海外から一時帰国中に治療が出来るかどうかについて
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出不精だったけど車に乗るようになってから少しは出かけるようになった佐々木みのりです。
当院には海外から受診される患者さんが結構、おられます。
受診のためにわざわざ日本に来られる方も多く、治療にどれくらいの時間がかかるのか、そのためにはどれくらいの期間、日本に滞在すればいいのか、事前に問い合わせてこられることが多いです。
そのために当院のホームページには「問い合わせフォーム」を設けました。
出来れば事前に病状を伺っておきたいです。
もちろん診察してみないと痔であるかどうかすら分かりません😓
手術希望で手術を受けるために帰国される方もおられるのですが、診察してみたら手術なんて必要なかったというケースもあります😓
だからメールで症状をお聞きしても診断も治療のアドバイスも出来ないのですが、初回の診察とその後の受診についてはお答え出来るので、事前にお問い合わせ頂いた方が帰国の時期や滞在期間の予定が立てやすいと思います。
今回の海外の患者さんからの相談です↓↓
硬い便をしたところ、肛門が切れてしまい、見張りイボを伴う慢性裂肛を患っております。
一時帰国した際に、地元の肛門科へ行き、ネリザ軟膏を処方してもらい、約2ヶ月ほど使用しておりました。
最悪期の激しい痛みはなくなったものの、酸化マグネシウムを服用しつつ、良くなったり悪くなったりを繰り返しております。
通常はパパイヤの軟膏を使用していますが、痛みがひどい場合、ネリザ軟膏を使用しています。
次回、一時帰国して先生に診てもらいたいのですが、1-2ヶ月の間の滞在でも、診ていただけますか?
この記事の目次
私からのコメント
気になった部分についてコメントしますね。
これはあくまでも私の見解であって、今おかかりになっている先生の方針と違う場合があります。
決してそちらの先生を否定したり、自分が正しいというつもりはありませんので、どうぞご参考になさってください。
あくまでも私たちの考え方であり治療方針の違いということでご理解頂きたいと思います。
一時帰国した際に、地元の肛門科へ行き、ネリザ軟膏を処方してもらい、約2ヶ月ほど使用しておりました。
ネリザ軟膏にはステロイドが入っています。
長期使用による副作用の問題もありますし、ステロイドは炎症をおさえるのには効果を発揮してくれますが、傷の治りを妨げるため私はほとんど処方することがありません。
処方は2〜3週間を限度にしています。
2か月という期間はステロイド含有軟膏を使用するには長すぎると思います。
痛くてつらい症状がある時のみ使用する方が良いでしょう。
最悪期の激しい痛みはなくなったものの、酸化マグネシウムを服用しつつ、良くなったり悪くなったりを繰り返しております。
酸化マグネシウムは「便を出す」薬ではなく「軟らかい便を作る」薬です。
もしもこれを飲まなくても毎日普通の便が出るのであれば必要ないかもしれません。
出始めだけが硬くて、あとから出てくる便は軟らかいというのであれば、酸化マグネシウムを飲んでも便通は改善しないでしょう。
どんな飲み薬も既に出来上がって肛門近くまで降りてきている便や、ましてや出し残した出残り便には効きません。
それどころか、困ったことに酸化マグネシウムを飲むと「ねちょっとした便」💩になるので、かえって便の切れが悪くなり、スッキリ出にくくなります。
残った便が「びちびちドロドロ💩」だと傷を汚染しやすく、切れ痔(裂肛)が悪化する原因となります。
酸化マグネシウムを飲んでから、かえって切れ痔(裂肛)が悪化したという患者さんをたくさん診ているので、本当に必要な薬かどうか今一度検討する必要があります。
酸化マグネシウムを飲むのをやめたら切れ痔(裂肛)の症状が良くなったという人も多いです。
以前、こんな記事も書いてます↓↓
参考にお読み下さい↓↓
「酸化マグネシウムを止めたら便通が良くなったという人、本当に多いです」
手術の必要がなければ2〜3週間の滞在で治療が可能
海外からの受診に限らず、初回受診後の通院は2〜3週間後となります。
便通の治療(主に出残り便秘の治療となります)を実践して頂いて2週間後に受診、その時点で治っていれば治療終了となります。
切れ痔(裂肛)の程度にもよるのですが、見張りイボや肛門ポリープを伴う慢性裂肛でも治ることが多いです。
初回の診察時で「あ〜、これは手術しないと無理だ・・・」というケースは非常に少ないです。
滅多にないです。
たまに駆け込み手術となることがありますが、レアケースですね。
それに手術が必要な病状であっても、便通を治したら痛みや出血が無くなって痔が改善してしまう人も多く、手術を決心して受診された人まで、手術取りやめとなることも多々あります😓
申し込んでいた手術をキャンセルしてもらったことも何度もあります😓
