肛門狭窄症の診断 〜本当に肛門が狭いのか?〜
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先日、久々に学会で発表したのですが、100枚近くあったスライドを、あれこれしゃべらず1点集中ということで20枚くらいに絞ったため(院長検閲により多くのスライドが削られます😅)、他の部分についてはブログで書きたいと思います。
肛門が狭いかどうか、どうやって診断するか?
ということについて今日は述べたいと思います。
肛門狭窄の診断は医師個人の主観によるところが大きい
そもそも自分の肛門の穴が大きいのか小さいのか、考えた事ってあります?
人と比べようがないし、排便に不自由がなければ普段意識することはないでしょう。
患者さん自身が狭いと表現する場合、「便が細くなってきた」とか「細い便しか出せない」とか「少しでも形のある便が出ると痛い、切れる」など、何か症状があります。
一方、医師が診察をして患者さんの肛門が狭いかどうかの判断なのですが・・・肛門科の教科書にもガイドラインにも明確な基準は記されていません。
指診(肛門に指を入れて診察すること)で判断する?
でも指の太さって人によって違いますよね?
例えば私(右)と院長(左)の指の太さも随分違います↓
術後の患者さんが「みのり先生の方が診察痛くないから〜」って私の診察に流れてくるのも納得😅
肛門鏡も標準サイズ(左)と小児用(右)で随分違います↓
開くとさらに大きくなります↓
肛門が狭くない人は標準サイズの肛門鏡が楽に入り、傷がなければ痛みもありません。
だから肛門鏡がちゃんと入るかどうかは、ある程度、客観的な目安になりそうですが、診察の時は患者さんも緊張状態😣
お尻に力が入っていると診察しにくいわけで・・・
究極、麻酔をかけて筋肉の緊張を完全にとらなければ、本当に狭いかどうかは分かりません。
逆に、麻酔下に診察できれば狭くないと判断します。
ましてや麻酔もせずに普通に診察が出来る患者さんは、たとえ痛みが強くても私は肛門が狭いとは判断しません。
便の太さもあてにならない
それでは便の太さで肛門が狭いかどうか分かるのでしょうか?
答えは正解でもあり不正解でもあります。
なぜなら軟便は細く出るからです。
肛門を広げなくても出せるので、やわらかい便は細くなります。
逆に硬い便は太くなります。
つまり便性によって太さは変わるので、便の太さもあてにならないのです。
日によって便の硬さや太さって違うでしょう?
一度、観察してみて下さい😚
過剰診断・過剰手術にならないように
大阪肛門科診療所は自由診療。
だから・・・というワケでもないのでしょうが、他の肛門科を色々と回ってから最後に受診される患者さんが多いです。
そこでよく相談を受けるのが
「肛門が狭いから手術して広げなければならない」って言われたんですけど・・・
というもの。
でも診察すると・・・
私の指は楽々入る、普通に肛門鏡でも診察できる・・・ということが多いです。
今までの診察は男の先生で、指も私よりも太いし、診察の時に緊張して肛門をしめてたから、その診察の時には狭くなっていたのでしょう。
こういう経験をたくさんしているので、私たちは初回の診察で、自分の感覚だけで、「狭い」と診断しないように気を付けています。
排便のコントロールと軟膏治療で、2週間後に受診してもらった時には肛門が広がっていることもしばしばあります。
炎症をとってあげれば硬かった肛門がやわらかくなり、ちゃんと開くようになるのでしょう。
傷が治れば痛みもなくなりますから、診察の時にも力が入りません。
2回目の診察で「あれ?全然痛くない!前回と全然違います!!」って言われる患者さんも多いです。
だから肛門狭窄の診断は過剰診断にならないように、すぐに手術と言わないように慎重に言葉を選んで説明しています。
肛門狭窄と言われてもあきらめない姿勢も必要
1軒の肛門科で、一人の医師で、肛門が狭いかどうか、手術が必要かどうか決めない姿勢も大切です。
医師によって指の太さが違う、診察で使用する肛門鏡の種類も違うかもしれない。
だから狭いと感じるかどうかは医師個人の主観によるところが大きいのです。
肛門狭窄に限らず、手術と言われてもその場ですぐに決めずに、他の肛門科も受診して違う先生の意見も聞いてみましょう。
それから手術を検討したって手遅れになりませんから。
診療所のセラピードッグ「ラブ」💕
ラブの💩も硬いときは
人間並みの立派な💩をしますよ😓
元皮膚科医という異色の経歴を持つ肛門科専門医。現在でも肛門科専門医の資格を持つ女性医師は20名余り。その中で指導医の資格まで持ち、第一線で手術まで担当する女医は10名足らず。元皮膚科医という異色の経歴を持つため、肛門周囲の皮膚疾患の治療も得意とし、肛門外科の医師を対象に肛門周囲の皮膚病変についての学会での講演も多数あり。
「痔=手術」という肛門医療業界において、痔の原因となった「肛門の便秘」を直すことによって「切らない痔治療」を実現。自由診療にもかかわらず日本全国や海外からも患者が訪れている。大阪肛門科診療所(旧大阪肛門病院)は明治45年創立の日本で2番目に古い肛門科専門施設でもあり日本大腸肛門病学会認定施設。初代院長の佐々木惟朝は同学会の設立者の一人である。
2017年10月には日本臨床内科医学会において教育講演を行うなど新しい便秘の概念を提唱。