腸を黒くする下剤や健康食品に要注意 〜大腸メラノーシス〜
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(2018年10月15日加筆修正)
国産車ではSUBARUが大好きな大阪肛門科診療所 肛門科女医で専門医・指導医の佐々木みのりです。
大阪肛門科診療所では受診される患者さんに必ず処方薬だけでなくサプリメントや健康食品についても具体的に問診で詳細に尋ねています。
なぜならそれらのものの中に下剤の成分が入っていることがあるからです。
特に便秘に効くと謳われている健康食品のほとんどに入っています。
「モリモリ出る」「どっさり出る」「スッキリ解消」などというキャッチフレーズのものは下剤入りと考えた方が良いでしょう。
それだけではありません。
「スッキリ痩せる」
「ポッコリお腹がぺったんこ」
「スリム○○○」
などダイエット効果を謳っている商品にも下剤の成分が入っていることが多いので要注意。
実際、今まで私が診てきた患者さんの飲んでいた健康食品のほぼ全例に下剤が入っていました。
下剤入りだから効いて当然。
飲めば必ず出るように下剤が入っているから売れますしリピートします。
健康に良い、健康的というイメージを植え付ける宣伝文句も欠かしていません。
植物素材100%
健康茶
体に対して穏やかで優しい
和漢として重宝されている秘草
自然にスッキリを促す
体のお掃除で内側からキレイに
自然の力でスッキリ
自然植物
天然ハーブ
という言葉が華々しく踊ります。
私の患者さん達はこの言葉を信じて飲み続けておられました。
しかも困ったことに
自然の植物が原料なのでクセにになることもないので安心です
と書いてあるので大丈夫だと思って何年もずっと飲み続けておられました。
結果はどうだったのか・・・というと、最初は少量で効いていたのにだんだん効かなくなって飲む量が増えていったり、飲むのをやめると全く便が自力で出ず以前よりも自然排便が無くなってしまいました。
いくら自然の植物であろうと、天然ハーブであろうと、下剤は下剤です。
クセになります。
依存性・習慣性がありますので騙されないで下さいね。
この記事の目次
大腸メラノーシスとは?
大腸黒皮症とも言い、センナ・ダイオウ・アロエ・カスカラなどの大腸刺激性下剤(アントラキノン系下剤)により大腸の粘膜が黒くなった状態です。
メラノーシスというと通常はメラニン色素が沈着して色素沈着を生じることを言うのですが、大腸メラノーシスの場合、沈着するのはメラニンではなくリポフスチンという物質です。
右の結腸(上行結腸)から始まり左の結腸(下行結腸)に及んでいきます。
黒くなった腸は神経細胞が減少し、腸の動きが悪くなり、土管のような腸になってしまいます。
つまり便秘を治そうと思って飲んだ健康食品や下剤のせいで、自分で動かない腸を作ってしまうわけです。
「飲んで効果がある」のではなく「それを飲まないと便が出ない」腸になっていきます。
だから最初はすごく効いていたのにだんだん効かなくなって飲む量が増えていったり、それを飲まないと便が出なくなったりするわけです。
良かれと思って飲んだ下剤や健康食品のせいで腸は真っ黒になり、クスリで動く腸を作ってしまい、一生お得意様コースに入ってしまいます😱
これじゃあまるで薬剤性便秘です😰
クスリや健康食品のせいで便秘になっているのです。
大腸メラノーシスと大腸癌との関連
以前は大腸メラノーシスと大腸癌は無関係と言われていましたが、2009年にドイツで「アントラキノン系の下剤が大腸メラノーシスを来し、大腸腺腫を増加させるということは明白」と論文で発表され、大腸メラノーシスに合併した大腸癌の報告が数えられないほどあることから、大腸癌の発生リスクとして捉えられるようになってきました。
そもそも腸の色が黒くなるなんて、癌の発生の有無にかかわらず気持ちの良いものではありません。
当然、腸内バリアーも破綻していると思われ、ある意味「腸の悲鳴」。
腸をいたわるためにも腸を黒くする下剤や健康食品は避けましょう。
腸を黒くする成分 〜アントラキノン系下剤〜
1,センナ
「センナ」という表示ではなく「センナ茎」「センナリーフ」「センナ末」「センノシド」「センノサイド」と記載されているものすべてアントラキノン系下剤成分で腸を黒くします。
そして「センナ」という表記ではなく次のものもセンナですのでご注意を!
