肛門を清潔にし過ぎて不調を作ることもある

(2018年10月12日加筆修正)

ドッグランに行った時にはラブのウンチ係になる 大阪肛門科診療所 院長の佐々木巌です。

大阪肛門科診療所にはラブというセラピードッグがいます。

ラブはトイプードル、5歳の男の子で体重3㎏です。

小さな犬でとても優しいので、普段は犬が怖いという方でも、ラブだけは大丈夫とおっしゃる方も少なくありません。

いつも診療所でおとなしくしているラブですが、本当はかけっこが大好きな活発な性格です。

よく発散しにドッグランに行きます。

ドッグランって私も犬を飼うまでは知らなかったのですが、犬が走るための広いスペースがある施設のことです。

私たちは郊外の自然豊かなドッグランまで出掛けるのですが、ラブはそこに行くとまずウンチをします。

大自然の中、風に吹かれて、太陽の光を浴びながら・・ウンチ(笑)。

気持ちよさそうです。

ドッグランではウンチは持ち帰りがマナーです。

私はウンチ係として、ウンチを見失わないように注意して(すぐに芝生に紛れて見失うのです)、ラブのおしりを拭かねばなりません。

そしてラブのおしりは、キレイです。

スッキリ排泄できているのだと思います(笑)。

肛門を不潔にしていると痔になるのでしょうか?

時々尋ねられる質問に、
「肛門を不潔にしていると痔になるのですか?」
というものがあります。

大阪肛門科診療所では、肛門が不潔だから痔になるのではなく、不潔になるような排便習慣だから痔になるのだと考えています。

肛門が不潔になるような排便習慣とは、当院が主張している出残り便秘®です。

ご本人が気付いても、いなくても、直腸や肛門に便が残っていればそれは出残り便秘®です。

出残り便秘®の場合、便がまだ直腸に残っている状態で肛門の筋力で便をちぎって排便を終了にしているケースが多く見られます。

ちぎって排便を終了したら便は肛門の中にも残っていますから、排便の後、何回もペーパーでおしりを拭かないとキレイになりません。

これが肛門を不潔にしている、という状態です。

出残り便秘®は様々な理由で痔の発生原因になります。

例えば、硬便、うっ血、肛門周辺の細菌数の増多などです。

しかし、「不潔だから痔になる」訳ではない、と当院では考えています。

詳しくはこちらをご覧ください。

出残り便秘®®・鈍感便秘®® 〜その残便感は便秘かもしれない〜

なぜ温水洗浄便座の普及で痔が減ったのか?

しかし、当時を知る肛門科医は口をそろえて

「温水洗浄便座の普及によって、痔は減少した」

と言います。

なぜでしょうか?
自分なりにすこし考えてみました。

拭きすぎの人は温水洗浄便座でラクになったかも?

不潔が直接の原因になり得る肛門の不調と言えば、過剰衛生症候群です。

一般には温水便座症候群と呼ばれていますが、当院では過剰衛生症候群と呼んでいます。

過剰衛生症候群とは拭きすぎ・洗いすぎによって肛門周囲に大小のキズがついて起きる皮膚トラブルです。

代表的な症状は、表面の痛み・灼熱感・かゆみなど。

この症状はペーパーでの拭き過ぎでも起こります。

肛門周囲の小さなキズに便が付着すると、日中にとても不愉快なはずです。

そんな「痔の調子が悪い」人が温水洗浄便座を使用すると、付着する便がなくなって「調子が良くなった」と考えるかもしれません。

洗い続けているうちに周囲のキズもなくなると、「温水洗浄便座のお陰でずっと調子良く過ごしている・・」という感想になるでしょう。

ところがそのままの調子で洗い続けている方が、高齢にさしかかって再び過剰衛生症候群で悩む人が出てきます。

若い頃は少々洗っていてもたっぷり皮脂も出ていましたが、皮脂が不足する年代になってトラブルが出てくるのです。

ここでひとつ、温水便座が普及した当時の情勢として忘れてはいけないのは「温水洗浄便座は若い人にだけ普及したらしい」ということです。

当時の高齢者のほとんどは肛門を洗浄する感覚を不愉快と感じて、温水洗浄便座は使用しなかったようです。

高齢者は皮脂が少なく温水で洗浄した場合、若い人よりも容易に皮膚トラブルが発生します。

普及当時はそういう年齢の使用者が少なかった。

そのころ若かった年代の使用者が、近年になって高齢化したため問題が多発しているのです。

過剰衛生症候群についてはこちら

温水便座症候群 〜おしりは洗えば洗うほど皮膚が荒れる〜

もともと痔があった人は炎症が減ったかも?

既に痔がある人は、確かにウンチがついている状態よりも付いていない方がラクです。

切れ痔のキズに便がへばりついていると、とても痛いです。

温水洗浄便座を使用すると確かにラクになったはず。

排便の時に脱肛して手で戻す人は、温水洗浄便座がないとウンチがついたまま戻すワケにもいかず、おそらく何度も何度も拭いて表面にキズを作ってから、それでも十分に拭き取れず便が付着した状態のまま脱肛を戻していたはずです。

キズに便が付着しますから、余計な炎症を作り、痛いし、腫れるし、その結果肛門科を受診する人が多かったのではないでしょうか。

温水洗浄便座が普及した結果、拭く回数が減少、脱肛の表面にキズがつきにくくなり、受診する人が減ったと言うことではないかと想像します。

やり過ぎは良くない

前述の通り、大阪肛門科診療所では、ほとんどの痔の原因は出残り便秘®にあると考えています。
出残った便が一番悪いと思っています。

出残り便秘®は、痔の原因です。
同時に、出残り便秘®は、肛門が不潔になる原因でもあります。

ですから、肛門を清潔にすることは、痔の予防策としてはさほど有効ではない、と考えます。

清潔にすることの効果は限定的で、やり過ぎると却っておしりに不調を抱えます。

さらに困ったコトに、どこまで清潔にすれば良いのか?という答えが人によって違うのです。

いつも、

「おしりにウンチが付いたまま・・これは確かに具合悪いと思う。でも、傷つけたり、皮脂を落とすまで清潔にするともっと具合は悪くなる。」

と説明しています。

やり過ぎはイカンのです。

そう、故隅越幸男先生の仰ったとおりなのです。

「『過ぎたるは猶(なお)及ばざるが如し(ごとし)』っていうけどさ、

肛門科じゃ『過ぎたるは及ばざるに如かず(しかず)』ってするべきなんだよ。

やり過ぎは、やり足りないのよりもずっと良くないんだよ。」

(故 隅越幸男先生の言葉)

 

ここで無理矢理、当院的結論を申し上げて、まとめます。

「温水洗浄便座は、理想的な排便ができている人には無用の投資である」

ということです(笑)

1 いいね 8 件のいいね
Loading...
  • このエントリーをはてなブックマークに追加