学校でも排泄の教育をするべき、と話した高齢男性

大阪肛門科診療所 院長の佐々木巌です。

今回は先日当院を受診された高齢の男性のこと、そしてこの方がおっしゃったひとことについてお話ししたいと思います。

便栓塞(=糞詰まり)になって当院を受診

この方は便栓塞になって、当院に受診されました。

ちなみにこの方が当院を選んだ理由は、以前手術を受けたことがあったから。

私の父が院長をしていた頃のことですね。

便栓塞とは俗に言う糞詰まりのことです。

出残り便秘®・鈍感便秘®の症状のうち、最も辛いもののひとつに便栓塞があります。

お年寄りになるほど、出残り便秘®鈍感便秘®の方は多くなる印象で、もちろんこの方も出残り便秘®+鈍感便秘®でした。

出残り便秘®・鈍感便秘®についてはこちらをご参照ください

出残り便秘®®・鈍感便秘®® 〜その残便感は便秘かもしれない〜

便栓塞(=糞詰まり)になる仕組み

便栓塞になるのは以下のような仕組みです。

出残り便秘®の方は排便してもカラッポになるまでスッキリ排便することができません。

結果、肛門付近に便が出残ってしまいます

肛門付近に取り残された便は、次の排便までに水分が吸収されて固まります。

翌日、この固まってしまった出残り便の上に新しい便が降りてきます

通常ならこのとき排便が起こり「先端が硬い便」が排出されます。(これが裂肛=切れ痔の原因になったりもします)

ところが、運悪く排便が起こらなかったらどうなるでしょう?

肛門付近にはさらに多量の便が溜まります。

先端の一番古い便の上に新しい便が積み上がり2階建て状態のまま、次の排便までさらに水分が吸収されて行きます。

出残り便秘®の人は便意が鈍感になっていることが多く、これを鈍感便秘®と呼んでいます。

鈍感便秘®の人は便が降りてきたときには少し便意を感じるもののすぐに慣れてしまいます。
お年寄りは特に鈍感の傾向が強いようです。

そうやって「そのうち出るだろう・・」と思って待っていたら、いつの間にか自分では出せないくらいの大きくて硬い便の塊ができあがる、と言うわけです。

便栓塞の症状

便栓塞の一番代表的な症状は「出したいのに出せない」というもの。

しかし高齢の患者さんの中には感覚が鈍感になりすぎてしまい便意を全く感じていない人もいます。

次に「肛門の痛み」、それも激痛の方が多いです。

肛門がとんでもない大きさの塊に常に圧迫されている状態が何日も続くのですから非常に辛い状態です。

あと意外に多いのが「失禁」です。

肛門の近くは硬い便の塊で満員なのにそれでも上から新しい便は流れ込みます。

新しく軟らかい便は硬い便の隙間をすり抜けてオーバーフローしてしまうのです。

この症状は不便でもあるのですが、むしろ精神的なダメージが大きいのが問題です。

非常に自尊心が傷つき、がっくり落ち込んでしまうのです。

便栓塞の治療は摘便

さて、便栓塞の治療はどうするのか?

自分で出せないのですから人の手を借りて出す、平たく言うと便を掘り出すのです。

これを摘便と言います。

摘便を軽視する施設もあるようですが、一般に肛門科専門の施設では医師自ら摘便を行うのが一般的です・・そのはず。

だって、私がこれまで出会った尊敬する肛門科医の先輩方は、みんな摘便が大変お上手でしたから。

というわけで私も先輩に倣って、若い頃から摘便は大切な技術と考えて来ました。

そもそも便栓塞が大変痛いことが多い病気ですが、摘便もまた大変辛い処置です。

処置中はほんとにかわいそうなんですよね・・

でも、ちゃんと出し切って元に戻った方が素晴らしい笑顔になるのを、これまで何度も経験しましたから、励ましながらがんばってもらって、処置をさせてもらっています。

麻酔をすれば良いかも知れませんが、麻酔によって重要な人体からの危険信号を見逃す危険が増えます。

当院のような肛門科だけの小さな施設では危険が大きいと考えて、通常では摘便で麻酔はしません。

摘便にも「リスク」があるのです。

患者さんのひとこと「排泄の教育をするべき」

もちろん、この高齢男性に対しても摘便を行いました

前述の通り、痛いのをがんばってもらい、肛門付近がカラになるまでやりました。

摘便が終わって、出残り便秘®鈍感便秘®の説明をして、深く納得されました。

そしてこれからさあ帰ろうと言う時に、この方が笑顔でおっしゃいました。

「こういう本当に役に立つお話は、ぜひとも学校教育に取り入れられるべきだと思いますよ。先日マスコミを賑わした森友学園がやっていた教育勅語なんかより、こっちの方が優先じゃないですかね?」

・・なんか話がデカいので、こちらも思わず笑ってしまいました。

でも、本当に教育に採用されたらいいのになあ。と思っています。

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