大阪肛門科診療所の診療ポリシー
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当院は自由診療です
(2019年5月11日加筆修正)
院長の佐々木巌です。
当院は自由診療です。
健康保険が効きません。
つまり保険証も使えませんし、医療に対する公的扶助を利用できません。
保険診療に比べて高額です。
平成29年現在の診療費を書いておきます。
初診の診察料は3万5千円くらい、薬代は別に頂いています。
通常は診察料と薬代の合計で3万5千~4万円くらいです。
病状・ご希望・次の受診時期によりこれよりも薬が増える場合もあります。
再診の方は診察料が1万円くらいです。
特別な処置をした場合には処置料が加算にされます。
さらに詳しい情報は、以下の記事をご参考に。
当院の診療ポリシー
こんな高い診療費ですから、「なにか秘密があるんだろう」と思って受診する人もいます。
特別な薬を使っているのだろうとか、手術が特別に上手いんだろうとか。
そうですね、確かに特別な薬もありますし、手術だって得意なつもりです。
でも一番意識しているのは、「正しい知識をお伝えすること」です。
つまり
「痔って意外に切らなくても治るんだ!」
ということ、あるいは
「痔だからって必ず治さなきゃいけない訳じゃないんだ!」
ということです。
これを当院は「手術を避ける技術」と表現して大切にしています。
手術を避ける技術を大切にする理由
若い頃の私は、疑問に思っていたんです。
「どうして当院は他所の肛門科みたいに手術件数が増えないんだろう・・」って。
当時の私は、手術治療が絶対正義と思っていました。
「最良の治療は手術である、最後にはいずれ手術するのが良い」と考えていたのです。
でも、よく考えてみたら、
「手術してください!」
と言って来院した患者さんに
「これは手術しなくても治る病気だから。」
と何十分もかけて説明してたわけですから(笑)。
そりゃ手術件数も増えるわけないです。
最初の「手術が最良の治療」と考えていた私から、最近の「手術を避ける技術を大切にする」私への変遷を思い出してみました。
まず血栓にはじまって
「手術しなくても治る病気」はじめの例は血栓性外痔核という病気です。
突然イボが発症し、非常に痛いことが多い病気ですが、普通は時間がたてば治ります。
ただ、非常に痛みが強い場合には手術を検討してもよいとされています。
痛みに耐えかねた患者さんは「もう手術に違いない」と観念して受診されるのです。
こういった患者さんが来て「手術してください」と言われたら、普通は手術になりますよね。
患者さんは手術治療に納得しているし、(見かけは)希望しているのです。
その方が医療機関にとって収入になり、手術の実績にもなります。
しかも手術が必要な理由の説明も不要でラク。
教科書的にも大抵は「症状が酷ければ手術を検討する」と書いてあるし。
でも、私はどうしても納得出来なかったんです。
患者さんが心の底から手術を望んでいるとは思えなかったのです。
だから、手術しない場合と手術した場合で今後どうなっていくのかの素直な予想を説明した上で、患者さんに選んでもらうようにしたのです。
すると、ほとんどの方は、手術しないで治療することを希望するのです。
それでも手術を希望する方に
「じゃ、手術を受けてどうなりたいですか?」
と尋ねると、大抵は
「二度とならないようにしてください」
という返答なのです。
血栓性外痔核の場合は手術しても繰り返し起こります。
特に便通が悪い場合では、すぐに再発する人もいます。
「二度とならないようには出来ないですね、あなた次第です」
と説明すると、
「・・それなら手術はやめます。でもこれからどうしたら良いのか教えてください」
とご希望になるのです。
こういった経験から、見かけは手術希望の患者さんでも、心の底では手術を希望していない人が多いと学びました。
次に裂肛
その次に裂肛(切れ痔)の治療で同じような事に直面しました。
裂肛とは、便で肛門にキズができる病気です。
酷くなるとやはり手術でなければ治せなくなります。
