「痔」「じ」「ぢ」という言葉の語源・由来は?

(2020年9月27日加筆修正)

「痔」という言葉について正確に説明できる人は少ないですね。

患者さんはもちろんのこと、専門外の医師でも、痔のことを正確に知らない人が多いです。

おしりに何か異常があれば全部、何でもかんでも「痔」という一言で片付けないで下さいね😓

痔は1つの病気ではありません。

肛門の良性疾患の総称です。

主に「痔核(脱肛・いぼ痔)」「裂肛(切れ痔)」「痔瘻」の3種類がありますが、肛門科で扱う疾患は、この3種類だけではありません。

詳しくはコチラのブログを読んで下さい↓

『「痔」とは? ~一つの病気ではない~』

痔は治らないから死ぬまで持っていかなければならない病気?!

先日来られた女性患者さんが話されたんです。

痔になって薬局で相談したら、そこの薬剤師さん(?)が

「『痔』って『やまいだれ』に『寺(てら)』って書くやろ?それはな、痔って言う病気が、手術しても、薬を使っても、何しても治らへん、死ぬまで持って行かなあかん病気やからやねんで。だから一生死ぬまで付き合っていかなあかんねん。」

と言われて30年以上、ずっと放置してきたそうです。

放置した結果、当然、痔は悪化・・・

だから私の外来に来られたんだけど(苦笑)

うーん・・・
なんでこんな迷信が広がってるの?

って悲しくなりましたねぇ。

これ、間違ってますよ。

痔はちゃんと治療したら治ります。

手術して「物体」を取り去れば「いぼ痔(痔核)」は無くなります。

でもね

痔の原因となった便通を直さなければ、また痔になっちゃうんです。

そういう人が多いから

痔は手術しても治らない

とか

痔は手術して治しても、どうせまたなる

って言われるんでしょうね。

だって

みんな、痔の治療だけして便通を直してないんだもん。。。

それじゃあ
何度手術しても痔を繰り返すよね。。。


 

だから

痔の本当の根本治療は

薬でも手術でも注射療法でもなく

痔の原因となった便通を直すことなんですよ。

ちゃんと便通を直したら痔は繰り返しません。

それは患者さんたちが証明してくれています(笑)

痔の語源・由来

患者さんから言われて、「痔」という言葉の語源と由来について調べてみました。

よく「ぢ」と書かれていますが、正しくは「じ」です。

「ぢ」ではありません。

「語源由来辞典」によると

【意味】痔とは、肛門およびその付近に生じる病気の総称。
痔瘻(じろう)・痔核(じかく)・脱肛・切れ痔(肛門裂傷・肛門裂創)など。
痔疾。

【痔の語源・由来】
痔は呉音で「ジ(ヂ)」、漢音で「チ」と読み、漢字音に由来する。

普通、「ち」の濁音「ぢ」には「じ」が用いられるが、痔の治療薬販売で有名な『ヒサヤ大黒堂』が「ぢ」と表記することから、「痔」には「ぢ」が用いられることも多い。

漢字は病垂に「寺」と書くため、お坊さんが座禅で痔になりやすいなど「寺」に関連づけた俗説も多くあるが、寺とは全く関係ない。

「寺」には「峙(そばだつ)」を表し、「じっととどまる」「動かない」といった意味がある。

つまり、肛門付近にとどまる(峙)病なので、「痔」という漢字になったのである。

というわけで、寺には全く関係ありません。

「ぢ」という「ち」に「゛」を付けるのも「誰にも知られず自宅でコッソリ治せます」という新聞広告で有名なヒサヤ大黒堂が表記したことが始まりだったようですね(笑)

うーん・・・
このネーミング、
やめて欲しかったなぁ。

このせいでイメージが悪くなったような気がする。

ち(血)のイメージから痛みを連想したり、人に言えない㊙のイメージが付いてしまったような気がします。

また医学的にどうなのか、調べてみました。

土屋周二「Proctologyの歴史」(肛門疾患の知識)によると、

「(略)広く肛門疾患を指す『痔』とい文字は、『そば立つ、じっととどまる、峙』の意から由来し、佛教の寺院などとは無関係である。この文字は仏教渡来以前の春秋戦国時代にも存在していたという。そしてはじめは『痔』とは各種の突出した病変を包含していたが、宋時代頃から肛門のものに限られるようになったとの
ことである。(略)」

同じ事が書いてある!

そして

大阪肛門科診療所ならではの歴史的な事実が!

