迷ってるんなら、手術は止めたらどうですか?

(2019年5月11日加筆修正)

メールを送信する前に何回も読み直して確認するクセに、送ってから「あー、もっとこんな風に言えばよかった」と後悔することが多い院長の佐々木巌です。

手術をするかどうしようか迷っている患者さんとメールでやり取りをしたことが何度かあります。

それを通じて、患者さんは私の発した言葉をどんな風に受け止めるのか、どんなことに悩むのか、すごく勉強になりました。

そう言うときに、私が答えを誘導するのではなく、患者さんにただ寄り添って、患者さんが「自分自身の答」を導き出すのをサポートできたらいいな、と思っています。

そんな風にできたのか、できていないのか・・
今回は、ご相談いただいた患者さんの許しを頂いたので、私と患者さんのメールのやり取りをご覧いただこうと思います。

メールが始まるまでの状況

患者さんは50歳代の男性、名前は仮にAさんとしておきます。

手術の対象となった病名は、脱肛(あるいは内外痔核)です。

以前から排便時に出っ張るものを感じていましたが、痛みがないため放置していました。

しかし、あるとき突然、出っ張るものが腫れて痛み出して辛くなり、当院を受診されました。

診察の結果、腫れて痛くなったのはもともとあったいぼ痔(この場合は内外痔核)に血栓ができたためでした。

いつものように手術せずに何週間か様子を見たところ、一番ひどい時よりは腫れもしぼんで痛みもなくなったのですが、腫れは完全に元通りには戻りませんでした。

さらに2〜3ヶ月は様子を見たのですがやはり変化はないということでした。

Aさんによると、以前なら排便がすんだら簡単に戻っていたいぼ痔が、少し大きくなり違和感も強くなり、排便と関係無く日中にも出っ張る傾向になってきたのだそうです。

確かに血栓で腫れ上がり治った後に、元からあった痔核の症状が進行することがあります。

そして残念なことに、これはなかなか元の状態にまでは戻りにくいのです。

治したいのなら手術しか方法がないのでご自身としてはどのように考えているか(手術をして治すのか、手術せずに付き合うか)検討するようにお話しして、その日は帰宅されました。

メールのやり取りはその数日後から始まりました。

件名:先日手術を勧められたAです。手術等についてご教授願います。 Aさん→佐々木巌

佐々木先生

先日手術を勧められたAです。
ID:XXXXXXXX

遅くなってすみません。(なんとか、やっと、心の整理ができたような状況です。)

手術等についてご教授願います。

※怖がりで、優柔不断なので、情けない内容になり申し訳ありません。

①病状については次のような理解でよろしいでしょうか?

・4ヶ月前に血栓性外痔核と同時に内痔核が腫れ、脱出。

・4ヶ月経った現在、外痔核の腫れは収まったが、内痔核は伸びたまま戻らなくなっている。

※確かに、腫れあがった4ヶ月前は、いぼ痔が脱出し引っ張られているような激しい痛みが一週間程度続いていました。

腫れあがった外痔核に隠れて確認はできませんでしたが、そのような痛みでした。

(5分歩くと痛くて立ち止まり脂汗が出ていました。正直、逆立ちしたら楽になるのでは?と思いました)

②手術で除去する痔核は何箇所でしょうか?

外痔核の手術は激しい痛みが出ると聞いたことがあり、内痔核1っ箇所なら。。。と願っています。

③キャンセルは可能でしょうか?またキャンセル料は?

④入院時の外出はどの程度までを想定されているのでしょうか?

電車で1時間ほど揺られ、半日外出するのは無茶ですか?

⑤(一般的に)すっきりと排便ができるのは手術して何日後ぐらいからでしょうか?

⑥手術・入院の予約は休み明けに電話連絡すればよいのでしょうか?

⑦局所麻酔で可能と判断された理由を、素人でも理解できるようであればお願いします。やっぱり尿道に管を入れるのは辛いです。

⑧病室は禁煙ですか?
タバコを吸われると辛い。

以上です。盛り沢山ですみません。よろしくお願いします。

件名:Re: 先日手術を勧められたAです。手術等についてご教授願います。 佐々木巌→Aさん

A様

カルテを見ることができませんので、以下、私の記憶を頼りにお返事します。

①その通りです。

②内外痔核を2ないし3箇所と考えています。

患者さんが望まない手術は行いません。迷っているのなら手術をお勧めしません。急な病気などでやむなくキャンセルになるケースは皆無ではありません。その際もキャンセル料は頂きませんが、状況によっては経営的なダメージが大きいのでキャンセル前提の申込は困ります。

