通院しているのに悪化していった眠れないほど痛い切れ痔

(2018年10月15日加筆修正)

今日の患者さんは関東地方の40代女性。

地元のクリニックに通院しているけれどどんどん悪化し、眠れないほど痛くなってきたため大阪肛門科診療所を受診されました。

この患者さんに限らずですが、関東地方から来られる患者さんが結構おられます。

今までの経過

2年前から排便時に出血痛みあり。

地元の肛門科を受診し注入軟膏酸化マグネシウムで2回通院して治った。

半年前から同じ場所が痛む。

血も出て、またか・・・と思った。

しばらく様子をみるが、ずっと痛いので再び受診。

先生に「前回、治りきれなかったのかもね」と言われ、その後3回ほど通院。

前回よりも痛みが強くなりひどくなった。

先生には「半年、1年かかるかも」「裂肛ではなく潰瘍になっている」と言われた。

排便時と便の出終わりに強い痛みあり。

痛くて洗ってしまう。

出しても残っている感覚の時、ウォシュレットを使ってしまうが、あまりやり過ぎると眠れないくらい痛い。

先生に痛みがつらいことを訴えても痛み止めなどは出してくれず、だんだん仕事中も、寝るときも痛くて考えられず、眠れずという日々が続いた。

この2〜3週間は痛くて市販のイブを毎日飲んでいるが、効かないこともある。

他にどこかいい病院はないか探す中でみのり先生のブログを見つけ、この痛みが無くなるなら行ってみようと受診。

排便と生活習慣

1日2回朝と晩に排便があります。

下剤は飲んでいません。

便秘ではなく、むしろ便はゆるめです。

だけど出始めの便は硬い。

いつも残便感があります。

仕事柄、トイレを我慢することも多いです。

ウォシュレットは自宅でのみ排便後の洗浄のために使用していますが、1日3回くらい使っています。

10秒くらい温水を当てています。

生理中のみビデも使用。

入浴時にはボディソープの泡を手につけて肛門を洗い、シャワーを直接肛門に当てて洗い流しています。

キレイにするために市販の「おしりふき」も使っています。

病院から処方された注入軟膏だけでなく馬油も使ったことがあります。

診察の結果

洗い過ぎ、拭きすぎで肛門周囲の皮膚は色素沈着して真っ黒、そして皮膚は炎症でゴワゴワでした。(このような状態を苔癬化と言います)

指を入れるとキツイです。
私の指は男性医師に比べるとかなり細いため、通常、楽々入ります。

私の指がキツイということは肛門が狭いと言うことです。

普通は指診(内診)は痛くないのですが、私の指でも痛がられました。

そして肛門鏡です。

指は医師によってサイズが異なりますが、肛門鏡は同じサイズです。

これも通常、楽々入るはずなんですが、肛門が狭いためきつくて入りにくい。

でも入る。診察出来る。

この時点で手術しなくても治るかもしれないと予想を立てます。

肛門の後方(6時の部分)に大きくて深い切れ痔(裂肛)肛門ポリープがありました。

相当、慢性化しています。

随分前から切れ痔を繰り返してきた、あるいはずっと治らずにきたと思われます。

そしてウォシュレットで洗い過ぎて皮膚が炎症を起こし、つっぱって伸びない皮膚になり開きにくい肛門になってしまっています。

肛門が狭いのは切れ痔(裂肛)の炎症のせいだけではなく、洗い過ぎの影響も大きいです。

ウォシュレットの使いすぎで肛門を狭くしている人が本当に多いです💦

指診では便を確認出来なかったのですが、坐剤を入れると軟便が少量出てきました。

最後の方は便がゆるいそうなので、ご本人は「下痢なのに切れ痔になるのはどうしてなんだろう?」とずっと疑問だったそう。

下痢便でも残っていたら出口の便秘と判断します。

出残り便秘®です。

正直、地元でかかった肛門科の先生が手術の可能性を指摘されたのも分かるお尻でした。

深い裂肛で肛門ポリープがあり、肛門が狭くなっていたら通常は手術適応です。

どこまで保存的治療で治るか分からないけれど、とりあえず残った便が傷を汚染しないようにスッキリ出し切るように排便指導をし、診療所特製手作り軟膏「Sザルベ」で肛門マッサージをして指で肛門を広げるよう、やり方を指導。

