出残り便秘の治療は一生続くのか?
カテゴリー:
院長の佐々木巌です。
出残り便秘という言葉は当院の造語で、医学用語ではありません。
この病態に使用するべき正式な医学用語もあるのですが、その用語は複数の解釈があるため、使うと定義の問題で混乱を来します。
私たちが伝えたいのは治療や考え方です。
定義の問題で他のドクターと闘うのはエネルギーの無駄遣いだと考え出残り便秘という説明用の造語を作りました。
でも出残り便秘という言葉まで定義でゴチャゴチャするのはもうイヤなので、勝手な解釈で使えないように商標登録したのです(笑)。
出残り便秘についてはこちらをご参照ください。
今回はメールでご質問を頂きました。
出残り便秘の治療は一生続くのか?
というご質問です。
ブログの記事をお返事に替えさせていただこうと思います。
メールでのご質問
1日に6回以上排便があり、異常だと思いネットで検索して先生のブログを読んで、遠方ですが思い切って受診しようと思い予約しました。
まさしく出残り便秘の重症だと思います。
ここ2カ月以上前から夜中から朝方にかけて便意のために寝れない日々が続き先日心療内科で受診してもらったら鬱といわれました。
消化器科では、過敏性大腸炎と言われて薬をもらいましたが効き目は今のところありません。
なので藁にもすがる思いです。
座薬で治療ということですが、ずーっと一生使い続けるのでしょうか?
それが心配でメールしました。
これまでに2回内痔核の手術をして、このまま生活していると、また再発を繰り返すと思います。
先生よろしくお願い申し上げます。
お返事
メール拝見しました。
そうですね。
坐薬が必要で、かつ、十分な効果があるなら、一生続けた方が快適でしょう。
無理して坐薬を止めて、その結果、辛い症状が出るのなら、また痔になってしまうのなら、坐薬を使って快適に過ごすという選択をしても構わないと私は考えています。
ちなみに過敏性腸症候群と診断されていた患者さんについて書いた記事がありますので、こちらもご参照ください。
よくこういう例え話をします。
高齢になって足が不自由になってきて杖をつく人がいます。
杖をつき始めるとおそらく元には戻れず、一生杖をついて生活することになります。
しかし、ご本人には足が不自由だという自覚がありますので、杖もやむを得ないという覚悟があります。
杖を使ってでも今より便利に過ごそうという意志もあるでしょう。
あと身の回りで杖をついている方を何度も見ていますよね、これが大きいと思います。
だから一生止められないかも知れないけれど杖を受け入れることができます。
では、排便の機能が悪い方はどうでしょうか?
ご自身以外に同じような人がいるのか知りませんし分かりませんから、正直、不安だと思います。
でもどんなに不安でも、結局のところ、本当に不便しているのなら、辛いのなら不足している排泄機能をカバーするために治療せざるを得ないと思います。
じゃあ、どこまで機能が落ちたら、どれくらい辛ければ治療をはじめるのか?
いまのところ明確な決まりはありません。
医者の立場で、乱暴な言い方を許していただければ、究極のところ死ななきゃいいとも言えます。
現実的にはご自身が「もうイヤ!」となったらひとつの潮時でしょうか。
それだって、限界ギリギリまで粘るのも、諦めてサッサと治療をはじめるのもご本人の自由です。
普段当院が行っている治療は、便通の治療をしている状態と、それまでの治療していない状態を体験していただくこと。
その後継続するか中止するかは相談のうえ決めています。
どちらを選ぶかはあくまでもご本人次第だと思います。
まとめ 治療はご自身の意志に基づいて行う
要は「辛い症状を改善したい」という意志があれば治療する、意志が弱まれば治療を止める人もいる、ということです。
治療を止めた結果、また「辛い症状を改善したい」と思えば治療を再開し、これを繰り返して継続治療を受け入れるという方もおられます。
このように当院はご本人の意志を尊重する方針です。
ご理解の上、受診を検討してください。
大阪肛門科診療所 院長。 平成7年大阪医科大学卒業。大学5年生の在学中に先代の院長であった父が急逝(当時の名称は大阪肛門病院)。大学卒業後は肛門科に特化した研修を受けるため、当時の標準コースであった医局には入局せず、社会保険中央総合病院(現 東京山手メディカルセンター)大腸肛門病センターに勤務。隅越幸男先生、岩垂純一先生、佐原力三郎先生の下で3年間勤務、研修。平成10年、院長不在の大阪肛門病院を任されていた亡父親友の田井陽先生が体調不良となったため社会保険中央総合病院を退職し、大阪肛門病院を継承。平成14年より増田芳夫先生に師事。平成19年組織変更により大阪肛門科診療所と改称し、現在に至る。