繰り返すお尻のかゆみの治療に難渋した一例

(2018年10月15日加筆修正)

今日の患者さんは40代女性。

通院してもなかなか治らない肛門のかゆみで困り受診されました。

今までの経過

5年前から肛門がかゆくなった。

近くの病院を受診したが、肛門の診察は初回の1回のみで、2回目からは薬だけ出してもらうことの連続だった。

塗り薬をもらったが改善せず、どんどんひどくなってきたため病院を変えようと思って受診した。

現在の排便と生活習慣

便は毎日出ています。

それどころか必ず1日2回は出ます。

出てくる便は軟便です。

下剤は飲んでいません。

トイレットペーパーで拭くと便が付くので、いつもウォシュレットを使ってお尻を洗浄しています。

ビデも使っています。

お尻を拭くときはゴシゴシこすって3回くらい拭いています。

お風呂でも洗浄剤の泡を付けて肛門を洗い、直接、肛門にシャワーを当てて洗っています。

診察の結果

肛門そう痒症でした。

いぼ痔(痔核・脱肛)や切れ痔(裂肛)などはありません。

かゆくて掻きむしっているので肛門周囲の皮膚はボロボロです。

しかもウォシュレットで洗っているから肛門周囲にトイレットペーパーが付着しています。

皮膚は浮腫状に腫れ、肛門のシワが盛り上がり、まるで「いぼ痔」のように見えます。

シワに沿って亀裂もあります。

肛門に指を入れて診察(指診)すると便があります💩

今日は2回も出たのにです💦

残っている便は軟便です。

典型的な出残り便秘®です。

便を出す坐剤を入れて出残り便を出してきてもらいました。

便はキレイに出し切れて肛門周囲にはトイレットペーパーも便も付いていませんでした。

かゆみの原因は便なので便を毎日すっきり出し切って肛門の中を空っぽにするよう指導しました。

だけど掻いたりこすったり洗い過ぎたりして肛門周囲の皮膚はボロボロなので、ステロイド外用剤を使用することにしました。

私が開発した独自の肛門そう痒症の外用剤治療「ステロイド外用剤漸減療法」です。(日本大腸肛門病学会に原著論文あり)

そして薬よりも大切なのがお尻の衛生習慣を改めることです。

ウォシュレットはビデも含めて使用禁止。

お風呂で肛門も洗わない。

おしりふきなどの衛生用品も使用禁止。

デリケートゾーン専用の市販薬もやめてもらいました。

次回の診察は2週間後です。

治療経過

今まで通っていた病院では毎回、先生にウォシュレットで洗うように、清潔にするようにと言われたので、みのり先生に言われたことにとても驚いた。

2週間たたないうちに痒みが全くなくなった。

こちらに来るまでは、このかゆみは一生治らないのかもと少しあきらめていましたが、便を出すことや薬を塗ることで快適になりました。

私は元からお腹を壊すことが多く、便秘だと言われてすごく驚きました。

毎日便が出ているし、1日2回も出ていたので、自分がまさか便秘だとは思ってもいなかったが、自分で便を出したあとに坐剤を入れると必ず残便が出てきたので、便秘なんだと実感。

毎日便をすっきり出しているせいか、よくあったお腹の痛みもなくなりました。

2週間後の受診

かゆみは完全に消失。

皮膚の炎症もおさまって浮腫状だった皮膚が平らになっています。

ただ炎症がひいたあとのシミは残っています。

かゆみもない、炎症もないのでステロイド外用剤の治療は終了です。

炎症がおさまっても皮膚のバリアー機能は正常化していません。

皮膚の保護のために診療所特製手作り軟膏「Sザルベ」を1か月ぬってもらいます。

もちろん出残り便秘®は治ってなので便を出す坐剤も継続です。

そして次の受診は1か月後です。

1か月後の受診(2回目の再診)

これで治療を終わろう!と思っていたら・・・

下痢をして肛門周囲の皮膚がまた荒れていました😵

坐剤を入れてもまだスッキリせず残っていることが多かったようで、その残便のせいでかゆくなったようです。

以前ほどひどくはないですが、掻いてしまったので皮膚が湿疹化しています。

もう一度、ステロイドに戻ることにしました。

同じようにステロイド外用剤漸減療法を2週間やってもらうことに。

もちろん坐剤は継続ですが、スッキリ出なければもう一度使用してもOKとしました。

そしてお腹がゆるいので小麦と乳製品を抜くようすすめました。

次の診察はステロイド外用剤を使用しているので2週間後です。

2週間後の受診(3回目の再診)

かゆみはありませんが、少しムズムズする時があるとのこと。

坐剤は1日1回ですむようになり、排便の回数も減っていました。

小麦と乳製品を抜いたからか便通が落ち着いてきています。

診察すると湿疹化していた皮膚はキレイになっていました。

湿疹が治ったあとのシミは残っています。

ここでステロイドをやめるのはちょっと不安だったため、さらに薄めて漸減していくことにしました。

もちろん坐剤は継続です。

次の診察は5週間後としました。

5週間後の受診(4回目の再診)

