手術数で「いい病院」が分かるのか?

(2018年10月15日加筆修正)

暑がりなので夏が嫌いな夏生まれの大阪肛門科診療所 肛門科女医で専門医・指導医の佐々木みのりです。

最近、頻繁にくる「広告出しませんか?」という出版社や新聞社からの誘い。

以前からありましたが、最近、特に多いような気がしますね。

昔は他の先生の動向を聞いて足並みを揃え、大阪肛門科診療所も広告やアンケートを出していたのですが、ここ数年はゼロです。

はい。
すべてお断りしています。

たとえ学会がからんでいても。

なぜなら取材のあり方や記事に疑問を感じることが多いからです。

特に病院のランキング本は肛門科に関しては異論を唱えたいことだらけ・・・😑

ちゃんと調べれば専門家かどうかなんて簡単に分かるのに、そんな基本的なことすら自分たちで調査しないお粗末なな取材、そして手術ありきの偏った報道、手術件数による医療機関の評価・・・などなど、言い出したら切りがありません。

マスメディアの方々は自分たちの発する言葉や情報が、世の中の人々にどれだけの影響を与えるのかということをもっと自覚して頂き、慎重に情報を発信して欲しいものです。

自分たちが提供する情報によって患者さんに不利益が生じることだって起こり得ることを医療記事担当者は肝に銘じて欲しいです。

そんな経験を書きたいと思います。

3か月おきに何度も痔の手術を受けていた患者さん

大阪肛門科診療所は自由診療です。

保険が効きません。

だから最初に受診するケースは少なく、色々な肛門科(を掲げる施設)を受診されてから、それでも治らず困り果てて最後に意を決して受診される患者さんが多いです。

今までの治療がトラウマになっている人も多く、悲痛な思いを問診票に書ききれないからと、今までの経過を家で書いてから持参される患者さんもおられます。

今回の患者さんもそうでした。

A4の用紙にビッシリ今までの経過を書いてこられました↓

(文字書き起こしはコチラ↓)

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最初の出産の時にオシリから何か出てるみたいと思いましたが、その後一回だけものすごく痛くなって、市販の薬で治りました。

便通は良い方だったと思います。

13年ほど前に子宮体癌の手術をしました。

その後から少しおかしくなりました。

執刀の先生からは、とにかく便通があればそれで問題はないと言われました。

残便感がものすごい。

朝食後一回は出るのですが、あとはどれだけ便意があっても、きばっても出ません。

いつもお腹から肛門まで棒が入っているみたいでつらかったのですが、手術したから仕方がないのだと思っていました。

それから5年ほど経って出血がありました。

その時は一瞬パニック状態になりましたが痔の人の話を聞いたことがあったので、その人に紹介してもらった先生に診てもらいました。

その時に初めて内視鏡検査をしました。

腸はとってもきれいです、心配することはありませんとのことでした。

その後何回か出血があって結局手術することになりました。

今から考えると安易な決断だったと思います。

最初に診てもらった先生は急いで手術をする必要はないと言われました。

本当に知識のないというのは怖いもので、この常にお腹の張った突っ張ったみたいな状態が、手術によって解消するのではないかと思ってしまいました。

そこは設備がなく他の病院を紹介してもらい、その先生とそこの病院の先生と二人でして頂きました。

でもおなかの調子は相変わらずでした。

そして3年ほど前から時々出血するようになりました。

その頃の便通は朝起きた時と朝食の後、かなり出るのですが残便感はずっとありました。

前の先生に診てもらったら再手術は可能ですが、とにかく何回もトイレに行かない、長く座らない、きばらないということでした。

次に一昨年の10月にオシリに違和感があるので、思い切って別の医院に行きました。

週刊誌で見た手術数の多い名医というところでした。

薬でも治せますというのにひかれて行ったのですが、最初から手術ありきの説明でした。

そんなに抵抗がなかったのは、切るのではなくゴムでくくって2週間くらいで壊死させるというのもでした。

それも1個ずつということです。

覚悟を決めました。

最初の時にえらいことになりました。

指定通り下剤を飲んで行ったのに、便が残っているということでした。

ここは通常の患者さんの間に、この手術を入れるシステムです。

結局浣腸をして予定通りしました。

朝まで排便をしないようにと言われているのに昼頃から便意があり、夕方に座った途端にするっと便が出てしまいました。

くくったゴムも一緒に。

それでも次の日の診察ではくくったところが壊死しかかっているから大丈夫とのことでした。

この時言われたのは、他の待っている患者さんに迷惑がかかるので、きちんと排便をしてくるようにとのことでした。

私はきちんと下剤も飲んでいましたのでトラウマになりました。

それで次回からは自宅での排便の後、自分で浣腸をしていきました。

看護師さんからは何回も排便は終わってますねと言われました。

(手術を)4回しました。

最初は4回くらい(手術)と言っていたのが、その時にはあと2,3回(手術が必要)と言われました。

4回目(の手術)は昨年の2月でした。

いつも夕方には便が出てました。

その4回目の(手術)の時にひどい下痢になりました。

夕方から夜中に何回も間に合わない時もありました。

当然ゴムは取れてました。

先生に報告すると実に嫌な顔をされ、質問するとすごく叱られました。

そこで今まで張り詰めていた心が折れました。

もうどんなことがあっても絶対に医者には行かないと決めました。

お腹は相変わらずはっていてガスが溜まっている感じでオナラもよく出ます。

でももうあきらめていました。

それでも時々お尻のあたりが少し痛かったり出血があると気になります。

その時です。

先生のブログに出会ったのは。

神様に出会ったようでした。

何回も読みました。

目から鱗です。

こんなに楽しみにお医者さまに来るのは初めてです。

よろしくお願いします。

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意味が分かりにくい部分は( )で加筆しました。
漢字の変換は原文と違う部分があります。

