肛門のかゆみ〜肛門そう痒症、痔のかゆみ、肛門の皮膚病について〜
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(2019年8月11日加筆修正)
元皮膚科医という異色の経歴を持つ佐々木みのりです。
悩ましい「おしりのかゆみ」。
場所が場所なだけに誰にも相談できない人も多いようです。
「かゆい→痔」と決めつけている人もいますが、痔でかゆくなることは本当に少ないです。
おしりの中でも肛門周辺のかゆみについて解説したいと思います。
肛門にかゆみが出る疾患は以下の通り。
1.肛門そう痒症
2.痔によるかゆみ
・いぼ痔(痔核・脱肛)
・切れ痔(裂肛)
・痔瘻(痔ろう)
3.皮膚病によるかゆみ
・真菌症(カンジダ症と白癬症)
・接触皮膚炎(かぶれ)
・皮膚疾患(アトピー性皮膚炎・乾癬・パジェット病・尖圭コンジローマなど)
この中で圧倒的に多いのが「肛門そう痒症」です。
「かゆみ」を主訴に大阪肛門科診療所を訪れる患者さんの9割以上が、この「肛門そう痒症」です。
正しくは漢字で「肛門瘙痒症」と書きます。
瘙痒(そうよう)の「そう」の字は「やまいだれ」なのですが、「てへん」の「掻」と記載されていることが多いですが、これは間違いですので学術的にも正してほしいものです。
瘙の漢字がエディタによっては出てこないことがあるため、今後、このサイトでは平仮名で記載することとします。
この記事の目次
肛門そう痒症とは?
<定義>
肛囲に皮疹(原発疹)がなく瘙痒感があるもの。
ただし、掻破により二次的な続発疹をみる。
明らかな原疾患が存在するものはこれに含まれない。
これが肛門そう痒症の皮膚科学的な定義です。
簡単に言うと、アトピー性皮膚炎や蕁麻疹のように、体の内側から吹き出して出て来た湿疹(原発疹)ではなく、自分で掻いたり、こすったり、洗ったりして人工的に作りあげた湿疹(続発疹)です。
だから掻いたり、こすったり、洗ったりしなければ出来なかった湿疹なのです。
つまり皮膚病ではありません。
皮膚が悪いわけではないのです。
ここは大切なポイントです。
昔から肛門のかゆみは患者さんの悩みであると同時に、肛門科医の悩みでもありました。
治療が上手く行かず原因不明とされたケースもたくさんあったようです。
過去に原因不明とされていた肛門のかゆみの大半は、実は肛門そう痒症だったのではないだろうかと当院では考えています。
<症状>
・かゆみ
最初の頃は肛門のムズムズ、モゾモゾ感から始まります。
排便後と夜間(入浴後から)に感じることが多く、悪化するとかゆみで寝られない、眠れない、眠っている間にかゆみで目が覚めてしまう、などの症状に悩まされる人もいます。
トイレットペーパーでゴシゴシこすって拭く、温水洗浄便座で念入りに洗う、入浴時に石鹸で肛門周囲を洗ったりシャワーを直接当てるなど、過剰衛生習慣によって皮膚のバリアー機能を担っている皮脂膜が剥がされ、かゆみがさらに悪化し、掻かずにはいられなくなります。
下着の上から掻く、直接掻きむしるなどの行為により湿疹が形成されると湿疹からは「かゆみ物質」が出るため、こうなると排便に関係なく「湿疹そのものがかゆい」という状態になり、四六時中かゆくてたまらないという状態になってしまいます。
・皮膚症状
発赤
色素脱失
浮腫状皮膚
皮膚亀裂
びらんなどの掻破痕
苔癬化
色素沈着
初期の頃は肛門周囲の皮膚が赤くなることが多いですが、時間が経つにつれて白くなります。
