鉄剤内服中の便通と痔の管理について

5年ぶりに風邪をひいている大阪肛門科診療所 肛門科女医で専門医・指導医の佐々木みのりです。

毎日のように届く相談メール。

全員に返事を出すのは無理なので、読んでいる人にも役に立ちそうな相談に関しては、ブログでお答えさせて頂いております。

どうかご了承下さい。

今日は遠方にお住まいの女性からの相談です。

鉄剤が原因の裂肛・・・

はじめまして。

お忙しいと思いますので、なるべく短めに問い合わせをしたいと思いますので、ご無礼がありましたらお許しください。

2016年秋より貧血のため鉄剤を飲んでいます。

便は毎日出てはいるのですが、かなり硬くなってしまって2017年5月くらいから時々出血するようになってしまいました。

初めは時々で、それほど痛みも無かったのですが、どんどんひどくなってきて、6月に肛門科を受診して「鉄剤が原因の裂肛」と診断されました。

そこから9月末まで強力ポステリザン軟膏を山ほどもらって使用していたのですが、全く良くならず、むしろどんどん悪化してしまいました。

「鉄剤は飲むのをやめないほうが良いから、とにかく水を飲んで柔らかくして」という事でがんばっていましたが、車で1時間半もかけて通院していたので辛くなってしまい、鉄剤をもらっている医師に相談したところ、マグネシウムが処方されましたが、毎回ひどい下痢になってしまうので3回ほどで中止。

今は漢方外来に通って乙字湯が処方されています。

このように鉄剤による便の硬さで、そちらを受診されている方はいらっしゃるのでしょうか。

少しの間、鉄剤を飲むのをやめてみたのですが、貧血症状が悪化してしまい、また飲み始めています。

本当に困っていて、そちらを受診したいのですが、静岡から子どもを預けて伺うことになるので、受診してから「薬によるものだと難しい」となってしまうと、申し訳ないのですがショックが大きいので、問い合わせをさせていただきました。

よろしくお願いします。

鉄剤が原因の裂肛であろうと普通の裂肛であろうと治療は同じ

鉄剤で便が硬くなって出来た切れ痔(裂肛)だろうと、鉄剤を飲んでいなくて出来た切れ痔(裂肛)であろうと、切れ痔(裂肛)には変わりありません😓

切れ痔(裂肛)の原因となった便通を直さなければ、どんなに強力な注入軟膏を使い続けても治りません。

この患者さんも6月に肛門科を受診して、9月末まで強力ポステリザン軟膏を使用されていますが治ってないわけです。

というとは、便通の管理が上手く出来ていないと考えられます。

便通を考える場合、二つに分けて考えてもらっています。

一つは「おなか(腸)」、もう一つは「出口(肛門)」です。

便が停滞して溜まっているのはどっちだろう?

あるいは両方かな?

 

どこで便が停滞しているかで治療が違ってくるからです。

おなか(腸)にたまっている場合は内服薬を検討します。

内服薬の選び方、合わせ方は患者さんによって随分違います。

正直、飲んでもらって片っ端から試すしかないのですが、日頃の患者さんの便通を聞くと大体分かることが多いです。

水分が足りず硬い便が製造されてしまうケースは酸化マグネシウム系の薬が効きます。

適切に容量を合わせれば下痢になりません。

少ない量でも下痢になる人は薬が合ってない、あるいは必要ない可能性が高いです。

この患者さんの場合もそうですね。

マグネシウムが処方されたけれど毎回ひどい下痢になったということですから、元々、便の水分は足りている可能性があります。

あるいは飲む量が多すぎたか、どちらかを考えます。

腸の動きが鈍い・悪い人には腸を動かす作用のある下剤を考えるのが普通なのですが、これらの成分は腸を黒くする(大腸メラノーシスと言います)ので、私は第一選択薬にはしません。

