当院受診でメリットの多い患者さん、少ない患者さん
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(2019年5月6日加筆修正)
ここ数年は夏でも長袖を着ている院長の佐々木巌です。
当院は健康保険の効かない自由診療です。
診療費は保険診療に比べて高額です。
初診の方の診察代は3万5千円くらい、お薬代は別に頂戴しています。
だから、と言うわけではないのですが、当院は手術を避ける技術を大切にしています。
痔は良性疾患ですから、付き合い方さえ間違えなければ「痔のせいで」死ぬことはないはずです。
でも、手術しなくても良いということと、快適に過ごせると言うことは別問題です。
症状が死ぬほど辛いとしたら、当院の提案なんて無意味、手術の方がマシですよね。
そういう風に、大阪肛門科診療所は手術しないで、できるだけ快適に過ごせるように提案をしているのですが、せっかく当院を受診してもメリットを受けることのできない患者さんもおられます。
それはどういう方なのか、逆にどうしたらメリットの多い受診になるのかな?・・今日はそういうお話です。
この記事の目次
新しい考え方を受け入れる気持ちのない人
自分自身の考え方・知識を変えるつもりがない方が時々おられます。
私たちの考え方をお話ししても、受け入れてくださらないのです。
確かに私たちの便秘に対する考え方は、世間一般で言うと(そうじゃなくても?)一風変わっています。
否定しません。
ですから色々と説明するのですが、それを分かろうとしない方、と言ったら良いでしょうか。
パターン1
例えば、診察の後の会話で
「便が直腸に残っていますね。普段から、気付かないけれど直腸に便が残っていると思いますよ。」
「今日はスッキリしませんでしたが、普段はもっとちゃんと出ます。」
「その『ちゃんと出た』かどうかが分からないから、おしりが悪くなるというのが、私たちの考えなのです。」
「いいえ、ちゃんとスッキリします。」
・・ここまではよくある会話なのですが、ここからが問題です。
「ご自身のスッキリと、直腸がカラッポかどうかは別問題ですよ?」
と申しあげた時、
「いいえ、自分で分かります。」
とおっしゃる方には、私たちがアドバイスが届きにくいのです。
ご自身の思い込みから逃れられない状態なのか、それとも私の説明が分かりにくいのでしょうか。
いずれにしてもこの状況では、患者さんが「自分でスッキリと感じている=直腸はカラッポ」という主張を曲げなければ、私はこれ以上のアドバイスができません(汗)。
ほとんどの方は、最終的に私たちの考えをお伝えできるのですが、中には最後まで狐につままれたような顔をしておられる方もおられます(苦笑)。
そんなときは、是非
「え?そうなの?なになに教えて?」
と新しい考え方を受け入れてみてくださいね。
パターン2
すこし形は違うのですが、ご自身のお話だけに集中しこちらの説明は全く聞いておられない患者さんもおられます。
ずーっとご自身の辛かったお話しをなさっていて、途中で私が治療につながるアドバイスを申しあげても、
「ええ、そうなんです。」
など適当な相づちを打って、すぐにご自身のお話に戻るのです。
全く耳に入っておられないご様子です(笑)
こういう方は大抵はご自身の考えの中で、グルグル同じところを回っておられて、同じことを何回もおっしゃっています。
グルグルから脱出することができずに、困って受診なさったはずなのに、やっぱり同じようにグルグル回っておられるのですね(笑)。
もちろん辛かったコトを吐き出すことも大切なのですが、吐き出しただけで終わっちゃったら何しに来たか分からないですからね。
こういう方は、どこかで気付いてこちらのお話しに耳を傾けてくださると、そのグルグルから脱出する為のアドバイスができることも多いです。
受診の時には、「話して聞いて」をバランス良くやってみてくださいね。
自分で努力しない人
申し訳ないのですが、当院に限らず治療には大なり小なり努力が必要な事が多いです。
その努力を、しない、できない人は、せっかくアドバイスをしてもちゃんと活かせないように思います。
パターン1
まず、ご自身の持つ悪い習慣を止めるつもりがないという方です。
私たちの考えって、
「手術の前にやるべきことがあるでしょ?それをやりましょう」
ってことなんですけど、もっと言うと
「薬で治療する前に、もっとやるべきことがあるでしょ?」
「自分でできることがあるでしょ?それはちゃんとやった?」
「自分でできることをやらないと、薬も効かないですよ?」
ってことなんですよね。
その代表が飲酒の習慣です。
私もお酒は嫌いじゃないですから、全否定はしませんよ(笑)。
でもね、飲むんなら「自己責任」ですよね。
例えば排便の時の出血が止まらない方にはお酒を「抜く」ようお話しします。
「控えて」ではなく「抜いて」ください、なのです。
これは自分自身の経験上、酒を減らすのは抜くよりも困難だと信じていることと深い関係があります(笑)。
が、もちろんそれだけではありません。
「キレイに抜いたら血は出ないのに、ちょっと飲むとすぐ出るねえ。」とおっしゃった患者さんが多かったからです。
逆にキレイに抜かずに、チョコチョコ飲んでいる方から「なんで血は止まらないんだろう?」と聞かれたときには、「お酒をきっちり抜いた方が良いですよ。血が止まってからだって酒なんて飲めるんだから。」と申しあげています。
ご参考になれば(笑)。
パターン2
「誰かやってくれ!」という方もちょっと難しいです。
治療は自分の仕事ではない、と思っておられるのか、自分自身は何もやらず人任せの方。
任せる人は、私たちだったり、ご家族だったりします。
もう10年以上前の手術を受けた患者さんで、こんな方がおられました。
手術のキズの手当てをお教えしようとしたら「家内に言ってください。家内にさせるんで。」とおっしゃるのです。
ご自身の身体に無責任というか、無関心というか。
なんでウチを選んだんだろ?
