30年間イボ痔だと思っていたモノがイボ痔ではなく、不快な症状がただの洗い過ぎだった

(2019年5月12日加筆修正)

今日の患者さんは70代女性。

30年前からでっぱりがありイボ痔だと信じ、ボラギノールを毎日使い続け、肛門を清潔にしなければ病気になるのでは・・・と心配で受診されました。

今までの経過

30年前から肛門の穴のところにでっぱりがあり、イボ痔だと思ってボラギノールを毎日ずっと使って来られました。

イボがあって、その付近を清潔にしていることが良いと、これしかないと思い、ウォシュレットを使って毎回トイレで洗い、朝夕風呂に入り温めたりして努力もしています。

近くの病院を受診したら、何か出ているが痔ではないと言われた。

だけど寒い日とか、旅行など、でかけてウォシュレットのないトイレに行くと2〜3日でイボが硬くなってしんどいと。

将来、病気になって風呂に入れないような状態になったらお尻がどうなるのか心配になり受診されました。

現在の排便と習慣

昔から便秘だったそうで、かかりつけの先生からプルゼニドという下剤を毎日飲んで便を出しています。

下剤のおかげで1日1回毎日排便があります。

下剤を飲まないと出ないそうです。

ウォシュレットは1日に何度も使っています。

排便後に肛門を洗浄するだけでなく、便が出にくいため、洗いながら水圧で刺激して便を出しています。(ウォシュレット浣腸)

それだけではありません。

排便もしてないのに、トイレに入って肛門を洗浄します。

またビデも使って外陰部も1日5回くらい洗っています。

こんなに洗ってるのにトイレットペーパーで拭くと便が付きます。

付かなくなるまで何度も拭いたり洗ったりを繰り返します。

入浴時にもボディスポンジで肛門を洗い、シャワーを直接当てて洗い流しています。

診察の結果

患者さんがイボ痔だとずっと信じていたモノは皮膚のたるみ「皮垂(ひすい)」でした😓

よくある勘違いですね。

その皮垂の奥には切れ痔(裂肛)が治った跡がありましたから、時々切れ痔を繰り返して来たのでしょう。

今は切れ痔はありません。

もちろん外にも中にもいぼ痔(痔核・脱肛)はありません😅

一度かかった病院で「痔ではない」と言われたのは正解ですね。

痔だと言われて手術を勧められなくて良かったです。

そして・・・

洗い過ぎで肛門周囲の皮膚はシミとホクロだらけで洗った部分だけクッキリと赤くなり色素沈着もありました💦

炎症を起こした皮膚はつっぱって伸びなくなっています。

肛門は狭くないのですが伸縮性のない肛門になっているせいで裂けやすくなっています。

 