④もっと具体的にお願いします。いつごろ、どこまで、何をしに行きたいのか。痛みの状況が術後出ないと分かりませんから出来ると約束は出来ませんが、やって構わないという許可なら事前に申しあげられることが多いです。

⑤できる人は翌日からできます。できない人は、度胸が決まるまでいつまでもできません(苦笑)。

⑥来月の入院を考えておられるのでしょうか?もしそうでしたら〇月〇日ごろに連絡をお願いします。

⑦イボの形が手術しやすそうなのです。あと、肛門が浅いタイプの肛門なので。

⑧行政の指導により敷地内禁煙です。当然、建物の中は禁煙です。

大阪肛門科診療所   佐々木 巌

件名:ありがとうございます。 Aさん→佐々木巌

佐々木先生

Aです。
ありがとうございます。
無礼な質問があったようで申し訳ございません。

②2、3箇所も!
外痔核は病状が収束していると思っていましたが、除去しなければならないのですね。

やはり、相当の痛みを覚悟しなければいけないのでしょうか?

③④両親(87歳)が急病の時の付き添いを心配してお聞きしました。(可能性は低いですがそれなりに持病を持っていますので。。)

両親の急病が手術前に発生したならキャンセル、手術後なら外出を相談させていただく事になると思います。すみません。

件名:(件名なし) Aさん→佐々木巌

佐々木先生

Aです。
何度もすみません。

小生の親の急病などこちらの都合を押し付けようとして申し訳ありません。お許しください。

お騒がせしました。

件名:Re: 佐々木巌→Aさん

A様

無礼な質問はどこにもありませんよ。ご心配なく。

昨日は時間を気にしながら返信しましたので、必要以上に簡潔になってしまったようです。

病状に関する理解はその通りで結構です。

外痔核を放置して内痔核だけ手術すると、ほとんど例外なく術後に放置された外痔核部分が腫れ上がりそこが痛みます。

ですから内外痔核として切除する方が患者さんもラクです。

結局手術するのであれば「過不足無く切除する」のが一番仕上がりの点でも、痛みの点でも良いと考えます。

痛みに関するご心配ですが、確かに無痛ではありませんが、入院スタイルでそこまで苦しんでいただくケースはあまり経験が無いのですが・・

つらいとおっしゃっているのは当院の患者さんですか?

もしも他所の患者さんであれば、当てはまらないかも知れません。

少々自慢たらしくて申しあげにくいのですが、過去に他所で手術を経験している方ほど当院での入院スタイルの手術を「痛みが少ない」と喜んでくださいます。

私たちが内心とても嬉しく思っていることです。

Aさんにはご家族の付き添いは不要です。

当院の患者さんは自分のことは自分でなさいます。・・と言う意味でお返事したのですが・・

あれ?違いますね?ご両親の急病のときに、Aさんがご両親の付き添いをするために電車に乗って外出したい、或いはキャンセルしたい、というご質問なのですね。

すみません、完全に誤解していました。

そのときは遠慮無くキャンセルしてください。その状況なら私でもキャンセルします。

外出も許可できると思います。外出に伴うリスクはわずかにありますが、状況によってはそれを覚悟で動くべきです。

私たちはかなり気持ちで動いています。

この人の幸せのために頑張ると言う気持ちで医療をやっています。

患者さんの心構え、決心が不十分なために「やっぱりやーめた」的なキャンセルはこちらもキツい。その為に事前に一生懸命説明しています。そういう意味でお返事しました。

すみませんでした。
私がちゃんとご質問を理解しないで返信していたみたいです。

もしお気になさっておられるのでしたら、全く申し訳ないことです。すみませんでした。

繰り返しますが、ホントに何でも聞いてくださいね。私、全然気にしてないです。

聞いていただけることが一番医者にとって有り難いことなので。

大阪肛門科診療所   佐々木 巌

件名:Re:Re: Aさん→佐々木巌

佐々木先生

Aです。
丁寧なメールありがとうございます。

失礼なメールで気分を害されたのでは?

他人さんに自分の都合を押し付けるなんて最低なオッサン!

こんな自分勝手な患者の手術を受けてもらえるかなぁ?入院の恩恵を受けたいけど、、、諦めるしかない?!と優柔不断な性格もあり、いろいろと考えていました。

先生のメールを拝見し涙が出そうになりました。

本当にありがとうございます。
でも、手術は恐いです。

件名:Re: Re: 佐々木巌→Aさん

A様

はい、分かります。
手術は怖いですね。

人の手術なら散々やって来た私でも、自分が手術をうけるのは怖かったです。

私の場合は役得で、怖さを感じる前に受けてしまいましたが。

そこだけは、替わってあげられないのですよ。

怖さを乗り越えられる、頑張れる、そんな決意ができるくらいに症状が不愉快だという患者さんでないと、手術を受ける価値がないし、もしも万一の場合に後悔の元になると思っています。

後悔するのは、患者さん自身であり、私たちもです。

Aさんの場合はいかがですか?