色素脱失と私は表現していますが、これが肛門そう痒症の特徴だと言ってもいいでしょう。
肛門周囲の皮膚が真っ白になって、ゴワゴワして、シワが盛り上がったようになります(浮腫状皮膚)。お風呂に長時間つかったときに、指先の皮膚がシワシワになるのに似ているかもしれません。
このシワの盛り上がりを「いぼ痔(痔核・脱肛)」だと勘違いしている患者さんも多いです。
掻きむしって皮膚の表面がめくれて「びらん」という状態になったり、皮膚のシワの溝に沿って亀裂が入り、まるで「あかぎれ」のようになっているケースも多いです。
こうなると、かゆみだけでなく水がしみるなど、痛みも出て来ます。
いわゆる「痛がゆい」という状態ですね。
場合によっては出血も見られ、拭いた紙に血が付くから「切れ痔(裂肛)」と間違っている患者さんもおられます。
何年も経つと皮膚がぶ厚くなりゴワゴワとしてきます。こういう状態を「苔癬化」と言います。
最初は白かった皮膚も色素沈着によって黒っぽくなってきます。
こうなると治るのに時間もかかってしまったり、治療に反応しにくくなったりするので、早めの治療をお勧めします。
<原因>
私はかゆみの原因は便であると考えています。
なぜなら、かゆみを訴えて大阪肛門科診療所を受診される患者さんを診察すると、必ずと言っていいほど、肛門や直腸に便を確認できます。
ついさっき出してきたのに・・・です。
大阪肛門科診療所では毎日便が出ていてもスッキリ出ずに中に便が残っていたら便秘と捉えます。
「出残り便秘」と呼んでいます。
便の刺激でかゆみが生じていると考えています。
実際に患者さんに聞くと、排便後から肛門の穴のあたりが、ムズムズ、モゾモゾすると言われることが多いです。
それだけではすみません。
便が残ると紙でキレイに拭けません。
紙に便が付きます。
何度拭いても付いてきます。
そこで温水洗浄便座で洗いたくなります。
洗うと一見キレイに拭けるのですが、やはり診察すると肛門の中は便まみれだったりします。
洗い過ぎると皮膚がボロボロになり湿疹が出来ます。
そうなると便の刺激だけでなく、「湿疹そのもの」がかゆい・・・という状態になります。
最初のきっかけは「肛門や直腸に残ったり溜まったりした便」だったのが、拭きすぎ、こすりすぎ、洗い過ぎによって皮膚障害が起こり、「皮膚そのもの」がかゆくなってしまうのです。
<治療>
治療の3本柱が以下の3つです。
1.便通を直す
2.ステロイド外用剤漸減療法
3.正しいおしりの手入れ
1.便通を直す
かゆみの原因は便なので、必ず便通をなおしてもらいます。
便通を直さずにどんな外用剤を塗布しても、かゆみは繰り返されます。
便通の直し方は患者さんによって異なりますのでここでは省略します。
2.ステロイド外用剤漸減療法
湿疹になってない場合は便通を治すだけで改善します。
湿疹がある場合はステロイド外用剤を使います。
ステロイドというと副作用を心配する人もおられますが正しく使えば副作用は出ません。
ちょこちょこ塗ってダラダラ続ける・・・この塗り方をすると副作用が出てしまいますので要注意です。
例えば
かゆい時だけ塗って、
かゆみが無くなったらすぐやめる
またかゆくなったら塗る
それを繰り返していると、最初は効いていた塗り薬の効果が落ちてきて強いステロイドに手を出すようになったり、塗っている期間はかゆみは止まっているけれど、塗るのをやめた途端にかゆくなるので、最終的には毎日塗るようになってしまいます。
そうやってステロイドがクセになり、やめられなくなっていきます。
なぜそのようなことが起こるのか?