自分で書いて来られた問診票を握りしめて受診されました。

このように家で問診票を書いてこられる場合もありますが、診療所に来てから待合室で30分以上かけて書いておられる患者さんもおられます。

問診票の記入に時間がかかりそうな人は指定時刻より早めの来院をお願いしますね🙏

衝撃の診察と診断

この患者さんを診察したところ、3か月おきに何度も脱肛の手術を受けているのに、立派な脱肛でした😫

え?なんで?
手術してるのに全然治ってないやん?!😱

と私の方が衝撃でした。

一体どこをどうやって手術したんだろう・・・?😕

と首をかしげてしまいました。

そして患者さんが「診察が全然痛くない!」とビックリ仰天。

それもワケ分かんない。
普通に診察してるだけなのに・・・。

こっちこそ、なぜ痛い診察になるのか分からない。

患者さんは今まで痛くてつらい診察をずっと受けてきたようで、私の診察が痛くないことにすごく喜んで下さったのですが、脱肛の手術を何度も受けているのに脱肛が治っていないという事実に、覚悟はしていたものの、残念そうに言われました。

「やっぱりそうでしたか。まだ脱肛ありますよね。何度手術しても何も変わらないし、私の脱肛がひどいから一度で手術出来ないのだと思ってました。」

そして他の患者さん同様、一番ショックを受けたのはウォシュレットのことです。

洗いすぎてお尻ボロボロ・・・😭

実際に写真を撮って自分のお尻を見てもらいました。

見て納得される患者さんが多いので必ず見てもらっています。

今まで良かれと思ってやってきたお尻習慣が間違っていると知らされたときの衝撃は皆さん、すごいものがあるようです😓

この患者さんの脱肛は結構立派なもので、医学的にも手術適応だったのですが、もう既に何度も手術を受けられているし、まずは手術を考える前に便通を直してもらうことにしました。

毎日排便がある人だったので「出残り便秘®と診断し、その治療をしてもらいました。

便秘はなかなか治らないけど痔は改善

2〜3週間後に2回目の診察に来てもらうことが多いのですが、残念ながら便秘は2〜3週間で治りません。

便を溜めて生きてきた年数だけ便秘治療にかかると言ってもいいくらい、便秘治療は時間がかかります。

でも痔は改善する人が多いです。

この患者さんもそうでした。

出血や腫れなどの症状が改善し、初診の時よりもいぼ痔(痔核・脱肛)がしぼんで少し小さくなっていました。

便という「重し」を取り除いたら、うっ血がとれて、いぼ痔(痔核・脱肛)が小さくなるケースが多いです。

そうなると不快感も無くなるので手術を希望される患者さんはほぼ居なくなります。

痔は無くなりません。

しっかりお尻にありますが、痔のせいで何も困ったことが無いのであれば手術をせずにそのまま持っておくことが可能になります。

そうやって痔とうまく付き合っている患者さんが大阪肛門科診療所には大勢おられます。

この患者さんも脱肛の症状が改善し、手術をせずにそのまま様子をみることになりました。

ただ便通の管理だけは通院をしなくても、ご自身の生活の中で続けて頂く必要があります。

痔は排泄の結果なので、排泄を正さなければ痔はまた悪化してしまいますし、手術して治しても何度でもお尻は故障します。

便通の管理方法も人それぞれです。

何を、どういうタイミングで、どのように使うのかは患者さんによって異なりますし、やってみないと分かりません。

正解は一人一人違うので、ご自身で使ってもらって正解探しをしてもらいます。

一発で正解にたどり着くケースもあれば、何度も何度も試行錯誤しながらやっと正解が分かる人もいます。

この患者さんは便通の管理で苦戦されましたが、それでもお尻は劇的に改善しました。

医療本に掲載されている施設が専門とは限らない

この患者さんが今まで受診された施設は肛門専門ではありませんでした。

でも医療本には手術数の多い専門病院としてトップで紹介されていたそうです。

その情報を信じて受診した結果がこれだったので、その新聞社や出版社に疑問と憤りを感じられたとのこと。

信じて受診したのに・・・
もっとちゃんとした情報を載せて欲しい

とおっしゃっていました。

この患者さんだけではないと思います。

ネットを全く利用しない世代の患者さんは新聞や雑誌、医療本を参考に病院選び、医師探しをするでしょうから、そのような患者さんのためにも、偏らない報道をお願いしたいものですね。