でも便通を治しても、保存的治療を頑張ってやってみたけれど、全く症状が改善しないという場合は残念ながら手術が必要となります😢
裂肛で手術が必要なケースは排便が出来ないくらい肛門が狭い場合(肛門狭窄)と、大きな肛門ポリープがあり、それが脱出を繰り返しポリープの根元が裂けてしまった随伴裂肛の場合です。
随伴裂肛についてはコチラ↓
通院についてはこの記事も参考になると思います↓↓
手術の場合は1〜2か月の滞在が必要
もしも切れ痔(裂肛)で手術が必要であった場合、日帰り手術と入院手術では手術方法も違えば治療にかかる期間も違うのですが、少なくとも1〜2か月の滞在が必要となります。
入院手術の場合、入院期間は5泊6日です。
退院後は1週間に1回の通院が1か月くらい続きます。
退院後4〜5回目に完治終了となるケースが多いですね。
日帰り手術の場合は完治まで2か月前後かかります。
その間、1週間に1回の通院が必要です。
手術後6〜8回通院して完治終了となるケースが多いです。
日帰り手術の方が通院回数も多くなりますし、完治するまでに時間がかかります。
だから海外や遠方の患者さんは治療期間の短い入院手術を選択されるケースが多いです。
昔、5泊6日入院されて、退院後はアメリカに戻り、アメリカから週に1回飛行機で通院された患者さんもおられましたが、多くの方は1〜2か月日本に滞在し、実家から通院されています。
日本の住所は関東地方という方も結構おられます。
普段でも東京や千葉、埼玉、神奈川、群馬などから来られる患者さんも多く、関東地方だけど日帰り手術を受けて飛行機や新幹線、高速バスなどで通院されています。
日帰り手術と入院手術、それぞれにメリット、デメリットがありますので事前に十分検討し選んでもらっています。
手術をせずに痔と上手く付き合うという選択肢も
もちろん手術が必要な状態であっても、手術をせずに痔と上手く付き合うという選択肢もあります。
見張りイボや肛門ポリープは無くならないし、傷もまだ完全に治ってないけれど、排便も苦痛ではなくなったし、出血もほとんどなく何も困らないのであれば、痔はそのまま持っていてもいいと思うのです。
何か不便を感じている
おしりのことで生活に困っている
という状況でなければ、手術をせずに痔と付き合っていって、どうしようもなくなった時点で手術を考える、手術を先延ばしにするという選択もありです。
実際、そうして手術を回避し、痔と上手く付き合っている患者さんがたくさんいます。
ただし便通の管理をちゃんと自分で生活の中で行うことが大前提となります。
ここがうまく出来ないと痔は悪化してしまいます。
そうならないように自己管理出来るよう患者さんをもっていってあげるのが私たちの仕事。
お一人お一人の生活に合った治療を提案できるよう、患者さんと試行錯誤を繰り返して、その人にとっての正解探しをしています。
1回でうまく行くこともありますし、何度も頑張ってやっと慣れる人もいますし、何度やっても上手くいかず治療を変えることもあります。
便通の管理は本当に人それぞれです。
海外からの受診で、限られた滞在期間中に出来るかどうかは正直やってみないと分からないのですが、ほとんどの患者さんが2〜3回目の通院で終了出来ているので1〜2か月の滞在であれば便通の治療は十分できると思います。
「ご予約はお電話で」が原則ですが時差のある国の方はメールでも可能です
当院は自由診療で完全予約制です。
受診には必ずご予約が必要です。
ご予約は原則、お電話でのみ承っているのですが、時差のため電話がかけられない国や地域の方に限り、メールでのご予約を承っております。
痔の原因となった便通を治すことで、出来る限り手術を回避するという方針でやっているちょっと変わった肛門科です。
私たちの診療に価値を感じて頂けるのであればどうぞ受診して下さい。
このブログが少しでもお役に立てれば幸いです。
診療所のセラピードッグ「ラブ」🐾
今年の夏は異常な暑さです😵
とてもじゃないですが散歩は行けません💦
犬も熱中症になります🐶
元皮膚科医という異色の経歴を持つ肛門科専門医。現在でも肛門科専門医の資格を持つ女性医師は20名余り。その中で指導医の資格まで持ち、第一線で手術まで担当する女医は10名足らず。元皮膚科医という異色の経歴を持つため、肛門周囲の皮膚疾患の治療も得意とし、肛門外科の医師を対象に肛門周囲の皮膚病変についての学会での講演も多数あり。
「痔=手術」という肛門医療業界において、痔の原因となった「肛門の便秘」を直すことによって「切らない痔治療」を実現。自由診療にもかかわらず日本全国や海外からも患者が訪れている。大阪肛門科診療所(旧大阪肛門病院)は明治45年創立の日本で2番目に古い肛門科専門施設でもあり日本大腸肛門病学会認定施設。初代院長の佐々木惟朝は同学会の設立者の一人である。
2017年10月には日本臨床内科医学会において教育講演を行うなど新しい便秘の概念を提唱。