おしりの急な腫れ

自分自身の痔瘻が診断できなかった大阪肛門科診療所 院長の佐々木巌です。

言い訳するわけではないのですが・・
おしりに限らず、自分自身の身体に起きる異変ってなかなか冷静に考えることができないモノです。

数年前、自分自身が痔瘻になったときに、イヤと言うほど思い知らされました。

ヘタに知識があることが邪魔になって「オレに限って痔瘻なんて、絶対ない。ないない。あるわけない。」的に痔瘻を除外して考えていたことに、今更気付きます(苦笑)。

その時の記事はこちら

肛門科医が自分自身の痔瘻手術を決心したときのこと

今、これを読んでいるアナタも、もしかしたらおしりの異変が気になっているのかも知れません。

アナタは私よりも冷静になっていただきたいと思っています。

そして何より、早期に受診されて診断を受けられることを希望します。

もっとハッキリ言うと「この異変はガンではない」という診断を医師に受けてほしいのです。

肛門科医にとって一番怖いのは、「痔だと思っていたらガンだった」というパターンなのです。

よろしくお願いします。

急におしりが腫れる病気にはどんな病気があるのでしょう?

急に腫れる病気の代表は

1.血栓性外痔核
2.痔瘻・肛門周囲膿瘍

のふたつです。

1は保存治療が基本、2は早期に切開の処置が必要になることもありまして、両者は治療方針が全く異なります。

急に腫れたという方は早期受診が望ましいと考えます。

もちろん、急に腫れたとおっしゃる患者さんを診察するとこのふたつ以外の診断名になったことも少なからずあります。

今回はそういう経験を書こうと思います・・が、その前にひとつ。

実は「急に」と表現する時間単位というのは、人によってかなりばらつきがあります。

私にとって「急に」と言いますと、だいたい「ある朝起きたら・・・」くらいです。

しかしかつて、ある患者さんが「急に、この半年くらいの間に腫れてきた」とおっしゃったことがありました。

私はあまりの感覚の違いに尋ね直してしまいました。

「『急に』っていうのは『半年の間に』っていう意味ですよね?」

おそらく半年間が急に感じられるくらい、何十年も変わらない状況が続いていたのでしょう。

これらの「急に」を全部カバーしようとすると大変なことになると思うので、今回お話しするのは一般的に患者さんが「急に」とおっしゃる期間である「1週間以内くらい」で腫れてくる病気ということにします。

ざーっと考えてみますと、以下のような感じです。

血栓性外痔核
嵌頓痔核
脱肛
痔瘻
見張りイボ・皮垂(裂肛)
粉瘤
掻きすぎ

以下、それぞれの病気を紹介してみます。

血栓性外痔核

「ある朝、起きたら腫れていた」

「排便の後、半日くらいで腫れていた」

「飲酒中に痛いのでトイレで確認したら、腫れていた」

という症状が典型的です。

鋭い痛みを伴うことが多く、腫れのサイズは小豆大から指の大きさくらいまで様々。

患者さんは相当ビックリするようですが、手術しなくても治る病気です。

原因はうっ血とされていて、当院では排便の管理で治療しています。

詳しくはこちらをご参照ください。

手術しなくても治る痔、消えて無くなる痔、おしりの血豆「血栓性外痔核」

嵌頓痔核

血栓性外痔核の規模の大きなモノで、原因は血栓性外痔核と同様にうっ血と考えています。

典型的な症状は、これまた血栓性外痔核と同様で

「ある朝痛みで目覚めたら、どかんと腫れていた」

「排便の後、みるみる腫れと激痛がきた」

という感じです。

腫れのサイズは親指を超えるくらいからみかんくらいのものが多いですが、もっと大きなモノも。

手術しなくても治る「はず」の病気なのですが非常に痛みが強く、加えて元々脱肛を持っている方が多くそちらの治療も兼ねて、手術になる方も多いです。

たしかに、手術の方がラクかも知れません。

嵌頓痔核について詳しくはこちら。

嵌頓痔核について

脱肛(痔核)