手術が必要な裂肛でも、絶対に手術したくない患者さんがおられます。
そんな方の典型的なパターンがあります。
しばらく調子が悪く通院し、あるときからぱたっと来なくなる。
そして何ヶ月かしてまた困ってやってくる。
話を聞くと、来なかった間は調子が良かったとのこと。
肛門を診察しても極端に悪化はしていない。
本人が希望しないのに手術するわけにもいきませんのでそのまま様子を見る。
そうやって何年も様子を見ている。
というパターンです。
数年後に結局手術になる方も多いです。
しかし困った?ことに、私が最初に手術しないと治らないと判断していたケースでも、長く見ていると治ってしまうケースがあるのです。
素直に「良かったねえ」と思いました。
そして、手術でないと治せないと判断した自分の診断基準が変わってゆきました。
現在では、「手術の前にまだやれることが残っていないか?」を真剣に考えて、説明するようになりました。
その結果手術を希望して来院した患者さんにも、まずは手術以外の治療法を試みることを提案するようになりました。
とうとう脱肛も、どうする痔瘻
このような流れで、脱肛も痔瘻も手術をせずに経過観察している患者さんが増えてきました。
脱肛でも痔瘻でも、仮に一生は逃げ切れない病状だとしても、それでも先延ばしを望む方が多いことに驚きました。
「逃げ切れない」と書きましたが、当院の場合はなにも医者が宣告するわけではないのです。
患者さんから「もうラクになりたい」と相談があったら、そして、ラクになるための方法が手術しかなければ手術となる、というだけです。
ごく普通ですが(笑)。
ただ、炎症があって活動している痔瘻の場合は、仮に患者さん自身に辛い症状がない場合でも手術の方が安心だと考えています。
痔瘻ガンの心配をするからです(後で書きます)。
基本的に痔は死んでしまう病気ではないので、手術するかしないかは患者さんの自由です。
手術しない方をサポートすることも、重要な仕事と位置づけてやっています。
その姿勢を言葉にしようと考えて思い浮かんだのが「手術を避ける技術」という言葉です。
手術を避ける場合の注意点
さて、今度は少し注意点です。
手術を避けて、痔と付き合おうとする人に共通してお願いする事があります。
それは「定期的に大腸の検査を受けること」です。
現在なら大腸内視鏡検査です。
痔の症状と大腸の病気はよく似ていて、大腸の病気の見逃しが多いのです。
「痔だと思っていたらガンだった」人の話は、誰でも一度は聞いたことがあると思います。
「出血が真っ赤だから大腸ではなくて、痔だ」
とか、色々と理由をつけて大腸検査を避けようとする方もおられます。
でも後からガンが見つかったらきっと後悔するはずです。
後悔しなくてすむように、怖い病気では「ない」ことを確認するために、調べて欲しいのです。
あと、痔瘻ガンについて。
痔瘻は痔瘻ガンを発症する可能性があります。
この痔瘻ガンという病気は、診察や検査だけで早期発見することができません。
手術せずに様子を見る人にはその点を理解していただく必要があります。
なにを理解するかというと
「痔瘻ガンが発症しても、『そんなの聞いてない』はナシですよ。ご自身の判断の結果だと受け入れてくださいね。」
という意味です。
それが納得出来ない方には手術をお勧めしています。
まとめ
今回は当院の診療ポリシーである
「正しい知識をお伝えすること」
「手術を避ける技術」
についてお話ししました。
大阪肛門科診療所 院長。 平成7年大阪医科大学卒業。大学5年生の在学中に先代の院長であった父が急逝(当時の名称は大阪肛門病院)。大学卒業後は肛門科に特化した研修を受けるため、当時の標準コースであった医局には入局せず、社会保険中央総合病院(現 東京山手メディカルセンター)大腸肛門病センターに勤務。隅越幸男先生、岩垂純一先生、佐原力三郎先生の下で3年間勤務、研修。平成10年、院長不在の大阪肛門病院を任されていた亡父親友の田井陽先生が体調不良となったため社会保険中央総合病院を退職し、大阪肛門病院を継承。平成14年より増田芳夫先生に師事。平成19年組織変更により大阪肛門科診療所と改称し、現在に至る。