ステロイドは副腎皮質ホルモンなので急にやめるとリバウンドが起こるのです。
だからやめる時は徐々にやめていく必要があります。
軟膏の場合はステロイドの濃度を薄めてやめていきます。
ステロイド軟膏を使ったときのステロイド使用量、つまり実際に皮膚から吸収されるステロイドの量は、塗った軟膏の量よりも濃度によって決まるからです。
このように濃度を徐々に薄くしてやめてゆけばリバウンドもなく、やめたあとに湿疹がぶり返したり、かゆみが再発することもありません。(治療法については日本大腸肛門病学会の原著論文を書きました)
肛門周囲は皮膚の吸収効率が高いため、長期使用によりステロイドの副作用が出現しやすいです。
だから使用は2〜3週間を限度にしています。
ステロイド外用剤の使用のポイントは
- ちょこちょこ塗ってダラダラ続けないこと。
- やめるときは徐々にやめること
この2点さえ気を付ければ大丈夫です。
そしてステロイドをやめたあとも大切です。
湿疹が治っても皮膚のバリアー機能は正常に戻っていません。
正常に戻るのに約1ヶ月かかるため、ステロイドが終わったあとも1ヶ月間は保湿剤を塗って、しっかりとガードする必要があります。
大阪肛門科診療所では特製手作り軟膏の「Sザルベ」を使います。
白色ワセリンやヒルドイド軟膏などでも代用できるでしょう。
3.正しいおしりの手入れ
・洗わない
治療期間中は温水便座を完全にやめてもらいます。
入浴時も石鹸洗浄禁止です。
おしりにシャワーを直撃しない、手でこすって洗わない。
ただ水が流れ落ちていくだけで十分きれいになります。
・3回以上拭かない
紙を丸めて優しくポンポンと押さえ拭き。拭いていいのは3回まで。3回目に便が付いていたら残っている証拠。その場合は便を出す坐剤や浣腸などを使って出残り便を出してもらいます。
・おしりふきやウェットティッシュなどを使わない
市販のおしりふき、ウェットティッシュ、清浄綿、肛門専用のスプレー剤などを使用しない。これらのものでかぶれているケースが多いです。かゆみを悪化させるので禁止です。
・消毒しない
時々、マキロンやオキシドール、アルコール消毒綿などでおしりを消毒している患者さんがいますが、かぶれてとんでもないことになっています。
皮膚には皮膚バリアーを形成している大切な常在菌もいますから、消毒するとこれらの良い菌まで全部殺してしまいます。
そもそも肛門は便の通り道。いくら消毒しても無菌にはなりません。
術後の患者さんの肛門ですら消毒なんてしないのに、普通のおしりは消毒なんて必要ないです。
だけどお尻がかゆい人って本当によく洗ってますよ
そんなことすると余計にかゆくなるのにね
痔によるかゆみ
痔のせいで肛門がかゆいと思っている人が多いですが、痔によってひどいかゆみが起こったり、それが長期間続くということは、あまりないです。
ですが、痔に伴ってかゆみを引き起こすケースもあります。
1,いぼ痔(痔核・脱肛)
いぼ痔についての説明はコチラ↓
いぼ痔(痔核・脱肛)の中でも、内痔核が脱出して、粘液や腸液で肛門周囲がベタベタになり、粘液や腸液の刺激でかゆみを引き起こしているケースがあります。
この場合、脱出している内痔核を肛門の中に戻してあげるのが一番の対処法になるのですが、戻しても入らない場合は仕方ないです。
押し込んでも入らない立派な脱肛の場合は手術すればスッキリするでしょう。
どうしても手術したくない場合は、皮膚が粘液や腸液でかぶれないようにワセリンなどで保護してガードしてあげるくらいしか方法がありません。
2.切れ痔(裂肛)
切れ痔(裂肛)の治りかけの時にかゆみが生じることがあります。
傷の治りかけってかゆいでしょう?
かさぶたを剥がしたくなったりしたことありませんか?