以前ブログにも書きましたが、肛門専門施設は少ないです。

そして肛門を専門とする医師も昔から変わらず200名ちょっとであることが、厚生労働省の医療機関調査を見て分かりました。

その話はいずれ書きたいと思います。

私たちのブログを参考に専門の先生を探してみて下さい。

日本の肛門科の歴史と現状〜専門の医師を見分ける〜

この患者さんのお住まいの地域にも、ちゃんと専門の施設があったのに、本当に残念です。

そんな迷える人の役に立てるよう情報発信をしているのですが、まだまだ力不足なのか、マスメディアには勝てませんね😢

それでもこのブログは1日1万PVは毎日越えているので、アメブロの時よりは随分影響力を持てるようになったと自負しているのですが、もっともっと上を目指したいと思います。

医療本に掲載されない選択をしました

この患者さんが受診されてしばらくたって、まさに、この患者さんが参考にした医療本を手がけている出版社から取材の依頼が来ました。

アンケート用紙に記入して返信するだけの簡単な取材です。

そこには手術件数しか記載する項目がありません。

診察した人数を記載する項目は無いのです。

つまり手術率が分からない。

また患者数を記載するにしても、肛門を専門にしていないクリニックだと、風邪など他の疾患で受診した肛門科以外の患者さんも数に入れることだって十分考えられます。

しかも基準が曖昧で適当な数を書いてアンケートに答えることだって出来るわけです。

そしてランキングは手術数のみ。

当然、手術数の多い施設が上位に来ます。

手術の良し悪しや手術が必要かどうかの妥当性は数字には表れません。

院長と相談し今回はアンケートに答えないことにしました。

締め切りを過ぎた頃、新聞社から電話があり是非提出して欲しい、今なら間に合うと言われましたがお断りしました。

なぜなら医療本を見て、その評価を鵜呑みにし、それが良いと思っている患者さんに来て欲しくなかったからです。

そういう考え方の患者さんが来られても、私たちは患者さんの望む医療を提供出来ないし、自由診療であることを知らずに受診されてトラブルになることがあるので、ひっそりと目立たず、本当に困った人だけが来る施設として影の存在で居ようと思いました。

医療は万全ではないので全ての患者さんを救うことは出来ません。

私たちが救える患者さんは、痔を直すために自分の便通を変えようと行動出来る人だけです。

それをやりたがらない人もおられますから、痔だけ治したい、今までの自分の生活習慣は変えられないという人は手術を受けられる方が楽ちんかもしれない。

ただこれだけは伝えたい。

手術が必要な痔は少ないです。

痔の多くは手術をせずに治ります。

またたとえ手術をして痔を治しても、痔の原因となった便通を治さなければ何度でも痔を繰り返します。

だから痔の根本治療は便通を正すこと。

私たちは切らない痔治療の提案をし続けようと思います。

これはマスメディアに対する密かな抵抗でもあり、私たちの医療人としてのあり方を示す選択となりました。

1回ですむ手術を数回に分けてやれば手術件数は増やせる

この患者さんが手術を受けた施設は肛門専門施設ではありませんでした。

そして1回ですむ手術を数回に分けてやっていました。

そうすれば手術件数は増やせます。

どんなにいぼ痔(痔核・脱肛)がひどくても、いぼ痔(痔核)の個数が多くても、1回の手術で1カ所しか出来ないということはありません。

痔の手術は1回ですみます。

技術不足のため数回に分けてやったのか、手術件数を増やしたかったからなのか、私には分かりませんが、関西ではこのようなケースが本当に多いです💦💦

しかも手術を何度もやっているにも関わらず、ちっとも治っていませんでした。。。😭

手術件数の多い施設は、それだけ手術に偏った診療をしていると思って受診された方がいいでしょう。

例えば、切らなくても治る痔も手術すれば手術件数は増えます。

専門外の先生が脱肛と間違えて手術してしまう痔もあります↓

専門外の先生が脱肛と間違えて手術してしまっている3つの痔

手術件数だけで実力は分からない、本当に大切なことは治療によって痔が治ること、お尻のことを忘れて快適な生活を送ることが出来るようになることだと思います。

コチラの記事も是非参考に↓

手術件数の多い医者がうまい医者とは限らない

手術件数で病院の実力が分かるのか?

そして手術を受けるなら是非、肛門を専門にしている医師を選んで下さいね。

雑誌や新聞、医療本に載っている医師が専門家とは限りませんから、ご自身で調べる手間を惜しまず、1軒の肛門科で手術と言われてもその場ですぐに決めてしまわず、セカンドオピニオンで何軒か受診することをオススメします。

このブログを読む人が、ちゃんと専門の先生に出会えることを心から願っています。


診療所のセラピードッグ「ラブ」🐾
左側がラブです🐶
毎日暑いですね😵
毛が薄かった時は涼しかったのですが
フサフサにはえてきたので暑いです〜😅

診療所のセラピードッグ「ラブ」のInstagram
コチラです!見てね!

インスタへのコメントありがとうございます😊
コメントの返事は出来ないんです💦
ごめんなさい🙇🏻
実は娘が管理してます😓

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