痔ではなく「便秘だけでも治療してもらえますか?」という問い合わせに対するお返事
カテゴリー:
患者さんの誰よりも便秘がひどい佐々木みのりです。
海外や遠方の患者さんのために設けた診療所の問い合わせフォーム。
そこに時々、病状の相談があります。
無料相談フォームではありませんし、それよりも何よりも、診察してみないと診断も出来ませんし、さらには治療してみないと治るかどうかも分かりませんから、返信しないことにしているのですが、多くの患者さんからの重複する内容の質問や、他の患者さんの役に立つような内容に限り、ブログで返信させて頂くことにしています。
全員にお答え出来ませんのでどうぞご了承下さい🙇🏻
今回は便秘治療についての問い合わせを頂きました。
初めて問い合わせます。
何十年と便秘気味が続いていますが、専門の病院に行ったことはありません。
痔というのがどういった症状かよくわかりませんが、便秘だけでも治療してもらえますか?
症状は、お腹がはったりおならがよくでる(特に何かを食べたすぐあと)、食後すぐ便意があるが、大抵おならが出て終わりということが多い、便を出すときはかなり力まないといけなく、つらい、便はコロコロしたものが多く、いつも固い。
毎日自宅で作ったケフィアヨーグルトを食べていますが、効いていないように思います。
青汁を飲んだり、コーヒーをたくさん飲んだり、脂っこいものをたくさん食べたりして、一時的に便通が良くなるように感じることはありますが、一時的なもので、続けることもできません。
内科の病院でもらった酸化マグネシウムを一週間ほど飲み続けて便通がよくなった時期はあるのですが、飲むのをやめるとまた便がでなくなります。
長年続いているこのような便秘の症状が、通院と投薬で治りますか?
宜しくお願いします。
この記事の目次
「おなか(腸)の便秘」と「出口(肛門)の便秘」とどっちなのか?
私たちは便秘をシンプルに二つに分けて考えます。
便がどこに溜まっているのか?
どこで停滞しているのか?
その場所によって便秘のタイプ別分類をしています。
おなか(腸)に溜まっているのか?
出口(肛門)に溜まっているのか?
あるいは両方なのか?
それによって使う薬も違えば対処法も全然違ったものになってきます。
そして私たちは肛門科医なので出口(肛門)の便秘を得意としています。
出口(肛門)の便秘であれば受診して頂いたら治療によって不快な症状が改善したり、痔が良くなったりする人が多いので、あなたのお役に立てる可能性が高いです。
でも出口(肛門)の便秘は全く無くて、おなか(腸)の便秘だけであれば、治療には時間がかかります。
世間一般で言われている便秘は「おなか(腸)の便秘」を指している
世の中に溢れている便秘情報。
テレビや雑誌などでも特集されることが多い便秘は、私たちが扱う「出口(肛門)の便秘」ではなく「おなか(腸)の便秘」を指しています。
便秘本も多くの先生方が執筆されていますし、「○○が効く」などとブームになったこともたくさんありましたよね。
便秘に効くと言われる食べ物や健康食品も流行りました。
便通が良くなると言う体操もありますよね。
これらのほとんどが「おなか(腸)」に効きます。
出口(肛門)には効きません。
あなたが便通に良かれと思って食べているヨーグルトも、飲んでいる青汁もコーヒーも、一時期飲んでいた酸化マグネシウムも、すべて「おなか(腸)」に効きます。
肛門の穴にには効きません。
だから毎日便が出ていてもスッキリ出ずに残っている人がいるのです。
残った便を出す食べ物や飲み物は残念ながらありませんし、私は知りません。
もしも今まで散々、便秘情報を調べて、やれることは試してきて、内科での便秘治療も受けたけれど良くならないというのであれば「出口(肛門)の便秘」を疑ってみてもいいかもしれません。
でもこればかりは診察してみないと分からないのです😰
そして治療してみないと結果は分かりません💦
「出口(肛門)の便秘」を治したら「おなか(腸)の便秘」も治ってしまって、毎日便が出るようになったケースもたくさんあります。
出口(肛門)が詰まっていたから奥(腸)が満員になっていたのでしょう。
下剤を飲まなくても便が出るようになったという人も意外といるのです。
そのケースにあなたがあてはまるかどうかもメール相談では分かりません😢💦
「おなか(腸)の便秘」に いきなり下剤は使いたくない