あれと同じです。
手術の傷の治癒過程でも同じ事が起こります。
これは切れ痔が治るのを待って下さい。
くれぐれもかゆいからって掻かないで下さいね。
あまりにもかゆくて掻きそうになる場合は、白色ワセリンやヒルドイド軟膏などを肛門周囲や中に塗って保護してみて下さい。
3.痔瘻(痔ろう・じろう)
痔瘻についての説明はコチラ↓
膿で肛門周囲がベタベタしてかゆいというものです。
膿で下着が汚れないようにナプキンを当てている人も多く、ナプキンでかぶれたりしていることもしばしばあります。
あまりにも膿で汚れるような炎症の強い痔瘻は根本手術をオススメします。
皮膚病によるかゆみ
肛門周囲の皮膚疾患はたくさんあるのですが、その中でも私が数多く経験したものだけを抜粋して解説します。
1.真菌症
水虫と言ったらピンとくるでしょうか。
水虫というと足にできるもの・・・というイメージを持っている方が多いと思いますが、皮膚であればどこにでも発生します。
発生しやすい場所が足というだけで、全身、どこでも出来るんです。
もちろんおしりや肛門にも出来ます。
おしりの水虫っていうと分かりやすいでしょうか^_^;
ただ、一般の水虫と違い、肛門の真菌症では、水ぶくれを認めることがほとんどありません。
真菌とは、いわゆる「カビ」のことですが、おしりのカビは主に2種類です。
カンジダと白癬菌です。
肛門や外陰部は圧倒的にカンジダの方が多いです。
ジメジメとした湿っぽい部分だからでしょうか。
肛門や陰部のかゆみ→カビ!
と思われている方が多いのですが、実は肛門に限って言えばカビ(真菌症)は非常に少ないです。
その中でもかゆみを訴えるケースは少ないですね。
おしりや肛門の真菌症って意外とかゆくないようです。
特にカンジダは正常皮膚にも暫定的に存在する常在菌なので、見つかったからって病気ではありません。
異常増殖した時だけ症状が現れます。
きっかけになるのが、抗生物質やステロイドの長期使用です。
だからステロイド含有軟膏をダラダラと使い続けないで下さいね。
治療は簡単です。
抗真菌剤を2週間程度外用するだけで治ります。
ただし、抗真菌剤の中には白癬菌には効いてもカンジダには効かないものもあるので注意が必要です。
カンジダにも白癬菌にも両方に効果がある抗真菌剤を選ぶ必要があります。
たまに抗真菌剤によるかぶれがありますので塗っている間に余計にかゆくなってきたり、ヒリヒリしてきたら外用剤を変更してもらって下さいね。
2.接触皮膚炎(かぶれ)
肛門周囲のかぶれで一番多いのが痔疾薬です。
ボラギノールやプリザエースなどの痔の薬だけでなく、医師から処方された痔疾薬でも起こります。
一番ひどい症状だったのが「誰にも知られず自宅でコッソリ治せます」という宣伝文句で有名な通販の「ぢの薬」です。
肛門周囲の皮膚が赤くただれ、それが臀部にまで広がり、まるでお猿のお尻のように真っ赤っかで、座るのも痛い・・・という患者さんを今までに何人も見てきました。
皆さん、痔は薬で治ると信じ、電話相談で「毒が出ているだけ」と言われ、使い続けておられましたが、かぶれは使い続ければ続けるほど、ひどくなっていきます。
広範囲に皮疹があると治療も大変です。
おかしいな・・・と思ったらすぐに使用を中止することが大切です。
化粧品でも合う合わないがあるように、外用剤にも患者さんによって合う合わないがあって当然ですから。
次に多いのが生理用ナプキンです。
敏感肌だから・・・と、わざわざ「肌にやさしい」ナプキンを選んで使っている人に限って、すごいかぶれを起こしていました。
ナプキンの形にクッキリ湿疹が出来ているので一目瞭然です。
この場合も使用しているナプキンを中止し、布ナプキンもしくは化学物質を含まないナプキン(私は「ナチュラムーン」をオススメしています)に変更してもらいます。
かぶれによるかゆみやヒリヒリがひどい場合はステロイド外用をしますが、症状が軽ければ1週間ほどで改善します。
3,皮膚疾患
・アトピー性皮膚炎・尋常性乾癬
これらの皮膚病を患っている場合、まれに肛門周囲にも皮疹が出現することがあります。
