痔の根本治療は痔の原因となった便通を治すこと
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最近ようやく自分が元皮膚科医であったことをハンディではなく、ラッキーだったと思えるようになってきた佐々木みのりです。
当院は自由診療です。
保険が効きません。
完全自費、完全予約制で診療を行っています。
だからというわけではないのでしょうが、色々な施設を回ってから「最後の砦」だと思って受診される患者さんも多いです。
遠方の患者さんもたくさん来られます。
多くの患者さんが「何年もずっと肛門科に通っているのに治らない」という悩みを抱えておられ、良くならないから色々な施設を転々として、それでも治らないから「痔は治らない病気」という認識を持っておられたり、「どこに行っても治らない自分の痔は相当ひどいのだ」と絶望されていたりします。
そのような患者さんが当院に来られて衝撃を受けられるのが便秘の診断です。
毎日出てるのに
下剤を飲んで毎日出しているのに
便秘という診断をされるわけです。
衝撃の診断です。😱
便秘の話は是非コチラの記事を読んで下さい↓
(普通の便秘とは違いますので・・・)
そして多くの方が一生懸命おしりを洗っていて、洗い過ぎで肛門周囲の皮膚がボロボロになっています。
良かれと思ってやってきたことが、かえって肛門に悪かったとは・・・とショックを受けられます。
痔の治療の正解は一つではない
痔の治療というと、ボラザG軟膏や強力ポステリザン軟膏などの痔疾薬(注入軟膏)が処方されることが多いでしょう。
またそれに加えて、毎日便が出ていない人や便が硬い人にはマグミットやマグラックスなどの酸化マグネシウム系の緩下剤が処方され、それを毎日ずーっと飲んでいる人もおられます。
それで切れ痔が治ればいいのですが、出始めの便だけは硬くて、それを出す時に切れてしまう、あるいは一旦切れ痔が治ってもまた切れる・・・の繰り返しで、結局月に1回は必ず肛門科に通って薬をもらって帰る・・・というパターンが多いです。
それを数年繰り返すうちに切れ痔(裂肛)が悪化。
あまりにも切れ痔が治らないから、ついに先生からは手術宣告が・・・
「切れ痔を悪化させないために
手術をしなくてもいいように
通院を続けてきたのに・・・
だったら今までの通院は何だったのか・・・」
とこぼされる患者さんも多いです。
「手術したくないから
悪化させたくないから
2週間に1回ずっと通ってたのに
さんざん通院したあげく手術だなんて・・・
これじゃあまるで飼い殺しだ」
とか
「悪化するのを待って手術に持ち込んでいるとしか思えなかった」
とまで言われた患者さんもおられます。
でも、その先生にしたら
出来るだけ保存治療で頑張って
それでダメなら手術を考えよう・・・
という治療方針だったのだと思うんですけどね💦
私たちだってそうしてますから。
まずは出来るだけ手術をせずに治らないか考え、治療をやってみます。
それで治らなければ
何をやっても日常生活に支障を来すくらい痔がひどいのであれば
最終手段として手術を考えます。
どこまで保存治療で頑張るか
どこでギブアップするかは
患者さんによって随分違います。
手術治療を提案しても
それでもまだ決心がつかず
頑張っている患者さんもいれば
最初から頑張らずに
手術治療を希望される患者さんもいます。
人それぞれです。
どっちが正しいとか
どっちが間違っているとか
そういう問題ではなく
ある意味、全部正しいんです。
施設によって
先生によって
診断も違うかもしれない。
提案される治療も違うでしょう。
何が正しいのか?
どっちが良いのか?
で選んでしまうと「正解探し」になってしまいます。
正解は一つじゃないし
人によって違うと思うのです。
だから
色々な情報によって混乱したり迷ったりしても
自分がどうしたいか
どうすれば自分が快適なのか
で決めれば気持ちもスッキリすると思います。
便秘治療は百人居れば百通りある
当院を受診された患者さんがよく言われる「今までとは全然違う治療法」というのは、ある意味、私たちが標準治療とは違ったことをしているということでもあり、ちょっと変わった肛門科でもあるからなんですが、まず、注入軟膏などの痔疾薬をほとんど使いません。
下剤を出すケースも非常に少ないです。
なぜなら痔になって受診される患者さんのほとんどが毎日便が出ているからです。
口から飲む下剤はお腹(腸)には効きますが出口(肛門)には効きません。
どこに便が停滞しているかで治療が違うので、私たちは最初から下剤を出すことは稀です。
なぜなら診察したら肛門や直腸まで便が下りてきていることを確認できるからです。
だからまずは出口(肛門)にアプローチします。
出口の便を出す治療をしてみて、それで便が毎日出ているようであれば下剤は必要ないと判断します。
もちろん患者さんによっては下剤が必要なケースもあります。
合う下剤も人によって違いますから、一剤一剤試し飲みしてもらって見つけていきます。
一発で見つかるケースもあれば、色々な下剤にチャレンジしてやっと見つかるケースもあります。
便秘治療は一人一人違うんですよね。
同じ坐薬でも、同じ下剤でも、使う量、使うタイミング、みんな違います。
生活スタイルも違うため、使用するタイミングも患者さんが不便しないよう、快適に生活出来るようなタイミングで使ってもらっています。
痔の根本治療は痔の原因となった便通を直すこと
私たちは痔の根本治療は手術でもジオン注射でも痔疾薬でもなく、痔の原因となった便通を直すことだと考えています。
いくら手術して痔を根治せしめても、また便秘をすれば何度でも痔を繰り返します。
便通を直すことによって痔の多くが改善または完治します。
手術やジオン注射が必要な痔は本当に少ないです。
手術をしても、ジオン注射をしても、便通は治りません。
便通を直さずに手術やジオン注射だけ受けても、また痔になります。
これは私たちが考えていることであって、この考え方が絶対正しいとか言うつもりもありませんし、押しつけるつもりもありません。
それに全ての患者さんに当てはまるわけでもないと思います。
だからこのブログも一つの意見として参考にして頂ければと思います。
標準治療でちゃんと治って別に何も困っていないのであれば私たちのような施設は必要ないと思いますよ。
でも多分、何か困ったことがあるから読んでおられるんですよね?
そういう人に伝えたいです。
痔だけ治さずに便通も一緒に直してね!!
診療所のセラピードッグ「ラブ」🐾
クイズ「ラブはど〜れだ?」
同じ色の犬ばかり集めてみました
元皮膚科医という異色の経歴を持つ肛門科専門医。現在でも肛門科専門医の資格を持つ女性医師は20名余り。その中で指導医の資格まで持ち、第一線で手術まで担当する女医は10名足らず。元皮膚科医という異色の経歴を持つため、肛門周囲の皮膚疾患の治療も得意とし、肛門外科の医師を対象に肛門周囲の皮膚病変についての学会での講演も多数あり。
「痔=手術」という肛門医療業界において、痔の原因となった「肛門の便秘」を直すことによって「切らない痔治療」を実現。自由診療にもかかわらず日本全国や海外からも患者が訪れている。大阪肛門科診療所(旧大阪肛門病院)は明治45年創立の日本で2番目に古い肛門科専門施設でもあり日本大腸肛門病学会認定施設。初代院長の佐々木惟朝は同学会の設立者の一人である。
2017年10月には日本臨床内科医学会において教育講演を行うなど新しい便秘の概念を提唱。