産後の痔 〜授乳と治療のタイミング〜

(2018年9月6日加筆修正)

二人目出産後は産後すぐから子連れ出勤して、診察の合間に授乳をしながら仕事をしていた大阪肛門科診療所 肛門科女医の佐々木みのりです。

先日は妊娠中の痔について書きました。

以前の記事はコチラ↓

妊娠中の痔 〜手術は原則しない〜

今日は出産後の痔の治療について、今までの診療経験と、患者さんからのよくある質問にお答えする形で説明をしたいと思います。

妊娠中の痔治療との最大の違いは手術治療が可能だということです。

妊娠中、痔が悪化して「つらいから手術して欲しい」と患者さんが望んでも、妊娠中は原則的に手術は禁止です。

だけど出産後は手術出来ます!

ただ注意点が1つだけ。

授乳です。術後一定期間、授乳をやめてもらわなければなりません。

麻酔薬や痛み止めなどの内服薬が母乳に移行するからです。

赤ちゃんの月齢にもよりますが、術後3日くらいは授乳を中止してもらっています。

おっぱいを絞って捨ててもらわなければなりません。

どうしても授乳をやめられない、やめたくないという場合は、痛くても痛み止めを飲まずに頑張ってもらって、授乳を続けるという方法もあります😓

でもね、そこまで痔がひどくなければ断乳してから手術を考えてもいいんですよ。

何もあせって今、手術をしなくてもいいと思うのです。

生活に支障を来すくらい、
痛くて授乳も出来ないくらい
痔のせいで育児もできないくらい

切羽詰まった状況の場合は、授乳中でも手術せざるを得ないのですが、何とか騙し騙し付き合って行けるようであれば、焦って今、手術をしなくても、断乳して余裕が出来てからでも間に合います。

痔は良性疾患です。

どんなに痔がひどくても手遅れになることはありません。

だから手術は最終手段

便通を直し、保存的治療をやっても改善しないときに考えます。

何をやってもダメだ〜っていう場合に手術という選択肢が浮上します。

つまり、まとめますとですね・・・

大阪肛門科診療所では、授乳中かどうかに関係なく、まずは痔の原因となった便通を直してもらいます。

実は、それだけで痔が良くなる人が多いんですよ。

最初は手術希望だった患者さんも、2週間ほど便通治療をしてもらうと、痔の症状が全く無くなってしまって、手術を取りやめるということが多いです。

便通を直しても、
軟膏を使っても、
何をやってもダメ・・・

こんなんじゃ育児どころか、
生活も出来ない…>_<…

という場合に手術治療を選択します。

それにね、

産後半年くらい経つと、腫れがひいて痔が全然気にならなくなることも多いです。

だから慌ててその場でスグに手術を受けないで下さいね!

結構、産後の腫れは治ってしまうことも多いですから。

今まで20年以上、肛門科の診療をやってきて出産直後の駆け込み手術を受けた女性は数名だけ。

だから今でも鮮明に覚えています。

そんな患者さんのお話しです。

産後2ヶ月の赤ちゃんを連れて入院された20代女性患者さんの話

今から15年くらい前の話です。

まだ大阪肛門病院だった頃の話です。

当時は24時間年中無休で常に入院患者さんが居て、医師、看護師、守衛、清掃・賄いが24時間体制で働いていました。

だから、いつ受診しても手術を受けることが出来たんですよね。

当時は手術治療が根本治療で最善の治療だと、私たちも信じてやっていましたから。

今と随分、方針が違ったんですよね。

産後2ヶ月の女性患者さんが脱肛がひどくて授乳も育児も出来ないので治療したいと手術希望で来院されました。

でも・・・

毎日2〜3時間おきくらいに授乳をされています。

昼夜関係なく赤ちゃんは泣くし、手術するのはいいとして、術後、どうするよ〜😫

となりまして。。。

赤ちゃんと一緒に入院してもらったんです。

まさしく「子連れ入院」です。

授乳だけでなく、赤ちゃんのお世話も入院中にしなければならないので、本当に術後に自分のお尻のケアどころではなかったと思います💦

赤ちゃんをお風呂に入れるために、うちの子供たちが小さいときに使っていたベビーバスを家から持ってきてお貸ししました。

毎日、沐浴されてましたね。


授乳したいから痛み止めなどの薬も一切飲まず過ごされました。

入院手術は手術後の痛みがあまりないため、今でも手術後に痛み止めを飲まずに過ごしている患者さんも多いんですよ。

この患者さんも痛みは大したことないから大丈夫って、元気そうに過ごされてました。

ただ自分のお尻のことどころではなく、赤ちゃんのお世話で忙しそうでした。

赤ちゃんが夜中に泣いて他の患者さんに迷惑がかかっては困るから・・・ということで、一番端の大部屋(と言っても3人部屋だけど)に一人で入ってもらったのですが、他の患者さんたちが温かく見守って下さり、年配の女性が色々と手伝われたり、育児相談に乗ったりされてましたね。