手術を申し込む前に、その点がご自身で腑に落ちているか、もう一度考えていただくと良いのではないかと思います。

決心が付かないようでしたら、今回は見送っていただいて大丈夫ですよ。

折角の決心が揺らぐような話をしてしまったようならすみません(苦笑)でも、大切なコトなので。

大阪肛門科診療所   佐々木 巌

件名:(件名なし) Aさん→佐々木巌

佐々木先生

Aです。
助言いただきありがとうございます。いろいろ考えてみました。

極めて近い将来、酷い状態になり、手術を見送ったことを後悔するのでは?と思っています。

お尻を拭くときに触れると“ヒリっ”とするので押さえる程度にしています。

また、入浴後やスポーツの後に『膨らみ』を自覚します。
今はこんな状態です。

一時期に比べると、非常に楽に、良くなっています。でも、これ以上良くなる事はないのでしょう。

すみません、もう一つ質問させてもらっていいですか?

手術が必要と判断された理由をお聞かせ願えないでしょうか?

手術をしなかったら近い将来どうなるとお考えでしょうか?

※説明いただけていたと思いますが、手術で気持ちが一杯(一敗?)になっていました。

よろしくお願いします。

件名:Re: 佐々木巌→Aさん

A様

いえいえ、後悔してから手術で良いのです(笑)。辛いだけで、死にはしませんので。

そうなってから、あの時にすれば良かったと後悔するか、辛くなったその時がタイミングと考えるかは、ご自身の問題です。

私ならその時まで待たないとどうしようもなかったんだ、と納得しますね。
それが縁というものです。

あと、私が手術が必要と判断した・・と、考えておられるのですね。

少し違います。

痔核は出来た時点で「治したければ手術が必要」です。

そしてAさんの痔核はすでに初期ではありません、立派なものです。

手術をせずに逃げ切れる(悪くなる前に寿命が尽きると言う意味です)のなら良いのですが、そうでなければいつ治したくなるのか、それだけです。

私はさっさと手術をした方がAさんがラク(オシリなのか、ココロなのかは知りませんが・笑)なのではないかと思い提案したのです。

それだけです。

Aさんが現在心身ともにラクチンに日々を過ごされているのなら、別に手術でなくて良いのです。

辛くなってからでも良いのです。

その「辛い」は今回のような症状となるのか、もっと穏やかなのか、それは分かりません。

なんか迷っておられるようですので、止めておいたらどうですか?(笑)
全然構いませんよ。

その「どうしよう・・」がなくなるくらいに困ってから手術したらどうですか?

ご自分の意志で治療を選ぶことが大切だと思っています。

意地悪かも知れませんが、Aさんが手術を決心できるように背中を押したりすることは、私は絶対にしませんよ?

大阪肛門科診療所   佐々木 巌

PS 今回のやり取り、多くの方の参考になると思います。ブログのネタにさせて頂きたいのですが、ご了解頂けますと幸いです。

件名:Re:Re: Aさん→佐々木巌

佐々木先生

Aです。

ありがとうございます。
背中を押してもらおうとしたのは事実です。恥ずかしい。弱い人間なので。

自分の痔の状況がよくわかりました。すっきりしました。

※ブログのネタに使って頂くのは全くかまいません。

さいごに。手術するのか、しないのか、真剣に悩んでほしい

いかがでしょうか?

Aさんはご自身のことを優柔不断なんておっしゃっていますが、私はそうは思いません。

ご自身の身体のことを妥協しないで理解しようと努力する、真剣に悩む、本当は皆さんそうあっていただきたい

例えそれが「怖いから」という理由であったとしても、です。

いやむしろ、身体にメスを入れることに対してもっと慎重になってほしい

私の仕事はそういう方のために医療を提供すること、と思っています。

「こんなこと聞いたら悪いんじゃないか」と遠慮する方が多い中で、ちゃんと聞いていただけたことは素晴らしいことだと思います。

Aさんはちゃんとご自身の結論を出されたと信じています。

・・で結局、手術は受けたのか、受けなかったのか、って?

さあて。
それは、どちらでもいいんじゃないですか?(笑)

 

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