大阪肛門病院の初代院長、佐々木惟朝が立ち上げた学会「日本直腸肛門病学会」(今の「日本大腸肛門病学会」の前身)の学会誌や写真が佐々木家には残っていました。

日本直腸肛門病学会誌(8:1、1951)山本八治「痔の名称並びに異名」によれば、

「痔といふ字は疒の下に寺と書いてあるから、痔に罹ればお寺に行かなければ治らぬ不治の病のやうに考へ、その意味から痔の文字が生まれたやうに云う者があるが、然しそれは相違する。

医学最古の書といはれてゐる周末期の黄帝内経素問によれば、筋脈横解し腸澼して痔となると記されて居るので、この時初めて痔なる文字が文献として現はれたことになる。

神農本草経にも痔のことが記載されてゐるが、然しこれは神農時代の著書ではなくて、周時代よりは遙かに後の漢時代に著述されたものと謂はれてゐる。

降つて宋時代の三因方(陳言)によれば、大澤中小山突出有るを悉く峙(そえやまひ)と為し、特に肛門辺に於て生ずるものばかりでなく、九竅中に於て凡そ小肉突出するものあれば皆痔と言ってゐた。

例えば、鼻痔・眼痔・牙痔といふが如くである。その後腹中痔・脊痔・頂痔・手足痔等を附け加えるようになつたのであるが、説文に痔は後病也と注釈して居り、更に文政年間校正方興(有持桂里)に於て単に痔といえば肛痔に限ると説明するに至つて、痔の文字は本来の意義に還元したのである。

斯様に古典を詮索すれば後世小肉突出した形貌より痔と称したのである。

冒頭に述べたように、お寺に行かねば治らぬ不治の病なるが故に痔と作字したように主張するものは真実でないと思はれる。(略)」
(旧漢字は、一部新漢字に改めました)

というわけで。。。

「痔」という漢字は、もともとは肛門に限られたことではなく、突出した「できもの」のことを指したようで、「鼻痔」「眼痔」などもあったようですね。

このまま正しく「痔」という言葉が使われていれば、「『痔』=『肛門』のできもの」ということにならなかったのに〜!

すごく残念ですね(泣)

突出したモノを指すから、だから

「痔」というと、
多くの人が「いぼ痔」を連想する

 

という理由もよく分かりました(苦笑)

あとから「痔」という漢字だけが一人歩きしてしまったんでしょう。

言葉の持つイメージってコワイですね。。。

薬では痔は治りません

薬で痔が治る・・・

と信じて、ずーっと何十年も使い続けている患者さんが時々来られます。

私、思うんです。

治るんだったら
治ってるんだったら
なんで薬、使ってるの???

治ったら、薬、要らないんじゃないの?

そして、ずっと薬を使い続けてるのに、
私の外来に来られてるのは、

治らずに困ってるから・・・なんですよね。。。

治らずに来られるケースで一番多いのが「いぼ痔(痔核・脱肛)」です。

いぼ痔(痔核・脱肛)は簡単に言うと、肛門に出来た「静脈瘤」のようなものなので、血液の流入によって腫れたりしぼんだりします。

小さなモノだと薬で炎症がおさまり、うっ血がとれて腫れがひくと、薬で治ったような気になるのですが、薬を使っても「いぼ痔」という「物体」が「消えて無くなる」ことはありません。

これ、断言します。

薬を使っても「いぼ痔」そのものは消えて無くなりませんよ。

だから信じて使い続けたのに、年数が経つと大きくなってきたんです。

そりゃそうです。
理由は簡単です。

痔の原因となった便通を直さずにどんな薬を使っても痔は悪化の一途をたどります。

悪化してから初めて気付く人も多いです。

私の外来を受診するまでに使った痔の薬代・・・

5000万円という人もおられました😱😱

 

「先生の手術代、ほんまに安いわ〜」
と手術中に言われていましたが

自己診断・自己治療は危険です。

そもそも肛門を見せてないのに

なんで痔って分かるの?

電話相談員は医師ですか?

たとえ医師であっても診てもないのに診断は出来ないです。

電話相談で痔の診断は出来ません。

痔だと思って
電話相談で痔だと言われて
○○○の薬を20年間使って来た・・・

という患者さんを診察したら

痔ではなく肛門癌だった・・・

というケースも何件かありました。

残念ながら癌が転移していて
亡くなられた患者さんもおられます。。。

だからせめて癌ではないことの確認だけでもして下さいね。

痔であればいいんです。

放置しても死にませんから。

そして受診するなら専門の先生にかかってくださいね。

「肛門科」って看板に書いてあっても専門じゃない先生が多いです。

 

なかなか専門かどうかの見分け方って難しいのですが、以下のサイトを参考に探してみて下さい↓

「肛門科の専門医の探し方・選び方~期待外れにならないために~

特に肛門科の女医は少ないです。

医師の性別よりも専門性で選んで欲しい。

「肛門科の女医とは?女性肛門科とは?」


診療所のセラピードッグ「ラブ」🐾
右側がラブです🐶
「マット!」の指示で、
後ろの青いマットにどちらが早く行けるか競争です。


結果は2ワンとも同時着でした(笑)
どっちもエライ!

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