この場合は皮膚病の治療をします。
たいてい、皮膚科にかかっておられるので、そちらで処方された外用剤を肛門周囲にも塗ってもらったり、皮膚科の先生に相談してもらっています。
でも、意外なことに、アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬の皮膚症状は肛門には出てないことが多いです。
・パジェット病
これは皮膚悪性腫瘍(皮膚癌)です。
ところが「慢性湿疹」として漫然とステロイド治療されているケースも多く、また肛門に出来た場合、羞恥心もあり医師に見せていないこともあります。
ステロイド治療をしても改善しない湿疹で、触ると皮膚が硬い場合は要注意です。
心配なら皮膚科専門医にかかってくださいね。
・尖圭コンジローマ
ヒトパピローマウイルス(HPV)による感染症で、肛門や外陰部に出現するものは「性病」と言われています。
この疾患については別記事で詳しく解説しようと思います。
しばらくお待ち下さいね。
肛門周囲のかゆみとして発症することもあり、掻くことで広がってしまいます。
掻いていると小さなブツブツを触れるようになり気付くことが多いです。
ブツブツのひとつひとつは、ごま粒よりも小さなものなのですが、受診したときには結構大きな塊になっているケースもありました。
これは感染症なので人にも伝染しますし、どんどん広がっていくので、早期発見、早期治療が大切です。
おかしいな・・・と思ったら肛門科または皮膚科を受診して下さいね。
実際の治療
別に肛門のかゆみを専門にしているワケではないのですが、私が元皮膚科医という異色の経歴を持ち、皮膚疾患を得意としているからなのか、なかなか治らない肛門のかゆみで悩んでおられる患者さんが全国各地から受診されています。
多くの病院をハシゴしたけれど、弱い薬では肛門のかゆみに効かないので、結局かゆみが出るたびに強いステロイドの薬をぬるということを繰り返している・・というサイクルから抜けられず、私のブログを見つけて受診される患者さんが多いです。
今まで受けてこられた治療との違いに衝撃を受けられますが、ちゃんと結果が出るので納得されます。
かゆみの原因が便であるならば、便通を直さずして完治はありえないので、当院では便通の治療を一番大切にしています。
肛門のトラブルは排泄の結果なので、間違った排泄習慣を改めてもらっています。
逆にそこを改められない方は受診されても期待外れに終わるかもしれません
だから治す覚悟のある人に来て頂きたいです✨
たかが「かゆみ」と思われる方もおられるかもしれませんが、長年治らなかったかゆみが完治し「涙が出そうなくらい嬉しかったです。」と言われることも多いです。
今まで何軒も肛門科へ通い、お尻のかゆみを感じてからは10年以上というケースもあります。
かゆみで困っているのに「手術しましょう」と言われている患者さんもおられ、手術が要らないという結果に大喜びされます。
なぜこんな風にかゆくなってしまったのかを きちんと説明すると思い当たることもたくさんあるようで、皆さん、苦笑いしながら頷きながら説明を聞いておられます。
そして治療をしたら・・・
初めての受診の日からピタリとかゆみが止まり驚かれます。
ただ、夜中のかゆみは3日ほど続くことがあります。
初めての受診の次は、2週間後にもう一度受診して頂きます。
この頃には、夜のお薬を忘れて寝てしまうほどになります。
もう完治して通院されなくなっても、かゆみの原因は便なので、治療が終わっても便通の自己管理は続きます。
もう来なくてもいいように、ちゃんと自己管理が大切です。
手術をしてもかゆみが治らない
痔があるせいでかゆいんだ
だから手術をして痔を治せばかゆみが無くなる
そう期待して、あるいは医師から手術を勧められて「かゆみを治すために」手術を受けている人もたくさん診てきました。
あるいは手術を迷ってセカンドオピニオンで手術を受けるかどうか相談に訪れる患者さんも多いです。
手術を受けたけど、術後いくら待ってもちっともかゆみが無くならない!
