(2018年10月15日加筆修正)
実はカナヅチの大阪肛門科診療所 肛門科女医で専門医・指導医の佐々木みのりです。
Amebaブログを始めたときからブログの記事で取り上げてきた患者さんのアンケートや感想。
もう山のように溜まっています。。。
掲載したかったのですが、医療広告ガイドラインで誘因性のある患者さんの体験談の掲載が禁止されてからブログで取り上げるのをやめ、過去の記事も見直し、修正をしてきました。
アメブロは1000記事超えているため、修正するのが大変で、まだ手をつけていませんが、このブログに関してはまだ記事が少ないため、ほぼ見直しました。
誘因性があるかどうかの判断基準も明確になっておらず、どこからが誘因性と判断されるのか分からず、しかも判断するのは検索ロボットでしょうから、新たに患者さんの感想をそのまま掲載することは今後しないことにしました。
痔や肛門のトラブルで悩んでいる人が、患者さんの感想を読んで自分と症状を重ねたり、それが分かりやすかったようで、受診される患者さんからは継続を望む声もたくさん頂いていますが、ここはルールに従いたいと思います。
皆さんから頂いた声は掲載できませんが、「症例提示」としてレポートしたいと思います。
今日の患者さんは40代女性。
他の病院で3回、内痔核の手術やALTA療法を受けたけれど、また痔が悪化してきたと言うことで大阪肛門科診療所に来られました。
今、困っていること
注入軟膏を入れる時に、中で当たるとしばしば痛みがある。
排便のはじめが出にくいように感じる。
時々痛みもあり、たまに出血や腫れもあって痔が治ってない気がする。
何を望んでいるか?
この患者さんの受診目的は「痔を繰り返さないために排便習慣を見直したい」ということでした。
「痔の治療=投薬・注射・手術」と考えているのは実は医者だけなのかもしれません。
痔に伴う症状が無くなれば痔はあっても構わないという人が実は予想外に多いです。
今までの経過
この患者さんは13年間の間に3回、内痔核の手術や注射療法を受けておられました。
1回目は内痔核の手術、2回目はその5年後。
2回目も内痔核の手術。
そして3回目はALTA療法(ジオン注射)。
だけど痔の症状は一進一退。
手術をして痔を治しても、ずーっと肛門科通いから解放されません。
自分で排便習慣を変えなければ、このまま一生、病院通いが続くと思っていた時、大阪肛門科診療所の出残り便秘®の記事を読み「これだ!」と思って受診されました。
現在の排便習慣
1日1回排便がありますが残便感あり。
下剤は飲んでいません。
何も飲まなくても毎日排便があります。
ウォシュレットをずっと使っておられたようですが、ブログを読んでから使用を中止されたそうです。
しかし生理中のみビデを使用されています。
排便後にお尻を拭く回数は5回。
紙に便が付くため、付かなくなるまでゴシゴシこすって拭いています。
また入浴時にも石鹸でお尻を洗っておられました。
診察の結果
なんと、立派な脱肛(4度の痔核)でした!
ほぼ全周に痔核があり、内痔核の部分も外に脱出している状態でした。
残念ながら3度も手術や注射療法を受けたとは思えないくらい全部のイボが飛び出している立派な脱肛でした。
肛門周囲の皮膚は洗い過ぎによって、洗った部位のみくっきりと明瞭に色素沈着があります。
指診(内診・直腸診)をしましたが当日、浣腸をして便を出してこられたのでキレイに排泄出来ていて便はありませんでした。
今まで手術を受けた施設や通院しているクリニックは肛門科を標榜しているものの、専門外の先生でした。
患者さんは専門だと思って受診されたようですから、すごく残念ですね。。。
治療と排便指導
出残り便秘®には便を出す坐剤を処方することがほとんどですが、この患者さんは浣腸を時々使っておられたので併用することにしました。
(浣腸は自律神経の反射を起こしやすく、合わない人が使用すると吐き気・頭痛・冷や汗・失神・心停止などを生じることがあるため、初回は必ず医療機関で行うことをお勧めします。使う浣腸の量や回数も個人差があります。)
毎日どちらかを使用して肛門の中を空っぽにするよう指導。
温水便座もビデも含めて使用禁止。
(ビデは膀胱炎・膣炎を起こしやすいため)
お風呂で肛門を洗うことも禁止しました。
患者さんが「一番驚いたのは石鹸で洗わない、手でこすって洗わない、でした。」と言われましたが、この部分に関してはほぼ全員が衝撃を受けられますね。
「紙でこすって拭いて、石鹸でしっかり洗ってと、正反対のことをしていたと反省です。今までお尻に悪いことばかりしてきた」とも言われ、決意新たに帰って行かれました。
温水便座の使用を禁止する理由はコチラを読んで下さい↓↓
待合室で院長が芦屋の朝日カルチャーで講演したビデオを流しているのですが、その映像で緊張がほぐれたそうです(笑)
院長の話、なかなか面白くて好評なんですよ。
治療経過
この患者さんには排泄のコントロールをしてもらい、間違ったお尻の手入れをやめてもらいました。
坐剤や浣腸で排便の管理をしてもらい、診療所特製手作り軟膏「Sザルベ」を肛門周囲の皮膚やいぼ痔(痔核・脱肛)、肛門の中に塗ってもらって3週間後に受診です。
残念ながらいぼ痔(痔核・脱肛)は無くなりません。
ちゃんとあります(笑)
でも少し小さくなって腫れが改善していました。
そして一番大切な事は患者さんの困った症状が無くなること。
3週間でどう変わったのか?