肛門の中に指を入れると便があります。

今日は既に3回も排便があったのに・・・です。

しかも残っている便は下剤がよく効きすぎて、かなりの軟便です。

「明日は先生に診てもらうから失礼の無いようにキレイに出しておかなくては・・・」と、いつも1錠だけ飲んでいたプルゼニドを昨夜は2錠飲んだそうです💦

効き過ぎて下痢になってたんですね💦

便を出す坐剤を入れてトイレ行ってもらい、そのあともう一度診察です。

キレイにすっきり出し切れていました✨

治療はシンプルです。

  1. 温水洗浄便座を含め肛門や外陰部を洗うことを禁止
  2. 坐剤で残便を出し切る
  3. Sザルベを肛門周囲と中に塗る

次回の診察は2週間後です。

治療経過

「以前から行こうかどうか迷っていましたが決心が付かず息子に後押しされてやっと受診させてもらって良かった・・・。」

と喜んでおられました。

そして多くの患者さんと同じように大きな考え違いを知り、ビックリされていました。

「出残り便秘®を抱えていたとは・・・夢にも思われなかったようです。

便は出たのに坐剤を入れてまた出すなんて・・・と最初は戸惑っておられました。

でも排便後に坐剤を入れると、確かに同じ量の便が、また出ます。

坐剤を入れると何度か便が出る時があるので、朝から出かけるときは坐剤を入れずに出かけて夜に入れるようにしていたそうです。

お風呂でのシャワーも当てないようにしています。

説明が分かりやすかったので理解でき、毎日実行できたそうです。

そうして治療をしていくうちに

「出てくる物が汚物でなくなりました。

何か、製造しているような、大切な物のように思えてきました。」

と患者さんが言われたんです。

この言葉、私が感動しました。

2週間後の受診

坐剤も毎日入れてスッキリ排泄できるようになっていました。

肛門周囲の皮膚はキレイになっていると思いきや・・・

なんと、受診されてからナプキンを当て始めたため、ナプキンでかぶれて、くっきり赤くなっています😱

おしもの悩みで高齢者がナプキンや尿漏れパッドを当てることが増えていますが、これらのものによる「かぶれ」が意外に多いのです😰

生理用品は化学物質を含まないナプキン「ナチュラムーン」をオススメしています。

この患者さんにも使っているナプキンが合っていないようなのでナチュラムーンに変更してもらいました。

不快な症状は全く無くなっていますし、坐剤も上手に使えるようになっています。

あとは自己管理で通院も必要ありません。

完治終了とし、次回は1年後にお尻健診で来て頂くことにしました😊

自己診断は、あてにならない

この患者さんは30年間、イボ痔だと信じていた物が痔ではなかった・・・という半分笑い話ですが、その間ずっと使って来た痔の薬のことを考えると、あまり笑ってもいられません😓

この患者さんだけではありません。

患者さんが「痔だ」と言ったものが痔ではないという経験をたくさんしているので、自己診断はあてになりません。

そして必要のない痔の薬を使い続けてステロイドによる副作用が出てしまったり、薬でかぶれて皮膚炎を起こしていたりという、誤った自己治療によるトラブルも多発しています。

まずは肛門科を受診して痔であるかどうか診断してもらいましょう。

ところが困ったことに、専門外の先生だと痔ではないものを痔だと診断したり、手術なんて必要ないものを手術だと診断することがあるため、肛門を専門にしている先生にかかってくださいね。

看板に「肛門科」と書いてあっても専門とは限りません。

かならず医師の経歴を確かめて、肛門専門施設での研修や勤務経験があるかどうかを見て下さい。(見学はダメ)

コチラの記事を参考に探して下さい↓

肛門科の専門医の探し方・選び方〜期待外れにならないために〜

肛門科の女医とは?女性肛門科とは?

洗っている人ほどお尻がキタナイという悲しい現実

この患者さんのように70代以上の人の方が念入りにお尻を洗っているケースが多いです。

昔は洋式便所すらなく、当然、肛門を洗うという習慣なんて無かった時代を長く生きておられたはずなのに・・・です😓

「お尻をよく洗って清潔に」と肛門科でも指導していた時代があったため、その古い指導を真面目に守り続けている患者さんもおられます。

衛生状態が良くなって病気が減った一面も確かにあるでしょう。

ですが時が経つにつれ洗い過ぎによる弊害が出て来て、肛門科でも「温水便座症候群」という疾患が提唱され、洗い過ぎに警鐘を鳴らすようになったのが2000年頃。

最近は10年以上にわたり長期使用した患者さんのお尻を診る機会が多くなり、さらに様々な病変が増えています。

そして悲しいことに洗っている人ほどお尻がキタナイです😰

皮膚の色が洗っている部分だけクッキリ変色しています。

ホクロやシミなどが多発したり、炎症を起こした皮膚は硬くなって伸縮性が無くなるため、ちょっとしたことで裂けやすくなり肛門周囲に傷が多発します。

そのような皮膚障害についてはコチラの記事をお読み下さい↓

温水便座症候群 〜おしりは洗えば洗うほど皮膚が荒れる〜

というわけで・・・洗うのもほどほどに。

そもそもスッキリ排泄出来ていれば紙で拭くだけで十分キレイになるので洗う必要がありません。

洗わなければキレイに出来ないのは便が残っている証拠。

洗う前に排泄を見直しましょう。


診療所のセラピードッグ「ラブ」🐾
犬も洗い過ぎると皮膚病になります🐶
犬も便がスッキリ出てないと
お尻を拭いてもキレイに拭けません💦

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