そんな患者さんがどれだけいることか・・・
まず一つ言いたいのは
かゆみを治す手術なんてない
ということ。
かゆみの原因となった便通を直さなければ薬を塗っても手術を受けても何も解決しません。
また肛門そう痒症の患者さんは、かゆみという症状があるだけでいぼ痔(痔核・脱肛)や切れ痔(裂肛)や痔瘻などの痔疾患が無いことが多いです。
だから基本的に痔の手術は必要ないはずです。
他院で「手術をしたらかゆみが治るから」と手術を勧められた患者さんも来られていますが、痔でもないのに手術は必要ありませんよ。
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痔じゃないのにどうして手術なの???
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ってこっちが聞きたいくらい
だってそうでしょう?
何も悪くない肛門を手術でどこをどう切るの?
あまりにも肛門のトラブルを手術で解決しようとする人が多すぎるため、それに警鐘を鳴らしたくて情報発信を始めました。
特にかゆみは手術なんて必要ありません。
どうかかゆみを治すために手術を受けないでくださいね。
後悔している患者さんをたくさん診ているので、事前に知って欲しいです。
かゆみを治すために手術を受けないで下さいね!
ちゃんと肛門を専門にしている先生にかかれば、そのようなことはないはずです。
医師選びは本当に大切です。
次の記事には全国の肛門専門施設を実名で書いています。
医師の選び方も書きましたので参考にしてください↓
日本の肛門科の歴史と現状〜専門の医師を見分ける(https://osakakoumon.com/column/2103/)
あと、手術(またはジオン注射)を受けてからかゆみが止まらない、という人が時々います。
もしかすると、手術やジオン注射の術後から、以前よりも念入りに洗うようになっていませんか?
洗いすぎて皮脂を落としすぎになると肛門そう痒症を発症し、洗っても洗ってもかゆみが止まらなくなりますから注意してください。
最後に
蟯虫(ギョウ虫)によって肛門の激しいかゆみが引き起こされることも有名です。
この場合は明け方にかゆみが出てくることが多いです。
ギョウ虫は専門外なので内科の先生をご紹介しています。
保健所でも検査できるようですのでご相談下さいね。
〈追記〉
「これカラダ」に私の取材記事が掲載されています!
かゆみの原因となる「出残り便秘」について紹介されています。
興味のある方、是非、お読み下さい↓
<医師監修>大腸肛門病専門女医が教える。おしりの病気になりやすい便秘とそのケア法とは
元皮膚科医という異色の経歴を持つ肛門科専門医。現在でも肛門科専門医の資格を持つ女性医師は20名余り。その中で指導医の資格まで持ち、第一線で手術まで担当する女医は10名足らず。元皮膚科医という異色の経歴を持つため、肛門周囲の皮膚疾患の治療も得意とし、肛門外科の医師を対象に肛門周囲の皮膚病変についての学会での講演も多数あり。
「痔=手術」という肛門医療業界において、痔の原因となった「肛門の便秘」を直すことによって「切らない痔治療」を実現。自由診療にもかかわらず日本全国や海外からも患者が訪れている。大阪肛門科診療所(旧大阪肛門病院)は明治45年創立の日本で2番目に古い肛門科専門施設でもあり日本大腸肛門病学会認定施設。初代院長の佐々木惟朝は同学会の設立者の一人である。
2017年10月には日本臨床内科医学会において教育講演を行うなど新しい便秘の概念を提唱。