乙字湯という漢方薬にも腸を黒くする「大黄(ダイオウ)」が入っています。

本当に困ったときに一時的に飲むのであればいいのですが、私は常用は避けています。

依存性・習慣性があるため、だんだん効き目が悪くなって飲む量が増えたりする人も多いです。

長期間の服用によって腸は黒くなり、黒くなった腸は蠕動(ぜんどう)運動が弱くなるため、その薬を飲まなければ便が出ない体になってしまいます。

そうなると一生薬漬けになってしまいます😖

だから私は2日に1回程度排便がある人には最初から下剤は処方しません。

食生活の見直しや、乳酸菌ドクターズサプリを試してみて、ダメだったら最終手段として下剤を考えます。

下剤を処方する際にも妊娠中でも内服できる洗腸剤系の下剤から始めます。

これで便が出るなら、他の下剤は考えません。

一番安全で、妊娠中・授乳中も使え、高齢者でも安全に使えるので、腸を黒くするアントラキノン系の下剤は最後の手段です。

高齢者は例外ですが、若い女性には乙字湯の常用は、私はオススメしません。

切れ痔(裂肛)が治らない場合は出口(肛門)の便秘を疑ってみる

切れ痔(裂肛)が治らない、治ってもまた切れての繰り返し・・・という場合、出口(肛門)の便秘を疑います。

大阪肛門科診療所は自由診療なので、あちこちの施設を受診してから最後に来られるケースも多いです。

ほとんどの患者さんが、このメール相談の患者さんのように大量の痔疾薬と酸化マグネシウムなどの下剤を処方され、数ヶ月から数年使用されています。

それでも切れ痔(裂肛)が治らないのは出口に便が残っている可能性が高いです。

そうです。

出残り便秘®です。

知らない方は是非コチラの記事を読んで下さい↓

出残り便秘®®・鈍感便秘®® 〜その残便感は便秘かもしれない〜

またコチラにも切れ痔(裂肛)の記事を詳しく書いています↓

繰り返す切れ痔は出始めの便が硬いせいかも

切れ痔(裂肛)が治らない理由

診察してみないことには分かりませんが、この相談者の患者さんは「おなか(腸)の便秘」ではなく「出残り便秘®の可能性があります。

もしかして酸化マグネシウムも乙字湯も全然必要ないかもしれません😓

こればっかりは分かりませんけどね・・・。

痔になって受診される患者さんで下剤が必要な人って実は意外と少なくて、出残り便秘®の治療だけで治ってしまうケースが8割以上なんです。

そもそも出口(肛門)に便を溜めたから痔になったわけで、腸は正常に動いている人が多いです。

そこのところを考えずに、上から(口から)下剤を飲むのでおかしなことになっちゃうんですよね😓

口から入れてもお尻(肛門)に効かないのにね😓

なぜか患者さんもドクターも「便秘=飲み薬」という方程式になっているようです。

もっと出口に注目して欲しいなぁ。

鉄剤で便秘になる人と下痢になる人がいる

この相談者の患者さんは鉄剤で便秘になっていますが、実は鉄剤で下痢になってしまうケースも結構あります。

その場合は鉄剤の種類を変えてみたり、私は軽い貧血ならドクターズサプリの「ヘム鉄」を処方します。

これなら便が硬くなったり下痢になったりしにくいようで、患者さんからも喜んでもらっています。(私の父も毎日飲んでいます。酸化マグネシウムが必要なくなりました。)

内科で鉄剤を処方してもらっている患者さんがほとんどですので、まずは内科の先生に相談して、他の種類の鉄剤に変えてもらいましょう。

意外と他の種類の鉄剤なら大丈夫というケースもあります。

貧血の原因が痔の出血なら痔の治療を

もともと貧血・・・という人は内科で治療してもらえばいいのですが、痔の出血が原因で貧血を引き起こしている場合は痔を治しましょう。

切れ痔(裂肛)であれば便通管理が成功したら2週間程度で治ります。

いぼ痔(痔核・脱肛)でも、脱出症状がなければ、手術しなくても、便通を直したら出血が止まるケースもたくさん経験しています。

出血がひどいからって、何でもかんでも手術ではありません。

手術が必要な痔は非常に少ないです。

ほとんどの痔が便通管理をすれば手術をせずに改善します。

逆に便通を直さずに手術だけ受けても、また何度でも痔を繰り返します。(場合によれば手術しても治らないこともあります)

根本治療は痔の原因となった便通を直すことです。

私たちは「便通直さずして痔の治療はありえない」と考えていますので、手術を受ける患者さんにも必ず便通だけは直してもらっています。

便通の管理が出来るようになってから手術を受けて頂いています。

その方が術後の痛みも少なく、治癒期間も短縮し、オマケに肛門がキレイに美しく治るからです。

貧血の治療をしながら痔の治療もできます

基本的に鉄剤を飲まなければならないほど貧血がひどい人は、鉄剤の内服を中止しないでくださいね。

この相談者の患者さんは、便が硬くなるから鉄剤の内服を中止されたようですが、貧血がひどくなってしまいます😱

痔で死ぬことはないですが、重症の貧血になると命に関わることもありますから・・・。

昔、いぼ痔(痔核・脱肛)からの出血が原因で貧血がひどくなり、救急車で搬送された患者さんが来られたことがあるのですが、ヘモグロビンが2でした。(正常は12〜15です。あえて単位は省略しました。)