ほとんどかゆみもなく皮膚もキレイになっていましたが、肛門周囲にわずかに便が付着していました。

これが刺激になってかゆみが起こります。

便通のコントロールがうまくいかないと痒みは完治しないのです😢

軟便でおなかがゆるい人の場合、この排泄の部分で手こずることがあります。

シミはまだ残っています。

さらにステロイドを漸減していくことにしました。

次回は6週間後です。

6週間後の受診(5回目の再診)

かゆみはほどんど無くなっていますが気になるときがあります。

坐剤は毎日使って残便を出しています。

肛門周囲の皮膚はキレイになっていたのですが、肛門から離れたお尻の割れ目(殿裂)があせものせいで赤くなっていました。

暑い季節になって汗をかくようになったせいでしょう。

皮膚の赤みがまだ残っていたのでさらにステロイドを漸減して続けることにしました。

次回の受診は9週間後です。

指示通り受診せず・・・再発😵

9週間後の受診を指示したのですが、受診されたのは半年以上たってからでした😵

かゆみもなくなり、調子が良かったそうです。

ご家族が病気になったりして大変だったそうで、受診のタイミングがなかったので仕方ないですね😢

外用剤も塗り切って、坐剤も無くなってからは使っていません。

当然、便は残っていたはず・・・

かゆみ再発です😭

掻いているので湿疹化しています。

また治療が振り出しに戻ってしまいました💦

以前と同じように坐剤を毎日使用し、ステロイド外用剤漸減療法を最初からやり直して2週間後に来てもらうことにしました。

2週間後の受診

かゆみは消失。

湿疹化していた肛門周囲の皮膚もシミを残して治っていました。

さらに漸減してステロイドを切っていくことにしました。

次回は9週間後です。

9週間後の受診

かゆみはありません。

坐剤もバッチリ使えています。

皮膚の発赤がまだ残っていたためステロイドを漸減することにしました。

次回の受診は12週間後です。

12週間後の受診

かゆみはありません。

肛門瘙痒症は治っているのですが、汗でお尻の割れ目(殿裂)の部分がむれて赤くなり赤くなり亀裂もあります。

これは肛門瘙痒症ではなく皮膚の問題です。

ステロイド外用剤は終了し、あせもには天花粉を塗布するようアドバイスしました。

次回は3か月後です。

3か月後の受診

汗のせいでかゆみが生じていました。

肛門周囲の皮膚はキレイです。

あせももだいぶ治ってきていました。

Sザルベは保湿力はバツグンなのですが、暑い季節にはむれる人がいるためSザルベからアズノール軟膏に変更しました。

軟膏が合わなければまた変更する必要があるため次回の受診を1か月後にしました。

もちろん坐剤は継続です。

1か月後の受診

受診されたのが真夏だったのですが、かゆみはおさまっていました。

でも汗でお尻がむれています😵

皮膚は肛門周囲もお尻の割れ目もキレイになっていました✨

やっと治りました・・・😓

汗のことを考え軟膏はSザルベではなく亜鉛華単軟膏を処方しました。

水を吸ってくれる軟膏の方がこの患者さんには合うでしょう。

どんな治療でも人によって本当に合う合わないがあります。

特に肌につける軟膏はSザルベでもごくごくたまにかぶれる人もいます。

そういう人のために今、軟膏を開発中です。

完成したらブログで案内しますね。

排便のコントロールもバッチリ出来ていますし、かゆみもなくなっていたので治療をやっと・・・やっと終了できました!

次回は1年後にお尻健診で来て頂くことにしました😊

かゆみの原因は便だけではない

肛門瘙痒症のかゆみの原因は便ですが、この患者さんのように汗による刺激で肛門以外の部位がかゆくなったり皮膚炎を起こしてヒリヒリしたりするケースも意外に多いです。

体格がよい人だと汗をかいてむれやすく、それがかゆみを引き起こしてしまうこともあります。

夏期に悪化しやすく、肛門周囲よりもお尻の割れ目(殿裂)の部分に症状が出やすいのが特徴です。

この場合は肛門科だけでなく皮膚科専門医を受診することをオススメします。

 

かゆかったり汗をかいたりすると洗いたくなるもの・・・。

そこで洗うと余計にかゆみや皮膚症状は悪化します。

洗うのをやめなければ皮膚はどんどんボロボロになっていきます。

専門外の医師や「よく洗いなさい」という昔の古い治療を続けている年配の医師に、温水洗浄便座で肛門を何回もよく洗うように指導されている患者さんを未だに見かけます。

洗えば洗うほどひどくなっていった

と患者さんが言われるように、洗うとろくなことがありません😰

それにお尻を見せずに治療のアドバイスを求めても適切な治療はできないでしょう。

肛門の診察をしない肛門科医は居ないと思いますが、専門外の先生であっても必ず肛門の診察は受けて下さいね。

見ないと(診ないと)分かりません。

2〜3回の通院で終わるはずの肛門瘙痒症。

この患者さんの場合は途中で治療が途切れてしまったこともありましたし、「あせも」問題も勃発し、本当に時間もかかり、通院回数も1年に6回と多くなってしまいましたが、やっと終われました😓

本当にお疲れさまでした。

治療に難渋した一例をご紹介しました。

来年のお尻健診までかゆみが再発しませんよう・・・🙏🏻


診療所のセラピードッグ「ラブ」🐾
左側がラブです🐶
犬のようちえんに通い始めて6年
すっかりベテランワンコです😅

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