残念ながら、こういう方に限って文句が多いのです。
「ご自身の手当てなんだから、自分でやって上手くなれば自分がラクなのに。」と、ものすごく疑問でした。
良く言えば、奥さんを信頼しておられる、と言うのかも知れません。
でも、正直に言うと「奥さんが保護者みたいやな(笑)」と思ってしまいました。
私は自分自身が患者さんの保護者にならないようにしています(笑)。
患者さんにやってもらうようにしています。・・やらざるを得ないように追い込んでいるという解釈も(笑)。
当院の患者さんは、ご自身で責任を持ちましょうね。
100%を求める人
100%って、難しいのですよ。
何に100%を求めるか、人によって色々あるようですが、これまで良く遭遇したのは以下のような方々です。
- 隙のない理論や完成形が好きな人
- 完璧な治癒を求める人
- パーフェクトなサービスを求める人
それぞれについて解説してみますね。
隙のない理論や完成形が好きな人
以前よく遭遇した誤解なのですが、
「自由診療なんだから、何でも知っていて何でもできるんでしょ?」
という考え方の人です。
そもそも私は「医学なんて人間の身体についてまだまだこれっぽっちもわかっちゃいない」という立場で診療していますから(苦笑)、カンペキや完成形を求められると全然イメージが違います。
どちらかというと、「ご自身に合ったやり方はどういう方法なのか、試しながらご自身の身体に聞いてみましょう。このやり方が良いのかな?それともあっちのやり方が良いのかな?」というスタンスの診療です。
手探り、と言う方が分かりやすいかも知れません。
隙のない理論なんてとんでもない、隙だらけです(笑)。
当院を継いだ19年前、10年前、現在と、経験を積むにつれて、治療方法、基本方針さえ良いと思った方向に変わって来ました。
間違っていると思えば、別のやり方を試しながらこれまでやってきました。
今も完成形のつもりはありません。
もっと進化したいのです。
また、私は知ったかぶりが嫌いですので、知らないことは知らないと言うようにしています。
隙のない理論、完成された治療法を求める方にとっては「頼りない」と映るかも知れませんね(苦笑)。
逆に、当院の提案する一風変わったアドバイスを試しながら、一緒に考えてくださる方は私たちとウマが合うと思います。
そういう方は当院を受診するメリットが大きいと思います。
完璧な治癒を求める人
例えば赤ちゃんのような肛門になりたい人や、メインテナンス・フリーを求める人にはご満足いただけないことが多いかも知れません。
手術でなら一時的に満足してもらえることもあります。
いや、満足と言いつつ、それでもどこかで妥協してもらっているのだと思います。
たまに手術した痕が分からない位にキレイに治ってしまう人もいますが、それが全員だとは決して言いません。
赤ちゃんみたいな肛門、というご要望は手術でも実現できないことが多いわけです。
基本、若返るしかない(笑)。
そもそも赤ちゃんの時にご両親からもらった新品のオシリを、ずーっと使って傷めつけて診察に至ったわけです。
治療したって、仮に手術したって新品のオシリにはならないですよね。
クルマで言うと中古車です。
新車のつもりで乗ってたら、また必ず壊れますよ。
それも新車の時よりも早く壊れます。
あたりまえですよね。
メンテナンスが必要なんです。
メンテナンスを怠ると(これをメンテナンスフリーと言うのでしょうか?)長持ちしないと思うのですね。
そういうわけで、治療にはある程度の妥協を許す心、手入れをする意識を持っていただくのが良いと思います。
パーフェクトなサービスを求める人
ホテルのようなフロント、ゴージャスな内装に、コンシェルジュみたいなスタッフがいて、すごくスマートなサービス・・みたいな期待をする方、ごめんなさい。
大阪肛門科診療所はそういう施設ではありません(笑)。
もっと大阪くさい親しみやすさがウリの肛門科です。
当院の方向性は、明るくて、フレンドリーで、笑顔の肛門科です。
スマートよりもフレンドリーを、高級感よりも明るさを優先しています。
そして、設備投資するよりも、設備の不足を大阪らしく笑顔で補っています(大阪らしくケチってるだけ?汗)。・・・そうは言っても、以前よりは大分こぎれいになりましたけどね。
もう、これは何が良いと考えるか、好みの問題ですね。
共感してもらえると嬉しいです(笑)
さいごに
色々書きました。
でも、こういったことは全然特別なことではありません。
誰でも大なり小なりこういう傾向を持っています。
もちろん私もそういう部分があると思います。
それでも結構ですよ。
大丈夫です。
私、怒ったりしません(笑)。
でも、事前に分かっておくと、ちょっと参考になるかな、と思って書いてみました。
大阪肛門科診療所 院長。 平成7年大阪医科大学卒業。大学5年生の在学中に先代の院長であった父が急逝(当時の名称は大阪肛門病院)。大学卒業後は肛門科に特化した研修を受けるため、当時の標準コースであった医局には入局せず、社会保険中央総合病院(現 東京山手メディカルセンター)大腸肛門病センターに勤務。隅越幸男先生、岩垂純一先生、佐原力三郎先生の下で3年間勤務、研修。平成10年、院長不在の大阪肛門病院を任されていた亡父親友の田井陽先生が体調不良となったため社会保険中央総合病院を退職し、大阪肛門病院を継承。平成14年より増田芳夫先生に師事。平成19年組織変更により大阪肛門科診療所と改称し、現在に至る。