手術をしたら次回は大丈夫か?
出産でできた痔の手術を希望する方に
「どうして手術にこだわるのか・・?」
を尋ねると、みなさん「次の妊娠で同じ目に合いたくないから!」とおっしゃいます。
お気持ちは分かります。
が、手術をしたら次回は大丈夫か?というと、その保証はありません。
確かに可能性は下がるかもしれませんが何ごとも絶対というのはありませんから。
「じゃ、どうすれば良いの?」
これまでの経験では大まかに2種類の方を経験しました。
- さっさと手術する。次の出産で万一また痔になってしまったら、その時に考える。
- 全部産み終わるまでは我慢して痔と付き合う。産み終わったら考える。
個人的にはどちらも正しいと考えます。
もちろん、手術適応だと判断される場合に限ってのことですが。(手術適応については上の記述を参照してください)
まとめ:本当に手術が必要なのか?
もう一度、赤字のところを読み返してみてください。
その時期が来たら、主治医の意見を聞きながら手術が必要なのかどうか、どうぞ落ち着いて判断してください。
良い治療を受けられることを祈ります。
大阪肛門科診療所 院長。 平成7年大阪医科大学卒業。大学5年生の在学中に先代の院長であった父が急逝(当時の名称は大阪肛門病院)。大学卒業後は肛門科に特化した研修を受けるため、当時の標準コースであった医局には入局せず、社会保険中央総合病院(現 東京山手メディカルセンター)大腸肛門病センターに勤務。隅越幸男先生、岩垂純一先生、佐原力三郎先生の下で3年間勤務、研修。平成10年、院長不在の大阪肛門病院を任されていた亡父親友の田井陽先生が体調不良となったため社会保険中央総合病院を退職し、大阪肛門病院を継承。平成14年より増田芳夫先生に師事。平成19年組織変更により大阪肛門科診療所と改称し、現在に至る。