いわゆる一般的な「おなか(腸)の便秘」には下剤を処方するのが即効性があり結果が早く出ます。
でもどんな下剤でも依存性・習慣性はつきもの。
できたら下剤を飲まずに、薬に頼らずに、自然に便が出るようにもっていきたいと思って私たちは腸内環境や食事に力を入れています。
だけど薬のようにすぐに結果は出ません。
時間がかかります。
便は食べたモノの結果なので何を食べるかも大切。
そして食べたモノの通り道である腸の環境も大切。
私たちの食事指導は何度もブログで書いていますが、便通に良いモノを摂取するのではなく、腸を荒らすモノを抜いてもらう指導をしています。
小麦と乳製品を抜いてもらっています。
まずは2週間完全に抜くことをオススメしています。
それだけで便秘が治る人がいるのです。
本当に・・・。ビックリしますけど・・・。
それよりも下痢が止まる人の方が多いですけどね😓
小麦と乳製品を抜くだけで腸内環境はかなり良くなりますから、乳酸菌や食物線維などもわざわざ飲んでもらわなくても良いのですが、希望される患者さんには栄養療法で使う乳酸菌のサプリを処方したり、発酵素「するり」などを使います。
人によって何が合うか、どれが効くかは違います。
摂取してみて自分に合うものを自分で感じて選んで続けてもらっています。
色々試したけれど便が腸に停滞している場合は下剤を使うことになるのですが、腸を黒くするアントラキノン系の下剤は私は滅多に出しません。
困ったときの最終手段としてとっています。
特に若い女性の場合、妊娠中にも飲める下剤の方が安全なので、なるべく依存性・習慣性の少ないモノを選んで出しています。
下剤も患者さんによって合う合わない、効く効かないが本当に様々です。
個人差が大きいですから、まずは試しに飲んでみて、患者さんが生活の中で使いやすいものを探していく作業となります。
下剤はたくさんの種類があるので、その中から刺激の少ないモノからスタートして、効かなければ次の段階の下剤に・・・と、何度か薬を変えては試し飲みし、「これだ!」というものが決まれば治療終了!
続きは近所のクリニックで処方してもらうよう勧めています。
下剤を合わせるところまでが私の仕事で、合う薬が見つかったら保険診療のクリニックに行って薬をもらうほうが、患者さんにとって費用負担が少なくてすみますから😓
痔が無くても便秘だけの受診もOKです
このようなお問い合わせ、実は結構あります。
痔じゃなくても便秘だけで受診されてもこちらとしては全然構いません。
だけどお役に立てるかどうかは本当に分かりません。。。💦
すみません。。。
診察してみないと便秘のタイプも分かりませんし、治療してみないと便秘が治るかどうかも正直、分からないです。
特にうちの診療所のような自由診療の施設は、保険診療のクリニックに比べると費用も高額になりますから、まずはお近くの気になるクリニックを受診されて色々と治療をしてみて、それでもうまく行かなかった場合に来て頂いても、こちらは全然嫌な気持ちになりませんし、そもそもセカンドオピニオンの患者さんがほとんどですので、他のクリニックに通いながら受診して頂いてもいいです😓
どうでしょうか・・・。
なんだか答えになったような、なってないような・・・💦
ご参考になれば幸いです。
診療所のセラピードッグ「ラブ」🐾
手前のフセをしているトイプードルがラブです🐶
犬も便秘をすることがあります💩
硬い便で切れ痔になることも😫
元皮膚科医という異色の経歴を持つ肛門科専門医。現在でも肛門科専門医の資格を持つ女性医師は20名余り。その中で指導医の資格まで持ち、第一線で手術まで担当する女医は10名足らず。元皮膚科医という異色の経歴を持つため、肛門周囲の皮膚疾患の治療も得意とし、肛門外科の医師を対象に肛門周囲の皮膚病変についての学会での講演も多数あり。
「痔=手術」という肛門医療業界において、痔の原因となった「肛門の便秘」を直すことによって「切らない痔治療」を実現。自由診療にもかかわらず日本全国や海外からも患者が訪れている。大阪肛門科診療所(旧大阪肛門病院)は明治45年創立の日本で2番目に古い肛門科専門施設でもあり日本大腸肛門病学会認定施設。初代院長の佐々木惟朝は同学会の設立者の一人である。
2017年10月には日本臨床内科医学会において教育講演を行うなど新しい便秘の概念を提唱。