キャンドルブッシュ
ゴールデンキャンドル
カッシアアラタ
それだけではありません。
最近ジャムや菓子類のフレーザーとして市場でも出回っている「ルバーブ」にもわずかにセンノシドが含まれるため敏感な人は下痢をすることがありますので注意して下さい。
2,アロエ
健康に良さそうなイメージを持っている人も多いですがアントラキノン系下剤の代表です。
「アロエ」という表記だけでなく「キダチアロエ葉末」などと天然自然植物をイメージさせる表記になっている場合も多いですがアロエであることに変わりはありません。
アロエという言葉が入っていたらアントラキノン系下剤だと思って下さい。
3.ダイオウ(大黄)
意外だとビックリされた人もいるかもしれません。
なぜならお通じを良くする漢方薬の多くに含まれている成分だからです。
私も以前ずっと飲んでいましたし今でも患者さんに処方することがあります。
センナとアロエに比べると依存性・習慣性が軽い印象を持っています。
腸の黒さもセンナとアロエに比べると随分マシでした。
だけど最終手段の処方にしています。
何をやっても、何を飲んでも効かない頑固な便秘の人に最後の切り札として使っています。
そしてやはりアントラキノン系下剤なので最初は効いていたのに長期にわたり服用しているとだんだん効かなくなって飲む量が増えていったり、効かなくなって別の下剤に変更することもしばしば・・・💦
便秘に良く処方される漢方薬は以下の通り。
大黄甘草湯
桃核承気湯
麻子仁丸
大承気湯
防風通聖散
大黄牡丹皮湯
潤腸湯
乙字湯
桂枝加芍薬大黄湯
ダイオウ入りの漢方薬は他にもありますので、成分を確かめてみてください。
便秘でもないのに飲んでいる人もおられ、そのせいで「薬剤依存性便秘」になっているケースもあります。
今一度、ご自分の飲んでいるもの全てチェックしてくださいね。
4.カスカラ・サグラダ
北アメリカとケニアで栽培されているクロウメモドキ科の樹皮でアントラキノン系下剤成分を含んでいます。
ハーブ系のサプリメントに入っていることがあるので要注意です。
単剤よりも合剤の方が腸が黒くなりやすい
もう一つ知っておいて欲しいことがあります。
一つの成分だけ摂取するよりも、二つ、三つ組み合わせる方が、より腸が黒くなります。
つまりセンナ単独よりも「センナ+アロエ」の組み合わせの方が腸が黒くなりやすいのです。
腸が真っ黒になっていた患者さんが長年愛用していた「スリムどかん」はセンナとキダチアロエの合剤、自然美容健康茶「モリモリスリム」はゴールデンキャンドルとキダチアロエの合剤でした。
意外と健康茶に入っていることが多いのでチェックしてみて下さい。
欧米では健康食品に入れてはいけない成分
日本ではドラッグストアや通販で簡単に手に入れることが出来るセンナやアロエなどのアントラキノン系下剤。
欧米では一般消費者は手に入れることが出来ない禁止薬物となっています。
医師の処方がなければ摂取できないのです。
日本では健康食品やサプリメントは野放し状態。
厚生労働省の健康食品調査でも本当に品質の良いモノは2割以下という結果ですから、よほど注意して厳しい目で選ばなければ「健康のために飲んでいる健康食品で不健康になる」という事態になりかねません。
現状の日本においては自分の健康は自分で守るという姿勢が必要だと思います。
どれくらい服用すると腸が黒くなるのか?
毎日服用だと4か月
時々服用でも9か月〜1年
で腸は黒くなります。
たまに便秘したときだけ飲んでいるケースでも腸が黒くなっているので気を付けましょう。
そして嬉しいことに重症でなければ下剤を中止すると徐々に腸の色は元に戻ります!
だから少しでも早くアントラキノン系下剤を中止して、腸を黒くしない下剤に切り替えましょう。
妊娠中でも服用できる腸を黒くしない下剤もあります。
私はまずピコスルファートナトリウム(ラキソベロン)を処方します。
これである程度便が出ればラッキー✨
ただしどんな下剤も依存性・習慣性はあります。
よほど便秘がひどくなければ本当に辛いときだけ飲んでもらっています。
便秘は生活の結果なので、クスリに頼る前に出来ることをしてもらっています。
クスリ以外の便秘解消法について今、執筆真っ最中。
患者さんが実際にやって効果があったものを掲載しようと思っています。
人によって何が効くかは違うので、色々試してみて下さい😊
今、飲んでいるものをチェックしてみよう
というわけで今、皆さんが健康のために、あるいは便通のために良かれと思って摂取しているサプリメントや健康食品、お茶などがあれば成分表示をチェックしてみましょう。
その中にアントラキノン系下剤の成分が書いてあったら常用は避けましょうね。
皆さんの腸が健康になることを祈っています✨
元皮膚科医という異色の経歴を持つ肛門科専門医。現在でも肛門科専門医の資格を持つ女性医師は20名余り。その中で指導医の資格まで持ち、第一線で手術まで担当する女医は10名足らず。元皮膚科医という異色の経歴を持つため、肛門周囲の皮膚疾患の治療も得意とし、肛門外科の医師を対象に肛門周囲の皮膚病変についての学会での講演も多数あり。
「痔=手術」という肛門医療業界において、痔の原因となった「肛門の便秘」を直すことによって「切らない痔治療」を実現。自由診療にもかかわらず日本全国や海外からも患者が訪れている。大阪肛門科診療所(旧大阪肛門病院)は明治45年創立の日本で2番目に古い肛門科専門施設でもあり日本大腸肛門病学会認定施設。初代院長の佐々木惟朝は同学会の設立者の一人である。
2017年10月には日本臨床内科医学会において教育講演を行うなど新しい便秘の概念を提唱。