痛みは減って、出血は全然ない。
排便するとイボは腫れるけれど引くのが早くなった。
別に困っていることはない。
いぼ痔(痔核・脱肛)は無くなっていませんが、イボ痔に伴う症状は無くなりました。
医学的には4度の脱肛なので手術適応ですが、患者さんは症状が無くなったことに満足されています。
ご本人に手術するかどうかの希望を尋ねたら「今は何も困ったことがないので、できれば手術したくない」と言われたので、手術せずに保存治療を継続することにしました。
痔は治っていませんが治療自体は終わりです。
通院終了なんです。
この点にもたいそう驚かれました。
今まで10年以上ずーっと通い続けてこられてましたからね・・・。
治療は終わりましたが、便通の管理は毎日の生活の中でずっと続ける必要があります。
それが上手くいかない時、調子が悪い時、何か心配なことがある時に受診してもらっています。
何も困ったことが無ければ1年後に「お尻健診」で来て頂きます。
ちゃんと排便のコントロールが出来ているか、お尻の手入れが間違った方向にいっていないか、年に1回だけ「お尻のチェック」です。
2回目の通院で治療が終了することに多くの患者さんが驚かれますが、便通のコントロールさえうまくいけば2回目で通院は終われます。
「今まで十数年、通い続けた時間を考えると、これから通い続けたかもしれない事を考えても、自由診療でも高いとは思いません。遠回りしましたが、こちらで診て頂くことが出来、本当に感謝しています。」
とお礼の言葉を頂きました。
ありがとうございます。
私たちも嬉しいです。
顔の吹き出物が減った
出残り便秘®を治すと肌の調子が良くなる人が多いです。
特に口の周りの吹き出物はテキメン。
出口の便と関連がありますから当然の結果なのですが、この患者さんもわざわざ肌がキレイになったことを報告して下さいました。
そしてSザルベはどこに塗ってもOKだと説明したので、唇にも塗ったそうですが、普段使っている軟膏よりも調子が良くなったそうです(笑)
私も愛用していますが、リップクリームとして使っている患者さんも多いです。
ワセリンとミツロウしか入っていません。
薬ではないので日頃のスキンケアにお使い下さいね。
私からのコメント
嬉しい結果でした。
患者さんの笑顔が治療のゴールだと思っているので、来られた方、全員、笑顔でお帰し出来るよう、これからも頑張って診療していきたいと思います。
この患者さんのように専門外の先生にかかっておられる方が本当に多いです。
痔の手術って数年の間に何度も受けるものではありません。
一度手術したら最低10年くらいは症状無く過ごせるのが普通だと思います。
そこが専門かどうかの技術の差でしょう。
だから肛門科だけは専門にかかってほしいと強く願います。
これから受診を考えている人に是非読んで欲しい記事です。
この記事を読んでから、どこを受診するか決めてほしい。
そして女医さんを探すときには必ずコチラの記事を読んで、専門の女医を探して下さい↓↓
女医であることよりも専門性の方が大切です。
女医にこだわらず専門の先生にかかってくださいね。
便通を治さなければ何度でも痔を繰り返す
この患者さんは専門外の先生に治療を受けたため、手術をしてもスッキリ痔が治っていませんでしたが、専門の先生に手術をしてもらって完璧に痔を治しても、痔の原因となった便通を治さなければ何度でも痔を繰り返します。
痔の根本治療は便通を治すことなんです。
逆に便通を治せば痔と上手く付き合えて手術を回避できるケースもたくさんあります。
治療のゴールは患者さんによって違うため、痔を無くしてしまいたい人は手術を受けられたらいいでしょう。
その時は痔を無くせます。
でも手術しても便通は治りません。
痔の原因となった便通や排泄習慣は自分で自分の生活の中で直していくしかないのです。
便通の管理がちゃんとできているのに痔の症状が無くならず耐えられないのであれば、その時には手術を考えましょう。
治療の第一歩は正しい排泄から。
手術を受ける受けない関係なく便通は治して下さいね!
診療所のセラピードッグ「ラブ」🐾
ラブはど〜れだ?🐶
トイプードルだらけです😅
同じ犬種ですが個体差がありますね