当時から大阪肛門科診療所の患者さん達は本当に温かい人ばっかりだった。

当時入院は1週間。

その間、とにかく患者さんが赤ちゃんのお世話で大変な分、私たちで患者さんのおしりのケアを出来る限りやりましたね。

退院されて普通の経過で完治終了となりましたが、1つだけ、産後や授乳期に特有なことなのかな・・・と思ったことがあります。

むくみやすいのです。

授乳を経験された女性なら思い当たると思うのですが、授乳中って母乳がたまると、おっぱいも張ってきますし、首から胸にかけての血管がハッキリ分かるくらい浮いたり、貧乳の私でも巨乳になるくらい、普段と明らかに体が違いますから、お尻も同じようにちょっと違うわけです。

おしりも普通の人よりもむくみやすいなぁと感じました。

だからむくみや腫れが、傷が治ったあとに皮膚のたるみとして残りやすいです。

「キレイに美しく治したい!」という人には授乳中の手術はオススメしません。やっぱり体が普段と違いますもん。

それに自分のお尻の治療に集中できませんしね。。。

もう、よほど切羽詰まって育児に支障がある場合にのみ考えるべきだと思います。

それにしても、20代の女性患者さんだったのですが、母はたくましいなぁと思いましたね。

愚痴や泣き言一つ言わず、ただひたすら痔の治療と育児に追われていました。

それくらい痔がつらかったのでしょう。

今でも忘れられない患者さんです。

出産翌日に日帰り手術を受けて子連れ通院した30代女性患者さんの話

臨月になってからいぼ痔(痔核)が急に腫れて中に戻らなくなった患者さんでした。

嵌頓(かんとん)痔核で本当につらそうだったのですが、2週間くらいで腫れと痛みが軽減し、出産間際には、かなり良い状態になっていました。

ところが・・・

出産で赤ちゃんも出たけど、いぼも派手に出た

という状態になり、

出産の痛みよりも、会陰切開の傷の痛みよりも、 何よりも肛門が痛くて、 座ることも出来ない、 痛みで食事も喉を通らない、 こんなんじゃ、授乳どころじゃない!

というとで、なんと、出産翌日に受診されて 「今すぐ手術してほしい。」 と懇願されました。

診察すると・・・ 妊娠中の嵌頓痔核の3倍くらい腫れ上がってました😱

その大きさはリンゴくらいありました。

これじゃあ、座れないよね・・・
言葉も出ないよね・・・
授乳どころじゃないわ・・・

ということで、緊急手術となり、昨日出産したばかりで、まだ産婦人科に入院中だったため、産院に戻って行かれました。

出産直後なので、まだ母乳も出ないし、母乳が出るようになる前に痔を治そう、ということで手術に踏み切りました。

日帰り手術だったのですが、術後の痛みもほどんどなく、ご本人は

「これくらいの痛みだったら全然、痛み止め飲まなくても耐えられます。腫れていたときの方がもっと地獄の痛みだったし、今の方がずっとずっと楽です!」

と笑顔で痛み止めも飲まず最後まで過ごされました。

幸い、妊娠中から便通の管理は自分でバッチリ出来ていたので、産院でも便秘することなく赤ちゃんと退院。

そのあとは週に1回の通院は生後1週間の赤ちゃんを連れて母乳をあげながら通われました。

最後6ヶ月くらいの赤ちゃんを連れてこられる患者さんは多いのですが、生後1〜2週の赤ちゃんって、滅多にお目にかからないので、すごくかわいくて、自分の子供たちのことを思い出しましたね。

待合室で授乳されたり、オムツを替えられたりされても、他の患者さん達も嫌な顔一つせず、むしろ手伝っておられたり、お母さんがトイレに行っている間に他の患者さんが赤ちゃんを抱っこされていたり、患者さん同士でフォローして下さるので助かりました。


赤ちゃんは患者さんからも人気者でしたね。

日帰り手術の場合、術後の通院が2ヶ月くらい続きます。

その間、週に1回の通院をしていただくのですが、生後1週目から2ヶ月までって、本当に赤ちゃんの成長と変化が著しくて、毎週、見る度に赤ちゃんが大きくなっているのが分かり、自分の子供同様、その成長に感動しましたね。

完治終了する頃には赤ちゃんが私の顔を見て笑ってくれるようになってました。


手術して本当に良かった
出産翌日にしてもらって助かった

と何度もお礼を言われ終了となりました。

産後の手術は出来れば卒乳後に

以上、産後すぐに手術を受けられたケースをご紹介しましたが、原則、卒乳してからの手術をオススメしています。

切羽詰まってなければ卒乳まで待った方がいいです。

治療に集中できますし、術後に必要な薬も使えます。

最近は働く女性が多く、産休・育休が終わって、仕事に復帰する前に痔を治したいという希望で、早めに卒乳して手術を受けに来られる方が増えてきました。

手術してすぐに治るわけではないので、ある程度、通院のことも考えて受診されています。

仕事に復帰してから術後の通院が出来る方はいいのですが、忙しくて通院の時間が取れない場合は、復帰までに通院まで終わっているほうがいいです。

手術しっぱなしでは、ちゃんと治りません。

術後のケアはとても大切なので、通院のことを考えて手術を受けて下さいね。

入院手術だと1ヶ月くらい、日帰り手術だと2ヶ月くらい通院が必要です。

通院は週に1回です。

もちろん、手術せずに痔とうまく付き合っていただいてもいいんですよ。

手術するかどうかは十分考えてから決めてくださいね!


診療所のセラピードッグ「ラブ」🐾
犬の成長は早いです
生後6ヶ月で成犬となります🐶
そのあと、大きさはあまり変わりません

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