痛みが強かったため麻酔のクリームも処方して、痛いときに塗るようにしてもらいました。

そして、温水洗浄便座の使用は禁止、入浴時にも肛門を洗わないよう指示しました。

遠方だったため次回の診察を3週間後にしました。

3週間後の受診

受診してから1週間は地獄だったそうです。

坐剤で出しても、もっと出る気がして1日に5回も挿入してしまい、お尻が腫れてしまったと。

1日おきに眠れず、朝の排便の度に飛び上がるほど痛くて、それでもSザルベと麻酔のクリームを塗り、温水便座を使わずに過ごしました。

食欲もなくなり、精神的に病むのではと思っていたところ、1週間後の月曜日、「あれ?!痛くない!!」。

時々ピリッとすることはあるがほとんど痛くない!

夢のよう。

再診での診察の時には「スッキリ治った!全然痛くない!」と言われていましたが、残念ながら肛門は狭いままです。

でもあの大きくて深かった切れ痔が完全に治っていました!!

坐剤にもすっかり慣れておられ、入れるのも痛くないし、使うのも苦痛ではなくなっています。

習慣にしてしまえばこっちのもの。

正直、手術が必要かな・・・と思っていたケースなだけに嬉しかったですね😊

でも狭い肛門のままだと、また切れてしまいます。

「切れやすい肛門」になってしまっているので、肛門マッサージだけは続けてもらう必要があります。

本来なら、本当に肛門が狭い人は月に1回通院してもらって、外来で私が肛門を広げるのですが、遠方だったため次回の受診を2か月後としました。

坐剤も継続使用です。

またおなかがゆるいのと軟便があったため、食事指導として小麦と乳製品を出来るだけ抜くよう指導しました。(グルテンフリー・カゼインフリーです)

2か月後の受診

小麦と乳製品を出来るだけ抜いたら朝晩1日2回出ていた便が朝だけになって、便の質も変わってきて、しっかりした形のある便が出るようになっていました。

肛門マッサージも毎日やっていますが、たまにピリッとするくらいで痛みもありません。

そして排便時の痛みは全くありません。

あんなに痛かったのがウソのようです。

診察すると肛門は狭いですが、少しずつ広がってきていて、診察しやすくなっています。

2か月あけて大丈夫だったから、今度は3か月あけてみましょうということになりました。

次回の診察は3か月後です。

こうやって、どんどん通院の間隔があいていきます。

下痢なのに切れ痔の人もいます

この患者さんのように「下痢がち」「おなかゆるめ」なのに切れ痔(裂肛)になっている人も意外と多いです。

出てくる便が下痢でも、スッキリ出ずに中に残っていたら私たちは便秘(出残り便秘®)と捉えます。

そしてこのようなケースでも出始めだけは硬いのです。

その出始めの硬い便で切れ痔(裂肛)を作り、その傷を残った便が汚染するから傷が治らず慢性化し、肛門ポリープや見張りイボが出来てしまうのです。

炎症がひどくなると肛門が狭くなってしまい肛門狭窄という状態になります。

こうなると便が細くなり、出しにくくなったり、軟らかい便なのに肛門が切れたりします。

切れ痔(裂肛)の治療で注入軟膏と飲み薬というのは標準治療としては正解です。

でも便まみれの肛門にどんなお薬を入れても塗っても治りませんし、口から飲むクスリは肛門には効きません。

問題は出口(肛門)で起こっているのであって、お腹(腸)で起こっているわけではないので、私たちは飲み薬を出すことがほとんどありません。

痔は排泄の結果なので、出口の排泄を直さなければ痔は完治しませんし、手術で痔を根治しても、また何度でも痔になってしまいます。

だから痔の根本治療は便通を治すこと。

出口の便秘、たくさんの人に知って欲しいです。


診療所のセラピードッグ「ラブ」🐾
たくさんの患者さんを癒しているラブ🐶
ラブに会いたい方は火・金に来て下さいね💕

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