手術が必要な痔は本当に少ない 〜痔のほとんどは手術しなくても良くなる〜
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(2019年5月14日加筆修正)
先日のブログで痔の手術の話を書きました。
是非そちらの記事を読んでから今日の記事を読んで下さいね。
「痔は手術しないと治らないのか?(手術しても治らないかも?!)」
結論から言うと、手術でしか救えない痔は本当に少ないです。
一般的に手術治療が望ましいと言われている痔
手術でしか患者さんを楽にしてあげることが出来ない痔もあります。
駆け込み手術になったり、お願いですから手術して下さいと患者さんからお願いされる痔があるのです。
肛門周囲膿瘍
肛門周囲に膿が溜まって腫れて激痛になる病気です。
肛門周囲膿瘍だけは今スグ切って膿を出した方がいいです。
その方が楽になります。
実際、痛くて歩くことも出来ず、両脇抱えられて受診された大の男の人でも、切開して膿を出したらニコニコして自分で歩いて帰って行かれますよ(笑)
コップ1杯くらいの膿がどばーっと出ることも多いです。
患者さんから「切るの、痛くないですか?」って聞かれるんですが
「切らずに膿を溜めておく方が、もっと痛いと思いますけど」って答えてます。
だって嘘じゃないし、切って膿を出した方が痛みは劇的に楽になりますから。
嵌頓痔核
「かんとんじかく」と読みます。
元々あったいぼ痔(痔核・脱肛)が腫れ上がってしまった状態です。
詳しい解説はコチラ↓
一般的に手術と言われている嵌頓痔核でも、便通を直したら痛みも腫れも治ってしまった!というケースも結構あるため、当院では患者さんが強く希望しない限り手術をせずに、まずは便通を直してもらっています。
「こんなにつらいのは耐えられないから今、切って下さい」
って患者さんから頼まれることも多いのですが、痛くて便が出せてないケースも多く、実際、診察すると大量に便が溜まっているので、まずは便を出してもらいます。
これだけで、何もしなくても痛みが楽になることもしばしばあります。
しかも排便前と排便後で、別人のお尻か?!っていうくらい、肛門の腫れも全然違ったりして(笑)
また、筋肉の緊張をゆるめる漢方薬をペースト状にしたものをガーゼに当てて、痛み止めの軟膏を塗ってしばらくすると
「あ〜、全然違う!むっちゃ楽になりました。これなら切らなくても耐えれるかも!」
となって、結局、「切ってくれ!」と言っていた患者さんも切らずに笑顔で帰って行かれます。
2週間くらいで痛みが消失するケースが多いですね。
こうして手術を回避できるケースが増えてきたおかげで当院の手術率はどんどん低下し、現在では5%前後となっています。
随伴裂肛
「ずいはんれっこう」と読みます。
随伴裂肛というのは、ただの切れ痔(裂肛)ではなく、いぼ痔(痔核)や肛門ポリープが肛門から出たり入ったりする時に根元が裂けてしまった状態です。
だから便を出す時も痛い😫
(いぼ痔も肛門ポリープも飛び出るしね・・・)
出したあとに脱出したいぼ痔(痔核)や肛門ポリープを中に戻すときも死ぬほど痛い
そして肛門の中に戻した後も数時間痛い・・・というケース。
この場合は便が残っています。
残った便が傷口に入るから痛いんです。
だから、残った便をちゃんと排泄してもらったら、劇的に痛みが無くなって、傷も治ってしまう・・・という経験をたくさんしています。
便通を治せば 手術をしなくても痔は改善する
こうして患者さんを通して「痔って、手術しなくても(切らなくても)こんなに治るんだ!」という体験を本当にたくさんさせてもらいました。
頑張ってくれた患者さんに感謝です。
患者さんからも喜んでもらっていますけどね。
だって「絶対に手術!」って思ってた痔が、手術しなくても、切らなくても治ってしまうんだから。
「あの時に早まって痔の手術受けなくて良かった!痛かったけど便通を直して良かった。こんなに良くなるなんて、あの時には考えられなかった。」
って患者さんからよく言われます。
でもね。
正確に言うとね、痔は治ってないのです。
だってそうでしょう?
いぼ痔(痔核・脱肛)は無くなっていません。
ちゃんと肛門にあります😓
肛門ポリープだって同じです。
出来てしまった「物体」は消えて無くなりません。
でも、
別に痛みもない、
出血もない、
便もちゃんと出せる、
何も困ったことがない
っていう状態なら、別に痔があってもいいですよね?
何も困ってないのに痔の手術必要ですか?
あなたがその「物体(いぼ痔や肛門ポリープ)」を無くしてしまいたいと思っているのであれば手術を受けられたらいいでしょう。
でも、別にその物体(いぼ痔や肛門ポリープ)があっても構わないのなら手術せずに持ってていいんです。
「ひどくなったらどうしよう?」
「ひどくなったときに対処すればいいんです!それで死ぬことはありませんから。」
それにね
いぼ痔(痔核・脱肛)も肛門ポリープも体の一部です。
「そう思ったらかわいく思えてきた!愛おしくなってきた!」
と大笑いされる患者さんもいます😅
だからね
ひどい痔があるからって悲観的にならなくてもいいんです。
痔の原因となった便通を直せば、意外と仲良く付き合って行けるんですよ。
というわけで
当院では手術率が5%くらいです。
ほとんどが手術をせずに改善します。
手術は最終手段です。
何をやってもダメな場合に考えましょう。
診療所のセラピードッグ「ラブ」🐾
手術の時もラブが付き添います🐶
痛みと緊張がほぐれるようです💖
元皮膚科医という異色の経歴を持つ肛門科専門医。現在でも肛門科専門医の資格を持つ女性医師は20名余り。その中で指導医の資格まで持ち、第一線で手術まで担当する女医は10名足らず。元皮膚科医という異色の経歴を持つため、肛門周囲の皮膚疾患の治療も得意とし、肛門外科の医師を対象に肛門周囲の皮膚病変についての学会での講演も多数あり。
「痔=手術」という肛門医療業界において、痔の原因となった「肛門の便秘」を直すことによって「切らない痔治療」を実現。自由診療にもかかわらず日本全国や海外からも患者が訪れている。大阪肛門科診療所(旧大阪肛門病院)は明治45年創立の日本で2番目に古い肛門科専門施設でもあり日本大腸肛門病学会認定施設。初代院長の佐々木惟朝は同学会の設立者の一人である。
2017年10月には日本臨床内科医学会において教育講演を行うなど新しい便秘の概念を提唱。