痔核が大きくなって肛門からはみ出すようになると脱肛と呼ばれたりします。

はじめて脱肛するようになる「その時」は「急に」やって来ます。

痔核自体は徐々に大きくなってくるのですが、「ある時」を境に外にはみ出すようになります。

ある日の排便の時、または排便後に、ご本人にとっては「急に」腫れを自覚することになります。

一般的に無痛で、プニプニした軟らかいでっぱりです。

はじめて脱肛するようになった頃の痔核は、手で押さえると簡単に中に戻ってしまうでしょう。

治療方針は手術から付き合う治療まで様々ですが、痔核と付き合うときの注意はガンでないことを確認すること。

定期的な大腸内視鏡検査をお勧めしています。

痔核・脱肛について詳しくはこちら

いぼ痔(痔核・脱肛)について

痔瘻・肛門周囲膿瘍

さて、はじめにご紹介した、急に腫れる病気の代表選手です。

肛門が化膿する病気である痔瘻は、初期には肛門周囲膿瘍と呼ばれます。

化膿ですから膿がたまって腫れるわけです。

はじめに「なんかおかしいな?」という違和感からはじまって、大体2~3日から1週間くらいで腫れてきます。

普通は非常に痛いです、が、無痛の人もいます。

膿がたまっている部分を膿瘍と呼びます。

膿瘍内の膿による圧力が高いときは周囲を引き裂いてさらに膿瘍が広がる可能性が高い状態です。

そんな状態のときは、切開排膿と呼ばれる処置を行って膿を抜き減圧するのがセオリーです。

なお、痔瘻は長期間放置すると痔瘻ガンを発症するケースがあります。

痔瘻は治療するなら手術を選択する事になります。

痔瘻について詳しくはこちら

痔ろう(痔瘻)について

見張りイボ・皮垂(裂肛)

裂肛は肛門の中にできるキズですが、慢性化するにつれて周囲の皮膚が腫れてきます。

皮膚のたるみは一般に皮垂と呼んだりしますが、その中でも裂肛に伴ってできた皮垂は見張りイボと呼ばれます。

コイツが腫れる場合、

A.元々あった見張りイボが腫れてくる

B.いままでなかったものができてきた

の2つのパターンがありますが、いずれも原因は裂肛の病状悪化により炎症が強くなったためです。

多いのはAのパターンで、もともと皮膚のたるみがあったという方。

たいてい2〜3日で腫れてきて、大きさは1〜2cm位のことが多いでしょうか。

Bのパターンは少数ですが、以前からおしりに注意を払っている方ですね。

1週間くらいでごま粒〜米粒くらいの大きさのでっぱりができたとおっしゃる方が多かったです。

裂肛について詳しくはこちら

切れ痔(裂肛)について

粉瘤

粉瘤とは皮膚の良性腫瘍の一種です。

皮膚の下に袋状の空洞ができて、そこに垢など皮膚の老廃物がたまる状態です。

もともと小さな粉瘤があり、そこが化膿すると急に腫れてきて、痛くなります。

化膿した粉瘤は切開して膿を出す処置が必要です。

掻きすぎ

肛門そうよう症という病気があります。

肛門が痒い病気なのですが、掻くから痒い、痒いから掻くの悪循環にはまりがちです。

掻いていると皮膚に炎症が起こり、腫れた部分が出っ張ってくることがあります。

視覚的には大したことのない腫れでも、患者さんは自分で見ることは難しいので触って確認するわけですが、腫れている部分というのは見た目以上に出っ張って触れるモノなのですね。

「急にでっぱりを触れるようになった!」と心配して受診されます。

肛門掻痒症の原因ですが、直接の引き金は「掻くこと」です。

しかし、大半の方は便通の不調が根底にあり、便通を治さないと繰り返す傾向が強い病気です。

当院ではかゆみの治療と、便通の治療を同時に行っています。

肛門そうよう症について詳しくはこちら

おしり(肛門)のかゆみ〜肛門そう痒症、痔のかゆみ、肛門の皮膚病について〜

さいごに

今回は1週間以内くらいの期間で急に腫れてくる病気について紹介しました。

しかし、これ以外にも考えられる病気はあると思います。

「気付かずにいただけで、自分で思っているよりも以前からおしりは悪かった。実は長い時間をかけて腫れてきている」というのがよくあるパターンかも知れませんね(苦笑)。

今回紹介した病気以外の主な腫れを伴う病気についてはこちらをご参照ください。

いぼ痔とよく似た肛門の病気

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