救急で輸血まで受け、痔の治療をすすめられるも、色々な病院で痔の手術を断られ、困り果てて私の外来に来られました。

誰も手術を引き受けてくれないので私が手術しましたが、手術した翌日から貧血がみるみる改善していきました。

この患者さんも鉄剤を飲むと便秘になるので、内科で処方された鉄剤を自己判断で飲んでおられなかったんです。

鉄剤を飲みながらでも痔の治療は出来ますし、便通を直すことも出来ます。

だから必要な鉄剤は飲んで下さいね。

便が黒くなっているのは腸管から吸収されなかった鉄が便に出ている証拠

オーソモレキュラー栄養療法(分子整合栄養医学)を勉強するようになってから私の治療や指導も随分変わりました。

まだまだ初心者なので、これからもどんどん変わっていくと思います。

便が黒くなるのは腸管から吸収されずに余剰になった鉄が便に混じるからなんです。

鉄が十分足りていて余剰になっているのであればいいのですが、吸収効率が悪く、血液中の鉄は足りてないのに摂取した鉄が便となって出てしまうケースもあるようです。

だから鉄剤を飲んで便が黒くなっているのに血中ヘモグロビンが低い場合は、鉄剤の種類を変更してもらうか、ドクターズサプリのヘム鉄などを試してみるのもいいかもしれません。

大阪肛門科診療所では鉄剤は置いていません。

軽い貧血ならドクターズサプリのヘム鉄で改善することが多いです。

それに便も黒くならず便秘にもならないので患者さんからは喜んでもらっています。

オーソモレキュラー栄養療法については専門家の先生方がおられるので、ここでは詳しく書きませんが、私が使っているドクターズサプリについてはブログで詳しく書いて欲しいと患者さんからリクエストされているので、いつか書こうと思います。

しばしお待ち下さい😓

治るかどうかは結局は治療してみないと分からない

受診を迷っている遠方の人からメールで

「私の状態は治りますか?治るんだったら受診します。遠方だし、時間もお金もかかるので、治らないのであれば受診したくないのですが・・・」

というような内容の相談を受けることがあるのですが、正直、治療してみないと分かりません。

私たちが得意とする出残り便秘®による症状であれば一発で治ることも多いですが、中には坐薬が合わなかったり、うまく使えなかったり、使うタイミングや個数も患者さんによって違うので、「○○を使えば○日で治ります!」と言えないのです。

ほとんどの患者さんが2週間後に受診された時には完治して、「今日で治療終了です。もう通院は必要ありません。」と言えるのですが、中にはもう少し時間がかかるケースもありますし、別の治療に変えることもあります。

ある意味、医療は結果が保証出来ない仕事でもあります。

この治療を受ければ必ず、絶対に、100%治るというものではないのです。

一人一人体も違えば治療の合う合わないもあります。

万人に効く薬もなければ万人にあう治療も存在しません。

野球では打率3割超えれば強打者と言われますが、医療においては10割を求める患者さんが多いですね。

10割を目指して診療をしていますが、完璧やパーフェクトは存在しないです。

それでも8〜9割くらいの打率があるかなぁと思っています(笑)

遠方からわざわざ受診するにあたって、「治る保証が欲しい」という気持ちも痛いほど分かります。

幸い、現在の所、ほとんどの患者さんで治る、改善する、満足するという結果は得られていますが、それでも100%ではないので、「来てもらったら治りますよ!」とは言えないのです。(言う方がカッコイイのかもしれませんが・・・💦)

何回通院すれば治るのかも病状によるためハッキリと答えられません。

下剤を必要としない出残り便秘®であれば2回目の通院で完治終了できることがほとんどです。

でも下剤が必要となると、下剤を合わせていかなければなりません。

最初から下剤はだしません。

発酵素「するり」人間由来の特殊な乳酸菌ドクターズサプリなどをまず2週間試してもらい、それでもダメなら腸を荒らさない下剤を処方します。

その下剤でもダメ・・・となると、今後出産機会のない人であれば漢方薬を試します。

漢方もたくさん種類があるので、患者さんに合ったものをチョイスし、2週間ずつ試し飲みしてもらって合うものを見つけていく作業になります。

すぐに合うものが見つかれば通院は終わりますが、見つかるまで何度も何度もチャレンジしていくので、見つかるのに時間がかかると通院の回数が多くなってしまいます。

だから通院の回数も正直分からない😓

痔は2週間で治っても便秘は2週間じゃ治らないですから💦

それにね

通院が終了しても便通の管理は自分でずーっと続けてもらわないとダメなんですよ。

その管理の仕方を教えるのが私たちの仕事です。

自己管理が行き届いている患者さんは年に1回、お尻検診にだけ来られて、治療のための通院はありません。

そういう患者さんがだんだん増えてきました。

痔になって通う肛門科ではなく、痔にならないために通う肛門科になりたいと思っているので、すごく理想的な形に近づいてきています😊

私たちの情報が、私たちの医療が誰かの役に立っていれば嬉しいです。

どうでしょうか。
お返事のつもりでブログに書いてみました。

ご参考になさって下さいね💕


診療所のセラピードッグ「ラブ」🐾
手前のトイプードルがラブです
別々の指示を出してもちゃんと従います✌

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